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「データマネジメントと組織の変革」データマネジメント知識体系(DMBOK)第17章の解説

はじめに

最終章となる17章は、1~16章で語られたデータマネジメントを成し遂げるために組織は変革しなければならない。企業が変革するためにはどのようにアプローチしていけばいいのかという事が書かれている。

以下4名の変革に関する理論をベースに、企業をデータドリブンな企業に変革し、データマネジメントを成功に導くための方法をまとめられている。

  • ウィリアム・ブリッジズによる「トランジション理論」

  • ジョン・コッターによる「チェンジマネジメントで犯す8つの過ち」「大規模変革の推進に要する8段階のプロセス」

  • デイビッド・グライヒャーによる「変革の公式」

  • エベレット・ロジャーズによる「イノベーター理論」

モダンなデータ基盤を構築することも重要だか、モダンなデータ基盤が必要だと認識されており、実際に業務に活用されているように変革に導くこともまた重要である。

DMBOKの各章の要約・解説

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データマネジメント知識体系(DMBOK)第17章「データマネジメントと組織の変革」について

データマネジメントと組織の変革とは

データマネジメント業務を改善するためには、データマネジメント自体を目的とするのではなく、データによって生み出される価値及び貧弱なデータマネジメントから発生する負債を評価し、データドリブンな企業に変革することを目的としなければならない。

そのためには、正式なチェンジマネジメントを理解し変革に導く専門家であるデータマネジメント・プロフェッショナルの助けが必要である。

変革の法則

チェンジマネジメントの基礎となる「変革の法則」がある。
変革が容易でない理由がそこで説明されており、組織を変革に導く活動すなわちチェンジマネジメントを行うときにはまず最初に「変革の法則」を認識する必要がある。

  • 組織は変わらない、人々が変わる

  • 人々は変わるのに抵抗するのではなく、変えられることに抵抗する

  • 現状は過去の選択がもたらした結果である

  • 変革を推し進めない限り、物事は何も変わらない

  • 人に対して変革をもたらすことが難しい

ウィリアム・ブリッジズによる「トランジション理論」

トランジション理論とは変革におけるプロセスを変移※と定義し、変移フェーズを「終結」「中立ゾーン」「新たな始まり」の3つのフェーズを通過することである。
※変移とは人々が新しい状況を受け入れるために通過する心理的プロセス

チェンジマネジメントを行うためには人々が各フェーズの移行が自然なものと感じられるように導かなければならない。

チェンジマネジメントにおける重要性を強調する点は、変革を推進するときには現状の終結について検討し、変革の必要性について納得してもらう事である。

変革が失敗する要因として、終結や中立ゾーンに関する検討を行っていないため、人々が変革により受ける影響を管理できず、古い習慣に巻き込まれ、変革を維持することができなくなる。

ジョン・コッターによる「チェンジマネジメントで犯す8つの過ち」「大規模変革の推進に要する8段階のプロセス」

8段階のプロセスと8つの過ちは共に必要なことで、8つのプロセスをベースに戦略を組み立てて、8つの過ちに書かれているパターンに当てはまっていないかを確かめるとよい。

