文学賞の公募でプロフィールに書いてはいけないこと

みなさんはお金に余裕がある時、どれを買いますか?
A 何とも思っていなかったけど、店員さんから「滅多に手に入らない、1000万円ですよ」と言われたヴァイオリン
B 最初に自分がいいなと思ったものの、1万円と言われたヴァイオリン

みなさんはどれを文学賞に選びますか?
A 芥川賞を取っている作家の書いた小説
B 最初に自分がいいなと思ったものの、地方の文学賞を始めとしてこんな  に落選している、誰も高く評価していないということを応募歴に書いて  いる作家の作品

A 芥川賞を取っている作家の書いた小説
B 地方の文学賞を始めとしてこんなに落選している、誰も高く評価してい  ないということを応募歴に書いている作家の作品

上村は小説を読む時はBですが、それ以外だとAかもしれません。
人間はブランドに弱いんです。値段、他人の評価なども含む概念ですが、
自分の評価が揺らぐんです。

ハロー効果とアンカー効果
アンカー効果というのは、
「これいくらだと思う?」と言われて、100万円かなと思っても、
他の人が「1000円」「1200円」と言うのを耳にすると、その値段/評価がアンカー/錨となって、そこから自由に動きにくくなるというものです。
100万円とは到底言えません。1600円とか言っちゃいます。
レストランのメニューに「3万円、1万円、9800円」とあると、普段は高いと思うのに、「9800円を選ぶ金のない人間め」とは思われたくないという心理になるんです。で、「1万円は普通だー」と思い込もうとするんです。そして、結局1万円を選んでしまうのもアンカー効果です。
あとは、そうですね 同じ学校にいた人が歌手やモデルやアイドルや役者になったなんていうことはありませんか?そうするといままではなんとも思っていなかったのに、とつぜん何だかかっこいい気がする、かわいく見えてきた、きれいかもしれないと思うようになります。これもアンカー効果です。顔も体型も変わっていないのに、他の人が高く評価すると急によく思えるんです。
そうなると性格もよく思えてきた。声もいいと思えるようになった。これはハロー効果です。目立つ特徴に目が眩んで、他の特徴も高く評価してしまうことです。一目惚れすると性格もいいんだろうと思うようなものですね。
ガルネリウス(ガルネリとも言います)やストラディヴァリウスのヴァイオリンを見せられると、傷があったり、弾けない状態でも、なんだかすごーい、高くても欲しーい、弾きたーいとなってしまうのもそうかもしれません。弾けないのに、

本題です。
応募歴やプロフィールに、ここに応募しましたと書くのは問題ないんですけど、ここの一次で落ちましたと書くのは、自分の評価を下げるアンカー効果とマイナスのハロー効果があるので、最終選考に残りにくくなるし、残ってもプロフィールを見た人が「私たちと同じレベルの文学賞である群像、新潮、文藝、文学界新人賞に応募して一次も通っていないのか。なんで下読みの人はここまであげてきたんだろう。この人を最終選考に残すと私たちの識見が疑われる。落そう」となってしまう気がします。創作大賞に応募する前にこっそり消しときましょう。
デビューしてからなら問題ないかもしれませんけど、
文庫本のカヴァーの袖(めくったところ)には著者の略歴があって、たいていは出身地、学歴と受賞歴なんかが書いてあります。あれと同じです。
小さな文学賞でも受賞した履歴は書いた方がいいと思います。
応募歴だけ(落選)なら何も書かないか、応募中と書くのがいいと思います。
「早稲田と慶應義塾と学習院と中央と法政に合格しているんですけど、東京大学が本命なんです」「おお、優秀な人じゃないか、ぜひ」となります。
「ヴェルディとマリノスとレッズとフロンターレのセレクションに落ちているんですけど、FC東京も受けに来ました」「ふーん、帰りな」
「都響と神奈川フィルでは常任指揮者の経験があって、ウィーンフィルでも最近まで指揮をしていました。」「おおおお 最終面接に進んでください」
「群像と文学界で最終選考まで残ったことがあり、文藝賞では佳作でした」
「へえ、最終選考まで残しておこうかな」

売れるか売れないか、どう売るかも考えて大賞を選ぶこともあります。
例えば文藝賞だと若い人を選ぶ傾向にありますね。年齢は詐称できませんから、年高の人は他の文学賞に応募しましょう。
東大の理科三類卒、現役の政治家、元アイドル、ハーヴァード卒、大学教授、小説教室であの織田鏡花(有名な作家)の隣で学んだ徳川作之助が満を持してデビュー、あのピッコロさんの弟子、あの勇者一行の魔法使いフリーレンの弟子、
そういう肩書、ブランドも形容詞になりやすいので少しは売りになります。何かあるなら書いておいた方がいいですね。自分の過去を掘り起こしてみましょう。
上村はカラオケでよく100点をとっていたんですが、売りになるんでしょうか。ならないだろうなあ  
上村は 国語の模擬試験で全国一位になったことがあるのですが、これって日本人で一番日本語ができるということなので、世界で一番日本語ができるということですよね。noteのプロフィールにはそう書くことにしました。
「世界一日本語ができる作家 上村 楽園の小説 6/29発売」
妄想ですけど、
気になります。少し読んでみたい気がしてきました ね?

読書家さんなら、
「過去三万冊を読んだ猛者がついに小説家デビュー」
noteでプロ作家に褒められたことがあるなら、
「あの・・・さんが手放しで褒めた新人のデビュー作」
でもいいでしょう。
帯の惹句を依頼すれば快く引き受けてくれるかもしれません。
なにかこういう「売り」を考えてプロフィールに書いておくと、編集者の人も「こういうふうに売ればいいのか」とイメージしやすくなります。
作家が売れるイメージを出す-編集者が帯のアイディアを出す-営業が書店に伝える-書店員がPOPを書く-それを読んだ買い手が手に取る。
こういう流れになっていて、おなじくらいの力量なら、売りがあった方がいいので、商業作家を目指すなら、まずは自分で売り込んでみましょう。

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