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異国の地で長く働くには

イエメンに来て2ヶ月が過ぎた。この2ヶ月間で国境なき師団として異国の地でに長く働くにはいくつかのコツがあることを学んだ。


1つ目はお腹と睡眠の調子を整えることが極めて大切であるということだ。裏を返すと、この2つは容易に乱れやすい。こちらの食事は(宿舎で出されている物であっても)衛生面がイマイチな時もあり、お腹を下しては治ってのループが寄せては返す波の様にやって来る。多少の小波は全然問題ないのだが、吐き気や腹痛といった大波は辛い。少しでも予兆があったら、お腹を休ませる、冷やさない、正露丸を飲むが肝要である。つくづく、正露丸は日本が誇るべき良薬だと思う。


日本でも夜勤のある仕事柄、不眠になりがちだったが、こちらでは日本以上に寝付けないことが多い。国境なき医師団の宿舎にはどこに行っても、トレーニングルームがあり、ランニングマシンや筋トレ器具、ストレッチマットやバランスボールが置いてある。初めは運動不足解消のためにあると思っていたが、徐々にそれだけではないことに気がついた。また、ヨガやストレッチ、瞑想も結構みんなしている。

あるエジプシャンは

「瞑想なんて全然信じていなかったけど、こっちに来て、仕事でイライラした時にやったらすごく効いた」

と言っていた。確かに彼女は熱しやすく、この地の貧しさや医療資源の乏しさに毎日毎日憤慨していたので、確かに瞑想はよく効きそうだった(笑)

かくいう私も、ERで多数の重症者対応をした日など神経が昂って全くと言っていいほど寝付けなかった。布団に入って目を閉じても、ERでの場面が蘇り様々な改善点が脳裏を駆け巡るので、全く脳が鎮静化しない。ここまでのことは日本ではなかった。仕事のことを一旦忘れてリセットするための瞑想で、結局私もエジプシャンと全く同じ感想を持つことになった(笑)


2つ目はフィジカルヘルスと同じくらいメンタルヘルスが大事だということである。国境なき医師団の勉強会でメンタルヘルスの重要性を説かれた時には、
「ふーん、やっぱり欧米はメンタルヘルスに対して進んでいるのね」
位に思っていたが、実際に活動に参加してみると、メンタルヘルスの重要性を痛感した。

なぜなら、Flexibilityの名の下に、日本社会では考えられないほど色々なことが突然変更になるのだ。これは心に余裕がないと、とてもじゃないけど対応出来ない。

ある日突然、安全管理の問題で仕事に行けなくなり、ゲストハウスに缶詰になったかと思えば、午後から急に仕事再開になる。長期休暇で帰国する日の朝、スーツケースを持って階段を降りると当局により移動が禁止されたと知らされる(つまり帰国は延期)。ニーズがあるから来たのに、当局から活動をを制限されて手を出すことが出来ず帰国。思えば、ビザが下りずに1ヶ月出発が延期になったのだって、1st ミッションがキャンセルになったことだって、国境なき医師団としてはあるあるの出来事で、不安定な国・不安定な政府を相手にしている性質上やむを得ないことだと今なら分かる。


日本と同じ様に分刻みのスケジュール、100%の力で頑張っていて、予定通りに行かないと、メンタル的に辛くなってしまう。私が身につけたのは、時間に余裕がある時キリキリ自己研鑽するのではなくあえてゴロゴロする、はじめから予定通りになると期待しすぎない、体力・精神力的に余力を残しておくというコツである。


異国での国境なき医師団の職場環境は日本の職場環境とは大きく異なる。うまく適応し、残りの期間もしなやかに働けたらと思う。


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