見出し画像

プリズンブレイク

あいつ、会社やめるってよ

2023年秋に会社を退職した。いわゆる転職ってやつだ。
別に会社は嫌いじゃなかった。辛くもなかったし、会社の仕事や人間関係も好きだった。キャリアアップといえば聞こえはいいが、ノリとタイミングというやつである。振り返ってみるとまさに自分らしくて苦笑してしまう。そんな自分勝手な都合がまかり通ってしまうのは心地よくもあり、どこか寂寥感もあった。

そもそも現代社会はひどい。あんなにガチガチなレールを用意しながら、いきなり資本主義の荒波に放り込んでくる。心の準備もあったものじゃない。「はい、あとは自分で全部決めてね」ってあまり見放さないでほしい。

幸い自分は自分のことは自分で決めるのが好きだった。でも今まで自分で全部決めてきたというのはあまりにも語弊が過ぎるだろう。所詮レールの上で、数少ない選択肢から選んできたに過ぎない。社会人になると選択肢が膨大すぎる。無限の可能性にワクワクしながらやはり不安感はつきまとう。ガチガチのレールの上に乗せてくれた両親には足を向けて寝られない。

浪人していた頃を思い出す。人生で一番ひねくれていたかもしれない。
「大学行って意味あんの?」親に叩かれた。
力がないものはレールに乗っかっていた方が楽だし、口出しする権利ないもんね。

あれから変わっていないところは相変わらず決められたレールに乗るのに些細な抵抗感を覚えるところ。閉塞感で息がつまりそうになる、刑務所に囚われている気分。
大きく変わったところは自己責任論を自分に強く押し付けるようになったところ。実力がない者は楽に生きた方がいい、文句を言ってはいけないのだ。

でもここからは自分が新たに決めたレールに乗っかっていく。意外に堅実な転職先を決めたのは実に英断だったと思う。英断だったかどうかは今後の自分が英断にするかどうかなのだけれど。根底は自分が自分らしく人生の選択をしていければ良いのだと価値観があるのだと実感した転職だった。
刑務所からは脱獄していきたい、そしてショーシャンクの空を拝みに行くのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?