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ショートショート「じゅじゅつかいせん」

じゅじゅつかいせん という言葉を探してみてくださいね。

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同じ中学からこの高校に入ったのは里村だけで こいつはもう部活を決めたらしい。
「柔道部に入ったんだっけ?」
「柔道部でなくって、柔術」
「柔術かい」
「せんせー こいつも柔術部に入りたいって」
大きな声の呼びかけに反応したのか、大柄でジャージを着た人がこっちにのしのしと歩いてきた。
「いや言ってない。俺はサッカー部に入ったんで」
先生と呼ばれた人は残念そうな顔をしたが、慣れているのだろう。
「気が向いたら入ればいいよ」
そう言うと里村を連れて練習場に去って行った。

引退が近づいて そんなことを思い出していた。
俺は県大会の二回戦で負けるのが常のサッカー部を満喫した。分析力に優れたマネジャーの村上とも付き合っている。俺は自分のどこがいいのかをまるで分析できないけど、村上は俺のことを高く評価しているようだ。
三年になって 村上も里村も進学の話をするようになった。
里村は柔術に打ち込んでいて、受験勉強なんてしていない。
俺は大会が終わったばかりで今日は練習が休みになったけれど、部活のない日というのはすることがない。なんとなく校庭の隅でぶらぶらしていると里村がやってきたので、よお と手を挙げた。
「お前も部活休み?」
「部の創立記念日だ。」
「そんなのあるのか」
「歴史の長い部だからな」
そこからは自然と進学の話になる。
「大学は難しい」
里村が眉間に皺を寄せているので、俺もつられて同じ顔になってしまう。
「じゃあ柔術家?」
「医専に行こうかな」
「え 医者になるのか?」
「俺んち 医者だろ」
「そりゃ知ってるけど。お前が医者?」
「だから専門学校に行ってだな」
「そうじゃなくて、勉強とか関係なく、医者になりたいのか?」
「なりたいわけじゃねーけど」
「じゃやめとけ。」
「やりたいことないんだよなあ。やりたくないことならたくさんあんだけど」
「そんなもんだろ。俺だってそうだよ。」
「そうなのか?」
「そうだよ。」
そこに村上が走ってきた。走る姿も可愛い。
「里村君もいたんだ。」
「わるかったな。じゃ帰るわ。」
「まあまあ 待ちなさいって。」
「なに」
「すっごい海鮮丼があるんだよ」
「すげえってなに」
里村が訊くので、俺も興味が湧いてきた。すごい?どうすごいんだ?
「なんと600円で中トロも鯛もウニも蟹もイクラもアワビも食べられて、ご飯は山盛りという丸太屋、週に一回火曜日、夕方4時から10食限定」
どうだとばかりに胸を張って見せる。
「丸太屋な。そう言えば4時だから部活休まんと食えんなーとこいつとも話してたんだよ。」
里村は食いしん坊なので、週に一回はその話をしていた気がする。
「今日がその日。これから三人で行かない?」
「俺もいいのか?」
「いいよいいよ。何遠慮してんの。体落とししちゃうぞ。」
「無理だろ。」
「鯛も載っているって言うから、ゲン担ぎにいいんじゃない?」
「ああ それで体落とし?」

店に入って注文すると、三人ともすでに口のなかは唾液でいっぱいだ。
「はい お待たせ。充実海鮮」
「やったー これだよこれ」
「ん~ おいしーい~」
「うめえな」



解題
呪術廻戦とは何の関係もありません。
柔術かい」「せんせー こいつも柔術部に入りたいって」
「じゃあ柔術家?」「医専に行こうかな」
充実海鮮

叙述会せん? JUJU使い仙人、シュシュ使い千日なども考えたんですけど、
小説に書くのは無理があるのでやめました。
イカ墨で黒くなった海鮮丼なら、黒閃という店名でもよかったんですけど、あんまりおいしくなさそうなので、やめておきました。

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