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ChatGPTと英語を学ぶ (1): Elevator Pitch(自分を売り込むshort speech)

ChatGPTを使ってelevator pitchを作り、ビデオ撮影してクラスで共有してコメントしあう授業プランです。どんな英語のレベルでもチャレンジできます。


What is an elevator pitch(エレベーターピッチとは?)

Elevator pitch(エレベーターピッチ)とは、エレベーターに乗っているくらいの短い時間(30秒から1分程度)で自己PRをするスピーチです。Pitchとは“売り込み”のことです。自分の「売り」について考えて話せるようにしておくと、ふだんの自己紹介でも使えるし、ゼミやバイトの面接などの時も役に立ちます。大学生なら以下のような場面で使うことが考えられます。

  1. バイトやインターンシップ先のスタッフや人事担当者

  2. 就職したい会社や自治体などの人事担当者や役員

  3. 入りたいクラブ、チーム、ゼミの先輩や先生

  4. 自分のプロジェクトや事業を支援してもらいたい相手

このほか、自分が所属する組織やチームのリーダーに立候補する時や、新しい学校、新しいクラス、あるいは合コンのような場所で自己紹介をするときにもpitchは役に立ちます。

ただ、授業でelevator pitchをやるときに、必ずしも自分のこと、リアルな状況を選ばなければならないということはありません。架空の人物(あるいは自分がなりたい誰か)になりきって、架空の状況を想定してpitchをしても楽しいです。(過去には、高校球児がメジャーリーグにチャレンジ、とか、地球に来た火星人が宇宙飛行士の面接に、といった状況で話した学生もいました。)

Deciding on WHAT to talk about in WHAT order (Elevator pitchでは何を、どんな順番で話すのか決める)

ひとまず、ここではjob interview(大学生ならば主にアルバイトの面接)の時の売り込みを想定しています。最初にelevator pitchで何を、どういう順番で話すかについて確認します。

Job interviewのelevator pitchの基本構成は、概ね以下のようなものです。これを元にまずpitchで何を話したらいいか(コンテンツ)を確認します。
どんな場面でどんなピッチをするかは1人ずつ違うので、実際に作る時は、構成も含めてChatGPTにアドバイスをもらいながら、自分の状況に最も適したpitchを作ります

1. Introduction/Attention-grabber(自己紹介・つかみ)

導入部分は、自己紹介と「つかみ(attention grabber)」からスタートします。まず挨拶をして、名前や属性(学生なら〇〇大〇〇学部○年生など)を言います。ここで「つかみ」として、自分の仕事に対する情熱や、あるいは仕事に関係するスキルや経験などを短く付け加えると、相手に強い印象を与えて効果的です。

2. Why You're Interested in the Job(なぜこの仕事をしたいのか)

なぜこの仕事に興味があるのかを言います。仕事内容への情熱、憧れ、学びたいことなど、このポジションに関心を持った理由を具体的に話します。

3. Relevant Skills and Experience (この仕事に役立つ自分のスキル・経験)

この仕事に自分が向いていると思う理由、すなわち自分のスキルや経験、資格や過去に達成したことなどを具体的に言います。

4. Future Goals (将来の目標)

もし将来自分がやりたいことと、この仕事に関連性があるようなら、自分が何を目指しているかを話し、この仕事がそれにどう役立つかを話します。

5. Closing (締めの言葉)

できるだけ相手に強い印象を残せるように、再度自分の熱意を伝え、面接の機会をもらえたことにお礼を言い、「ぜひ自分を候補として検討して欲しい」「連絡を待っています」といったCTA(Call to Action)の言葉も含めます。

Discovering what you want to say(自分が話したいことを見つける)

構成と話すべきことを理解したら、自分は、どう言う場面で、何を話すかを考えます。ここでは、Starbucksのバイトの面接、という例で話を進めますが、自分が売り込みたい先はそれぞれなので、まず話す場面を決めます。バイトや就職の面接の他にも、上記で述べた通り、スポーツチームのトライアウト、ゼミの面接、舞台のオーディションなど、自分がチャレンジしたいものを選ぶことが大事です。

何を話すかのネタは、1人で考えても思いつかないこともあるので、授業ではペアワークでアイディアを引き出すのもいいと思います。英語で質問して、なるべく英語で答えますが、ここではアイディアを引き出すのが最優先なので、日本語の会話になっても構わないと考えています。例えばこんな質問をしあいます。

