見出し画像

妻が入院、その時僕は③

入院生活は外の世界とは完全に隔離されてしまって単純に病院のタイムスケジュールのみに合わせればいい。

考えてみると専業主婦の細君も家事をしたりや子供の服を考えたりというのが普通に見えて、実のところ自分の可処分時間を家事に充てていると言えなくもない。

仕事をしているのと同様、思うようにいかないときにはストレスも溜まるものだと思う。

そういう時間の使い方が当たり前になっていたのに、突如として日常生活から解き放たれると憑き物が祓われたような感覚になるのかもしれない。


土曜日。
入院の手続きがまだだったので昼すぎに済ませに行ってきた。
ついでに差し入れ持っていく感じで。

言うて刑務所の面会というわけではないので「会話禁止」の「ソーシャルディスタンス確保」はあるものの僕がナースステーションに差し入れを持っていった時には細君は自室の外に出てきていた。

感染予防のため、外から来た人と話をしてはいけないと言われているんだろう、しきりに「喋ったらあかん」とか言っていたのが妙におかしかった。

先日、電話で担当医師が言っていた通りで細君は元気そうというか、とても顔色が良くてなんだかスッキリしているように見えた。まさに憑き物が落ちたような感じ。


実はもっとうるさいほどLINEとかでブツブツ言ってきたり娘にも連絡とったりするだろうと予想していたが、予想に反してこの時はすっかり入院生活を満喫しているように思えた。

仕事でもしていたらPC運び込んで在宅勤務的なケースもあるんだろうけど、そういうのがない立場なので自由の翼を手に入れている。

今のご時世、海外に行くのも一苦労だし俗世界から隔離されて羽を伸ばす方法の一つとして「入院」というのは最適な手段なのかもしれないと不謹慎な思いすら湧いてくるほどだった。


さて、家に帰ると細君から「点滴して太った」とかいうLINEが来ていた。
その後「洗濯洗剤がない」とか「娘の試合の動画は?」とか現実生活に戻ったようなLINEをいくつか送ってきていた。
自由を満喫していたところから次のフェーズに移ったのかもしれない。

消灯時間を過ぎてから次女にLINE通話をかけてきて真っ暗な中にマスクを着用して無言の女性がいる姿を晒していた。
細君からすれば自由気ままな入院生活に物足りなさを感じ始めているといったところだろうか。

もう現実が恋しくなってきたということだろう。


日曜日。
選択洗剤とDVDプレーヤー、スリッパ、ヘッドホン、充電などなどを頼まれて差し入れに行ってきた。

病院の南側に駐車場があり、細君の病室は南側でベッドは南の窓際に位置しているようだ。次女を連れていくと細君は病院の窓から顔を出してのぞいていた。

ナースステーションに荷物を預けるために病室のあるフロアまで上がると案の定、細君が廊下まで出迎えに来ていた。
そんな光景を看護師の皆さんは微笑ましく見て下さっている。

もちろん感染予防もあって直接荷物を手渡したり、会話をするとかはできないのだが、持ってきていた荷物を看護師の方にお渡しして立ち去るまでの時間は母子がお互いの変わりないことを確認するには充分な時間だった。


コメント欄で皆さんが心配してくださっているように僕はいつもより忙しい休日を過ごしている。
たぶん休養はいつもより取れていない。

重なる時は重なるもので日が沈みかけたころ、長女が自転車の後輪がパンクしてるという情報を共有してきた。
「マジかー」考える暇もなくとりあえずチューブだけ買いに走った。

夕食を済ませてタイヤのチューブ交換したら21時を回っていた。
まぁこういうもんだと思う。

今日はもう寝よう。

頂いたサポートは全額#チロ公の活動資金として使わせていただきます。温かいご支援よろしくお願いいたします。