公民館ゴスペル騒音殺人未遂事件について

 また騒音が原因の事件が起きたそうです。現場は名古屋市の住宅密集地の公民館。小さな駐車場を挟んですぐ隣りのアパートの住民が包丁で騒音を出していた人たちを刺したとのことです。

 もちろん人を殺そうとするのは良くないことです。これは言うまでもないことです。多くの人はそれは理解していることです。この”加害者”が元々どういう性格だったのかは分かりません。それでも確実に言えることは騒音は人の精神を破壊してしまうということです。自分の家の周りも騒音あるけど自分は気にならないと言う人もいるかもしれませんが、この人と同じ環境に置かれたらどうなるかは分からないと思います。

 事実関係ははっきりとは分かっていませんが現在出ているニュースの内容とグーグルマップで確認出来たことを羅列してみます。


  •  かなりの住宅密集地。窓を開ければ隣の家の壁が目の前というぐらい。付近には小さな会社もあったり古い町並み。周囲は細い道路ばかり。

  • 容疑者宅は築59年の木造アパート2階。公民館の反対側は目の前が隣の建物の壁で日照通風悪く公民館側を開けるしかなかったと思われる。

  • 少なくとも3回公民館に直接訪れて苦情。1ヶ月前に市役所にも少なくとも2回相談。音を落として欲しいとのお願いしていた。

  • 公民館も古い建物。防音されてないただの会議室。大人7人子ども10人がゴスペルを定期的に歌っていた。

 この事件に対して名古屋市の河村市長がコメントを出しています。

「ちゃんと役所から、その苦情についてどういう対応して、ゴスペル歌っとる人達に伝えなあかんわな。こういう苦情があるで、それに対して辛抱せなあかんのか、それともやめないかんのか、ちょこっとした防音的な対策が取れるのかとか。そういう対応をしたかどうかということをちゃんと確認して、報告してくれと今なっております」

https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20231016_30653

 このようにまだ事実確認の段階のようです。しかし、役所の対応に疑問を感じているのが伺えます。以下の役所の担当者のコメントです。

「1カ月ほど前に市役所に相談があった。そして、その翌日に区役所に話があった。(前田容疑者から)『音が気になる。再三、音を落としてほしいとお願いしています』と伺いましたので、音の出る活動がどうあるべきかについて、地域の皆さんが考えると聞いています。区役所もそこに伴走しながら考えていきたい」

https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20231016_30653

 河村市長にしてはまともなことを言っているなと思いました。役所は「地域のみなさんが考えると聞いています」などと言っており何の対策も考えず地域に丸投げしたというのが実情のようです。この期に及んで「考えていきたい」などというコメントはあまりにも無責任です。

 私はそもそもこの古い防音性皆無の建物で音楽活動をさせること自体が誤りであると思いました。超人口密集地では必ず周りの住宅に声が漏れます。時期的に窓も開けていたのかもしれません。

 20畳程度の会議室に20人近い人がいたら物凄い声になっていたと思います。今回は子供もかなりいました。子供の声というのは遠くまで通りやすい性質があります。窓の位置を考えると公民館自体が容疑者宅へ向かって巨大スピーカーのような状態になっていたのではないでしょうか。周りの建物にも反響して増幅されていたであろうことも予想ができます。

 役所はコメントから察するに実際どのぐらいの音が外に漏れ出ているのか一切確認もしていなかったのでしょう。貸し出す前に状況や人数や活動内容を確認して適切であるかどうかの判断すらしなかったのでしょう。使用条件を満たしていたら許可を出して自分たちの仕事は終わりであると考えたのでしょう。


 役所は一般市民と比べて強大な権力とお金と人員を有しています。役所の判断は市民の生活に大きな影響を与えます。それ故に慎重に市民の生活への影響を考えなくてはいけないと思います。時代の変化とともに新しいものがどんどん出てきます。ルール制定時点には存在しなかったものに対応できているのか否かを考えて、それに柔軟に対応しなくては市民の生活は守ることはできないでしょう。役所の体質は簡単には変わりませんし、騒音に対してルールを制定することにとても及び腰ですから今後も今回のような事件は増えていくと思います。

 「子どもたちと一緒に地域で音楽活動」
とても耳障りの良い謳い文句です。その結果、少数の生活が脅かされても致し方なしと考えるような人が出てきてしまっているのも現実です。そこを是正していくのは行政の責務だと思います。子どもたちのためならば我慢しろとかお前が引っ越せと感じた人は、自分が同じ立場になる可能性があることを理解しているのでしょうか。同じことを他の人達からも言われる覚悟はあるのでしょうか。

 子どもたちの活動も大事かもしれませんが、今まで日本を作り上げてきた人たちを犠牲にする社会になってはいけないと思います。そんな国になってしまえば、子供の頃の補助金だけ貰って待遇の良い国に優秀な人材が逃げていくだけでしょう。

 最後に念のためにもう一度繰り返します。人を傷つけるのは良くないことです。当然です。問題はそこに至る前に救済する制度が欠けているという点です。役所に相談しても何も変わらなかったときの絶望感ほど人間を狂わせるものはないです。

 日常生活を送る上で自分の行動が他人の迷惑になっていないかどうか今一度考えて頂きたいです。制定されているルールだけを守っていればトラブルが避けられるというわけではないのですから。


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