  1. What is your name?  

  2. What do you do now?

  3. What year are you in?

  4. What are you studying?

  5. What do you like to do in your free time?

ごく当たり前の質問ですが、名前の名乗り方、大学生であること、学年、勉強していることの言い方など、自分の属性についての英語の言い方を確認したら、興味や関心、得意なこと、性格など、elevator pitchをする際に「売り」になることに関係する質問、What do you like to do in your free time? などを聞いていきます。

ネタが決まったら、英語のelevator pitchを作りますが、その前にいくつかのelevator pitchの例を提示します。複数の例を比べて、自分が採用する側だったらどれを選ぶか、内容を評価するのもいいと思います。使いたい表現があれば、もちろん自分のpitchに活用するのもありです。

会計事務所でのインターンシップの面接の例

Hello. I'm Hanako Yamada, a first year student at Chiba University of Commerce. I'm majoring in Economics.
I began bookkeeping in high school and developed a passion for it.
I'm now part of a study group called "Mizuho Kai," preparing for the tax accountant and certified public accountant exams.
I already have a 2nd level bookkeeping certification and aim to become a certified public accountant in the future.
In my spare time, I play table tennis, which keeps me fit.
I'm keen on interning at your accounting firm to gain practical experience. Thank you for considering me.

Engaging with ChatGPT and Crafting Your Content(ChatGPTと対話して、自分のコンテンツを作る)

話すこと、構成が決まり、elevator pitchがどんなものかわかったらChatGPTに相談しながら自分のelevator pitchを作っていきます。この段階に至るまでにすでに質問に英語で答えたり、例を見たりしているので、できるところは自分で英語にします。どう言ったらいいかわからない部分は、日本語で情報を提供します。

プロンプト(指示)を作る前に、念のため学生たちにChatGPTを使うことのメリットとデメリットを伝えておきます。ただ、やってみないと実感しにくいこともあり、また自分に合った使い方を自分で見つけることが大事なので、ここは一応確認するくらいでいいと思います。

メリット

  1. 日本語をそのまま訳すのではなく、どういう状況で何を言いたいのか、どんなふうに言いたいかを伝えて文を作ってもらえる。

  2. 色々な言い方を提案してもらえる。

  3. 出てきた英文について質問して、自分の言いたいことになっているか確認できる。

デメリット

  1. 日本語が苦手なので、必ずしもこちらの意図を正しく理解してくれるとは限らない。また、日本語で説明してもらうと、変な日本語でわかりにくいことも多い。

  2. 英語の文法についての知識に限界があるので、文法について聞くと、間違った説明をしてくることもある。

  3. 必ずしもデメリットではないが、質問するたびにChatGPTは、違う答えを出してくる。

ChatGPTの特性をある程度理解した上で、プロンプトを作ってみます。
この例では、pitchの一部は自分で英語を作り、わからないところは日本語で情報提供する形で、添削と作文を依頼しています。

プロンプトの例

スターバックスのアルバイトの面接で、英語でelevator pitchをします。
以下の英文を添削して、英語になっていない部分は英語にしてください。私は、英語を勉強中でまだレベルは初級です。できるかぎりシンプルな文法で、1文ずつをなるべく短く、かんたんな英語表現で作ってください。elevator pitchなので30秒から1分以内で言えるようにお願いします。


I am Hanako Yamada.
I'm a first-year student studying Economics at Chiba University of Commerce.
I want to work at your Starbucks.
Starbucksは週1回は行く。
店員さんの接客や雰囲気が好きなので、ここで働きたいと思った。
バリスタの仕事にも興味がある。
高校の時、マクドナルドでバイトしていて、接客の経験はある。
仲間のクルーとチームで協力したり、子供からお年寄りまでいろんなお客さんと話すのが楽しかった。
将来は飲食業界で働きたい。
中学からずっとテニスをやっていて、とても健康。
時間に正確で、バイトに遅刻したり休んだりしたことはない。


プロンプトを作る際に注意したいのは以下の点です。

どのような場面で話す英語なのか明確に伝える
→「スターバックスのアルバイトの面接で、英語でelevator pitchをします」
求める英語の表現のレベルを伝える
→「私は、英語を勉強中でまだレベルは初級です。できるかぎりシンプルな文法で、1文ずつをなるべく短く、かんたんな英語表現で作ってください。」

場面の説明や表現のレベルの伝え方は、それぞれ自分にしっくりくる言い方でいいと思います。ただ、日本語では特に、意図を理解してもらえないこともあるので、いろいろトライしてみる必要があります。

さて、上記のプロンプトに対して返ってきた答えはこれです。

Hello, I'm Hanako Yamada, a first-year student majoring in Economics at Chiba University of Commerce. I'm interested in working at your Starbucks. I visit Starbucks at least once a week. I like the staff's customer service and the atmosphere, which is why I'd love to work here. I'm also interested in being a barista. In high school, I worked at McDonald's and have customer service experience. I enjoyed working as part of a team and talking to various customers from kids to the elderly. I'm always punctual and never late or absent from work. I've been playing tennis since junior high and I'm very healthy. I would love to work at your company.

