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自分の小説世界を広げるために 東アジア篇

日本に暮らして日本の小説を読んでいると どうしても日本の小説世界が枠として意識されがちになると思います。
日本では 「この小説変わってるー」と思われても、
世界中の読み手には「どこかで読んだ技法や表現だな」と思われているかもしれません。
村上春樹さんや多和田洋子さん 辻仁成さんは 主に欧米で好評価を受けていますが、アメリカ合衆国やドイツやフランスなどに暮らしているから書けたということもあるかもしれません。
川上未映子さん 小川洋子さんやよしもとばななさん 伊坂幸太郎さんは 日本にいて海外で好評価を受けているので、日本らしいユニークさなのかなと思います。
温又柔さんや柳美里さん 楊逸さん 東山彰良さん リービ英雄さん シリンネザマフィさん デビットゾペティさんのような海外にルーツのある日本語作家も最近は注目されていますね。
海外でも移民 難民の経験を持つ越境者の描く小説が2010年代くらいから好評価を受けています。

日本生まれの日本育ちで日本にしかルーツがない作家だから狭いということにならないように 海外に旅行や移住などをできればいいのですが、諸事情でできない人もいますよね。上村もそうですが、海外の小説を読むことでなんとか埋めようと思っています。
今日は東アジアにルーツのある小説で面白い、変わっているという作品を書きますね。フランスやアメリカに住んでいる作家でもルーツが東アジアにあったり、東アジアの文化圏の影響が色濃い作家の小説ということです。

閻連科さんの「愉楽」
原題は「受活」で 貧しい村が何とか生き残るための秘策をひねり出すのですが、これがすごい。(河出書房新社.p458.2014年)

ユン チアン(張戎)さんの「ワイルド・スワン 上下」(講談社文庫.1991年)と「マオ 上下」
「ワイルドスワン」はベストセラーで、清朝末期の祖母の代から文革までを語ります。オートフィクションというかノンフィクション小説というか、面白いですね。「マオ」は毛沢東の権力を掴む様子を描いています。これはすごくパワーを感じました。

ジイ ズウジェン(遅子健)さんの「アルグン川の右岸」(白水社.2005年)
少数民族であるエヴェンキ族の回顧です。生活圏の外の日中ソとの微かな接触もあって、チリのアジェンデさんが書いた「精霊たちの家」を想起させますね。一言だと「哀しい」小説です。

ガオ シンジェン(高行健)さんの「霊山」(集英社)
中国から亡命して、フランスにいるそうです。上村はこの小説の何がどのように面白いのか、はたまたすごいのか、ちっともわかりませんでした。けど、ノーベル文学賞を受賞もしている作家なので、なにかがすごいんでしょう。

蘇童さんの「河・岸」(2009年)
他の作家と違って、特に個性的なものがないので、現代中国の典型的な主流の作品ということで書きました。文革期の少年の恋と成長を描いています。

「三体」はベストセラーで、みなさんよく知っているだろうし、特に中国を前面に出した作品ということでもないので、書かなくていいかな。
女性作家としては、「千年の祈り」のイーユンリーさんや、「暗夜」などのファンタジーを書いている残雪さんの評価が プロの作家さんたちには高いようですが、上村には あんまりよさがわかりませんでした。

ソン ウォンピョンさんの「アーモンド」(2017年)
2020年の本屋大賞「翻訳小説部門」の受賞作でもあるので、読んだ方もたくさんいるでしょう。偏桃体が小さくて 恐怖や愛を感じない少年が主人公です。けど、頭では理解してるんです。人間関係が面白いですね。

チョン イヒョンさんの「優しい暴力の時代」(河出書房新社.2020年)
短編集ですね。不穏な空気感が付きまとっていて、競争社会などを描いています。小説ではありませんが、「韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩」(金敬哲.講談社現代新書.2019年)を思い出しました。 

イ ジン(李眞)さんの「ギター ブギー シャッフル」(2020年)
韓国独立、朝鮮戦争で孤児となった主人公が、ギタリストとして世に出ていくという物語です。上昇志向を強く感じるし K-POPに継承されていく文化やシステムが描かれているのも面白く感じました。

エリザ スア デュサパンさんの「ソクチョの冬」(2023年)
この作家さんは1992年生まれで、韓国人のお母さんとフランス人のお父さんがいます。フランスとスイスの国籍を持っていて、自分は韓国文化に属しているという気持ちがあるみたいですね。束草(ソクチョ)は韓国北東部の都市です。海水浴シーズンでもない冬にフランス人男性がやって来て、韓国の女性と交流をするという話です。

呉明益さんの「歩道橋の魔術師」(白水社のエクスリブリス.2015年.212頁)
台北を舞台とした奇妙な感じと優しい感じのある物語です。連作短編で どの短編にも出る魔術師が不思議な存在ですね。 

カンヤオミン(甘輝明)さんの「神秘列車」(白水社のエクスリブリス)
短編集ですね。表題の「神秘列車」もそうですが、台湾に行ったことがないのにノスタルジーを感じさせる作風です。

読んだことがないけれど、読んでみたいのは
イ ソクウォンさんの「いつ聞いても良い言葉」
韓国の小説です。
ラシャムジャさんの「雪を待つ」
チベットの小説です。
モンゴルの小説も読んだことがないので、
何か読んでみたいと思っています。


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