ここで押さえておくべきことは、チェンジマネジメントを行うためには銀の弾丸はなく、長期的な活動になることを認識し粘り強く進める必要があることである。

変革する人はビジョンを明確にして、ビジョンを実現させるための戦略を練る。ビジョンの実現のために粘り強く情報を発信し続け、企業全体を導かなければならない。

大規模変革の推進に要する8段階のプロセス

  1. 危機意識を高める

  2. 変革推進チームを創設する

  3. ビジョンと戦略を生み出す

  4. 変革のためのビジョンを周知徹底する

  5. 幅広い活動を促す

  6. 短期的な成果を上げる

  7. 改善を積み重ねて変革を生む

  8. 新たな方法を文化に定着させる

チェンジマネジメントで犯す8つの過ち

  • 過度の現状満足を容認する

  • 十分に強力な変革推進チームを確立できない

  • ビジョンの重要性を過小評価する

  • ビジョンの伝達を徹底しない

  • ビジョンの実現に立ちはだかる障害の発生を許してしまう

  • 短期的な成果をあげることを怠る

  • あまりにも早期に勝利を宣言する

  • 変革を企業文化に定着させることを怠る

デイビッド・グライヒャーによる「変革の公式」

変革は「現状に対する不満のレベル」と「改善のためのビジョン」と「実行される最初のステップ」の積が組織内の抵抗を上回れば発生する。

C =(D×V×F) > R

C:変革
D:不満のレベル
V:改善のためのビジョン
F:実行される最初のステップ
R:組織内の抵抗

エベレット・ロジャーズによる「イノベーター理論」

普イノベーター理論とは普及学とも呼ばれ、新しいアイデアや技術が文化を通じて、どのように、なぜ、どんな速さで広がるのかを説明する理論である。

イノベーター理論に沿ってチェンジマネジメントを考えると、2つの課題領域が存在する。

1つ目はいわゆるキャズムを超える時であり、アーリーアダプターが現状に対する不満を十分に認識できるように、また変革を着実に成し遂げられるように慎重に管理する必要がある。

2つ目はレイトマジョリティからラガードヘ移行する時であり、必ずしも100%の人々を転換できるわけではなく最後まで転換できない人を受け入れる必要がある。
変革する人はこのグループをどう処遇するかを決めなければならない。

中小企業基盤整備機構 小規模事業支援者ハンドブックより

各カテゴリの説明

  • イノベーター:新しいアイデアや技術を最初に採用するグループ。リスクを取り、社交的、科学的な情報源に近く、他のイノベーターとも交流する。

  • アーリーアダプター:オピニオンリーダーとも言われ、他のカテゴリと比較すると周囲に対する影響度が最も高い。イノベーターよりも取捨選択を賢明に行い、オピニオンリーダーとしての地位を維持する。

  • アーリーマジョリティ:一定の時間が経ってからアイデアの採用を行う。社会階級は平均的で、アーリーアダプターとの接点も平均的に持つ。

  • レイトマジョリティ:平均的な人が採用した後にアイデアを採用する。イノベーションが半ば普及していても懐疑的に見ている。

  • ラガード:他のカテゴリと比較すると社会的な影響力は極めて低い。変化を嫌い、高齢で、伝統を好み、社会階級も低く、身内や友人とのみ交流する傾向にある。

データマネジメントがもたらす価値の伝達

データマネジメントの重要性を組織が理解するためには、チェンジマネジメントが必要であり、チェンジマネジメントを成功させるためには正式な組織的チェンジマネジメント計画が必要である。

チェンジマネジメント計画は組織がデータの価値と価値に対するデータマネジメント活動の貢献を認識するのに役立つ。

データマネジメント計画が確立されたら、次に打つべき手は継続的支援を得るためのコミュニケーション手段の確立と、継続したコミュニケーションである。

確立されたコミュニケーション手段を使い、データマネジメントがもたらす価値と取り組むべき事項を伝達し続け、データの重要性についての組織の考え方を変える。

そうすることで、データマネジメントによって情報資産からビジネス価値が生み出され、組織的に長期的かつ継続的な好影響を創出し続ける、すなわちデータドリブンな企業に変革することができる。

おわりに

自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。

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DXを成し遂げるために必要なデータをどうマネジメントしていけばよいかが書かれている。
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データマネージメントに興味を持った人はまずは読んでみるとデータマネジメントでなすべき概要が理解できる。


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データ利活用を行うために必要なデータ基盤の考え方と、利活用するためにはデータをどのようにマネジメントしていけば良いかを具体的な例を用いて説明されている。
技術が中心になるので現在データ技術に係る人がデータマネージメントに興味を持った時には、まず手に取ることをおすすめする。


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自分も要約・解説記事を書いているDMBOK。データマネジメントに興味を持った人がまず手に取ると挫折することは間違いないほどのボリュームがある。
読めば読むほど味が出てくるので、データマネジメントを進めようとしている人は各家庭に1冊は是非買っておきたい。


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著者もDMBOKを読むためには非常にボリュームが多く読み解くには苦労するので、かみ砕いた解説書をまとめたと書いてある通り、DMBOKを独自解釈してわかりやすく書かれている。
DMBOKを技術者目線で読み解いた内容になっているので、実践的データ基盤への処方箋と同様データ技術に係る人におすすめする。

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