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丸山ゴンザレス『アジア「罰当たり」旅行 改訂版』感想

※2022年10月執筆。

そういえば昨日の昼間にクレイジージャーニーの再放送が流れていたそうで…電車の中で丸山ゴンザレスさんのInstagramのストーリー見て知ったので、視聴出来ず癇癪起こしそうになった。
とはいえ過ぎたことは措くとして、今月から同番組が復活するとの由、長らく待っていたので本当に嬉しい。すっかりテレビは観なくなったが、久し振りにリアルタイムで観たい番組が出来て感謝。ヤラセでもなんでもいいので、どうか長寿番組になりますように。

さて、本著はその丸山ゴンザレス氏の処女作である。ファンなのにこれまで読んでいなかった。万死に値する。本著が書かれた2005年はまだ「コンプライアンス」なる単語がここまで人口に膾炙していなかった上、丸山氏自身も若く尖っていて、随分行き当たりばったりな旅行の思い出が数多く記されている。バックパッカーになるなら、これくらい好奇心が無いと意味無いよな、と思わされる。
クレイジージャーニー(しかも後期)以降、つまり最近彼を知った者からすると、旅先で出会った人々に悪態を吐いたり、実際暴力沙汰になったりしている様子はかえって新鮮に感じられて面白かった。タイで出会い、カンボジアで再会を果たすケビンという青年の事なんて「脳ミソ筋肉白人」と呼んでいる。まあ、何一つ間違っておらず、弁明の余地も無い、最低最悪の人物なのだが。これは予想だけど、本当は「脳ミソクソ筋肉キチガイクソ白人」くらいは心の中で呼んでいたと思う。「クソ」が2回使われているのがポイント。

表紙の写真は、観光地によくある顔ハメかと勝手に思い込んでいたが、実は全然違った。元となるエピソードにくだんのケビンが関わってくる、というか全ての元凶なのだが、一読者として読む分には、馬鹿だし頭おかしいしで面白かった。
あと、マリファナでブリブリになっている様子も書いてあった。国内で合法化された暁には、いつか丸山さんと一緒にリラックスしたい限りです。宜しくお願い致します。

若き日のゴンザレス青年の写真もたくさん掲載されており、もっと早く読んでおくんだったと改めて激しく後悔した次第。顔ファンでもあるので…。
それにしても、これはかねてより思っていたのだが、加齢や体重の増加では片付けられないくらい、丸山氏の相貌が変化している。表情や顔つきだけで無く、顔を構成する諸々の形がほぼ全部違う。写真単体で見たら、別人と勘違いしてもおかしくない。若い頃は、トゲトゲバチバチしていたのが如実に表れている。
どちらも好きだけど、やっぱり今の“丸ちゃん”って感じのほうが良い。多忙で大変な毎日を送っているのであろう事など、わざわざ私から言うまでも無いが、それでも楽しくて充実した日々を送った末、現在の人懐っこい雰囲気の顔に変わったのだと思う。良い事である。などと、勝手な想像で勝手に保護者のような気持ちになる。

本著は2005年の作品を2016年に改訂したもので(草下シンヤさんからの提案らしい。このお二人は、友人としても仕事仲間としても、互いにリスペクトし合っているのが伝わってきて、大変微笑ましい)、大体のエピソードの末尾に、改訂後に加筆された、数行の解説コメントが添えられている。
また、改訂前の作品では、ページ数の関係でアフリカ編を入れていたが、改訂に際してその箇所は削除されている。代わりに、その後訪れたアジアの国々でのエピソードを収録した事で、正真正銘の“アジア”旅行記になっている。
改訂前に書かれた部分の文章は“THE 荒削り”だが、改訂後は描写力や文章力も上がり、ジャーナリストとして大切な、誰でも手に取りやすい文章の書き方が身についていると思った。偉そうにすみません。破天荒な若い旅人から有名なジャーナリストへと成長していく過程が、文体にも表れているのが面白かった。

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