結構シンプルな英語になっています。ただ、初級英語のレベルでは、まだ難しいと感じる学生も多いかもしれません。その場合、ChatGPTと会話を繰り返してわからない文について説明してもらう、あるいは、わからない文だけリライトしてもらうこともできます。

または、
「このエレベーターピッチを話すのはまだ英語があまりできない学生です。できればもっと短い文を使って、初級学習者でも覚えて話せるようにしてもらえますか。」と頼んでみます。こんな英文になりました。

Hi, I'm Hanako Yamada. I study Economics at Chiba University of Commerce. I love Starbucks, go there weekly, and enjoy the atmosphere and service. I'd like to work here and learn to be a barista. I worked at McDonald's in high school and loved teamwork and talking to people. I'm always on time and never missed work. I've played tennis since junior high. I am very healthy. I would love to work part-time here.

そこで、このpitchを評価してもらいます。英語ではなく、内容についてアドバイスをもらいたいことを明確にします。

「このelevator pitchを評価してくれますか。もっとこういうことを言った方がいいとか、ここは言わなくていいといったことがあれば、添削してください。」

その結果こんなアドバイスをもらいました。


あなたのピッチは、あなたの経歴、興味、そして関連する経験を簡潔に説明しています。以下に改善点の提案をいくつか挙げます:

  1. 学生のときのアルバイト経験を強調する: 例えば、マクドナルドでのアルバイト経験を特に強調し、その経験がチームワークや顧客対応にどのように役立ったかについて具体的に説明すると良いでしょう。

  2. テニスの経験と健康への自信をもっと強調する: ピッチにもっと強く健康への自信とテニスの経験をアピールすると良いでしょう。例えば、テニスを通じて身体的な健康を保ち、協力とチームワークを学んだという経験をもっと強調すると良いでしょう。

  3. スターバックスで働きたい理由をもっと具体的に説明する: スターバックスで働きたい理由をもっと具体的に説明すると良いでしょう。例えば、スターバックスの製品やカフェの文化に魅了されているとか、バリスタの技術を学びたいといった理由を追加すると良いでしょう。

  4. 英語に関する情報を追加する: 英語についても何らかの情報を追加すると良いでしょう。例えば、英語での接客経験があるとか、英語でのコミュニケーション能力が高いといった点を追加すると良いでしょう。

以上の提案を参考にして、あなたのピッチを改善することができるかもしれません。


このアドバイスで、参考にした方がいいところは採用してさらにpitchをブラッシュアップしてもいいでしょう。特に、「具体的に」という指摘は重要です。日本の学校では、具体的に話す訓練をあまり受けませんが「具体的な情報にこそ価値がある」ということをしっかり認識すべきです。Elevator pitchは短いのでどれだけ追加できるかわかりませんが、ChatGPTと相談しながら、具体例を追加するといいと思います。

Rehearsing and sharing your elevator pitch(練習して、クラスメートと共有する)

納得するelevator pitchができたら、ビデオ撮影します。
その前に、イマーシブリーダー等の読み上げ機能を使って発音やイントネーションをチェックして練習します。Elevator pitchの場合は、原稿を読むわけにはいかないので、覚えるのが基本です。ビデオ撮影で完璧に話せなくても問題ありません。とにかく、何とかして言いたいことを伝えられればいいので、納得がいくまで練習します。

Elevator pitchは、2人ペアになって行い、面接官役の人は相手のpitchを撮影します。クラス全員で共有できるように、動画共有プラットフォームのFlipを利用すると便利です。

クラス全員でビデオを見合って、このpitchで採用してもらえるかどうか、改善点があるとしたらどこか、よいところはどこかなどを、いろんな角度からコメントしあうのも大事です。

Elevator pitchの作り方のビデオもいろいろあるので、聞き取りの練習も兼ねて、授業でこれを見るのもいいと思います。