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「ドキュメントとコンテンツ管理」データマネジメント知識体系(DMBOK)第9章の解説

はじめに

第一章で「データは万物に関する事実を表現する役割を持つ」と定義されている通り、ドキュメントもデータマネジメントするべき対象である。この章はドキュメントを非構造データの一つとしてとらえ、ドキュメントの管理について書かれている。

どういう事かというと、会社では人事規定等会社法に則って作成しなければならない公式ドキュメントもあれば、ナレッジやノウハウなどの現場が業務を遂行しやすくするための非公式なドキュメントもある。文書によって適切に管理して公開して業務に役に立てようということである。

IT企業にいたときはあまり意識できなかったが、金融系などは顧客の記入書類は5年保管の義務があるといった法令があるため、ドキュメントとコンテンツ管理の章が必要になってくることが理解できた。

DMBOKの各章の要約・解説

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データマネジメント知識体系(DMBOK)第9章「ドキュメントとコンテンツ管理」について

ドキュメントとコンテンツ管理とは

ドキュメントとコンテンツ管理としてやることは、リレーショナルデータベースに保存されていない非構造データを適切に保存、アクセス、利用できるように制御することである。

ドキュメントとコンテンツの関係は、バケツと水の関係で表すことができる。ドキュメントがバケツで、コンテンツが水である。コンテンツとはデータとインフォメーションを指し、ファイル、ドキュメント、ウェブサイトに表現される。

データという文脈では主に構造化データに焦点があてられるが、非構造データも前章で書いているような、安全で高品質であることが期待されている。
そのためにやるべきことも構造化データと同様に、ガバナンス、メタデータの管理といった取り組みを行うことが必要である。

ISO9001に基づくドキュメント階層が紹介されており、上のほうに守るべきものが書かれていて、下のほうは守るべきものを遵守するための方法的なものが書かれている。

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ISO9001-4.2に基づくドキュメント階層 DMBOKより

政府の法令と規制、ポリシーと標準といったドキュメント整備の必要性は第2章の「データ取扱倫理」や第7章の「データセキュリティ」の章にも触れられており、これらのドキュメントをどのように管理していくのか。

また、データマネジメントを実効するための計画であったり、構築するための要件定義書、仕様書といったドキュメントも同様に適切に管理していくこともデータマネジメントに必要な要素の一つであるという事が書かれている。

法令に基づく文書の管理

法令に基づく文書について考える、法令にはどのような文書をいつまで保管せねばならないのかということが明記されているため、文書の洗い出し、文書ごとに管理ルールを定め、システムによって順守させるのか、ルールによって順守させる必要がある。

保管期間が決まっている文書は決められた期間保管した後は、速やかに廃棄しないといけないのが一般的である。

実際に業務を行うときは、紙の原本が必要なものについてはファイリングをして月ごとに管理するしか方法はないだろう。電子化したものでよければファイルごとに保管期間を定めて、期間が過ぎたら速やかに削除するシステムを使うとよい。

会社が作成する公式文書の管理

会社が作成する公式の文書について考える。定型的な業務を定めているマニュアルや重要会議の議事録などが挙げられる。

法令で定められている文書のような守らないと法令違反となることはないが、更新履歴がしっかりと管理されて、決まった場所に置かれているなど管理をしっかりとする必要がある。

ノウハウ・ナレッジの管理

ノウハウ・ナレッジは公式的に定められているものではなくて、現場が業務をやりやすくするために蓄積するもの。作業ログとかもここにあたる。

公式的なものではないので、執筆のしやすさ検索のしやすさが重要になってくる。Wikiやコンフルエンスのようなものを使って管理するとよい。しっかり管理してしまうとノウハウ・ナレッジを残すモチベーションが減ってしまうので、意欲を保てるような仕組みやシステムを使う必要がある。

「ドキュメントとコンテンツ管理」のゴール

データと情報は様々な形式が存在し、複数の媒体に蓄積される。データと情報を適切に管理し、規制や訴訟の対応、情報の検索性の向上、などの価値を提供し、ビジネスに役立てられている。

  1. 法令義務を順守して顧客の期待に応えることができている

  2. ドキュメントとコンテンツを効果的かつ効率的に蓄積し、検索し、利用できるようになっている

  3. 構造化データと非構造化データ間の統合機能が実現されている

「ドキュメントとコンテンツ管理」の進め方

ライフサイクル管理計画

ドキュメントは作成、受領、配布、保管、検索、アーカイブ、破棄というライフサイクルがある。このライフサイクルの観点でドキュメントをどう扱うのか計画することが必要である。

  • コンテンツ戦略の作成

  • コンテンツ取扱ポリシーの作成

  • コンテンツ情報アーキテクチャの定義

ライフサイクル管理の実行

計画に基づいてコンテンツを実際に管理する。コンテンツ収集はコンテンツを集めるだけではなく、メタデータも同時に集める必要がある。

  • レコードとコンテンツの収集

  • バージョン管理と統制

  • バックアップと復元

  • 保持・廃棄管理

  • ドキュメント/レコード監査

コンテンツの発行と配信

管理されたコンテンツが利用しやすいようにする。そのためにはアクセサビリティの確保、検索し易さ、多様なフォーマットでの配信が必要である。
具体的にはモバイルデバイスでのアクセス、検索システムの導入、出力形式がHTMLとPDFが選択可能といったことを検討する。

「ドキュメントとコンテンツ管理」の成果物

法令順守のために管理することは、規制がある業種ではやっているが、ビジネス活用のためにコンテンツを管理が必要であると組織が認識するために組織と文化を変革していく必要がある。

  • ドキュメントとコンテンツ管理戦略

  • ポリシーと手順

  • コンテンツリポジトリ

  • 多種多様なフォーマットによって管理させるレコード

  • 監査証跡

おわりに

自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。

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