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【質問回答集】屈折異常弱視について


こんにちは!視能訓練士のヤスです。
視能訓練士免許(国家資格)を取得し、小児眼科に勤務して17年になります。

Instagramで『子どもの目の健康』の情報発信を行っています。

そんな中、DMやストーリーズの質問募集にて、子どもの目で悩んでおられる親御様からたくさんの質問が日々届いています。

この記事では、親御様からいただいた多くのご質問の中から、『屈折異常弱視』に関する質問とそれに対する回答を紹介します。【医師監修あり】

屈折異常弱視とは、主に遠視や乱視が原因で生じた弱視のことを言います。

※視能訓練士は診断はできませんので、一般的な眼科疾患知識の説明と現在の治療方針の解説になります。

お子様の未来のために、全国で治療を頑張っておられるパパママのお役に立てれば幸いです。

目次で質問内容を確認の上、ご購読下さい。



屈折異常弱視に関する質問

(Vol.1)  弱視矯正メガネを初めて作りましたが、「かけた方がぼやける」と言います。そういうものでしょうか?(5歳)

【質問】
5歳の娘が+2.5、+2.25の遠視で昨日から弱視治療メガネをかけ始めました。
頑張ってかけてはいますが、メガネをしたほうがぼやけるようで度々外してしまいます。
弱視治療のメガネは、やはりかけ始めはぼやけて見えるものなのでしょうか?

【回答】
そうですね。
メガネのかけ始めはぼやけて見えることも多く、多くのお子様が嫌がるところからのスタートしています。 

まず遠視の正確な度数を調べるため
、おそらく眼科で2.3回目薬(調節麻痺薬)をしてピント合わせをする筋肉を一時的に麻痺させてから度数を測ったことと思います。

そうしないと子供はピント合わせをする力が強すぎて度数のデータが不安定になってしまい、本当の値がわからないからです。(遠視が実際はどれくらいあるかわからない)

目薬(調節麻痺薬)が効いている間にメガネをかけ始めることができれば、ぼやけを感じずにスムーズにかけ始めることができますが、目薬の効果は1〜2日ほどで効果が切れてしまう(調節麻痺薬のサイプレジンの場合)ため、またお子様のピント合わせの力が復活して、遠視によるピンボケを解消しようと頑張りだします。

その状態(ピント合わせを努力している状態)に、急にできあがったメガネをかけても、力を入れて見ていた目の筋肉はそんなにすぐに力を緩めることができないので、そこにズレが生じて最初はボヤケを自覚します。

それでもそのまま正しい度数のメガネを常時かけるように頑張っていると、「あれ?力を入れなくても楽にピントが合うぞ?」と脳が目のピント合わせを緩めだし、徐々にメガネでよく見えるように順応してきます。

最初が一番大変です。

メガネに順応したらかけてくれるようになるので、根気よく頑張っていただければと思います。

(Vol.2) 4歳9ヶ月で弱視が発覚│治療はまだ間に合いますか?

【質問】
先日4歳9ヶ月の娘が先日強い遠視の弱視と言われました。

一年ほど前に3歳児健診で見えづらいかもと言われていたのですが、コロナなどで受診がのびて今になり、楽観視していた自分を責めてしまい、もっと早く連れて行ってあげればと毎日落ち込む日々です…。

弱視治療は早ければ早いほど良いと聞きます。
この年齢は遅いでしょうか?

数日後に紹介状を書いてもらった専門の病院に行くようにしています。 

【回答】
一般的に弱視の治療は4歳9ヶ月からの治療でもおそくはありません。

視力の成長スピードは、弱視が両目同等なのか左右があるのか、また斜視の合併があるか等によって多少変わります。
視力の左右差がある場合や斜視が合併している場合は、少し向上スピードが落ちます。

5歳頃から治療開始になるお子様もたくさんおられますが、メガネの治療(必要ならアイパッチ等も)がしっかりできた場合は順調に視力が育つことが多いので、希望を持って治療にのぞんでいただけたらと思います。

(Vol.3) 強度遠視の弱視治療中です。遠視は近業を増やすことで軽くなりませんか?裸眼視力はよくならないのでしょうか?(1歳4ヶ月)

【質問】
1歳4ヶ月の娘が8ヶ月の時に強度遠視とわかり(左右ともアトロピンで検査して+7.5くらい)、1歳0ヶ月から治療用眼鏡をかけています。

質問なのですが、成長によって目が大きくなる事以外で近視の方へ移行していく原因はありますか?

昔からよく暗い所で本を読むなとかゲームや勉強のしすぎで目が悪くなるとか色々言われてきましたが、素人考えで、遠視を近視の方向へ持っていきたいなら、あえて目が悪くなると言われている事をさせたらいいのでは?と思ってしまいます。(それでも+7.5が0にはならないでしょうけど…)

あと、よく症例を挙げてくださっているのを見ると、どの患者さんも眼鏡装用からわずか数ヶ月で視力がぐんぐん上がっている印象がありますが、やはり裸眼ではそんなに視力は上がらないのでしょうか?

娘を診てもらっている大学病院でも、眼鏡をかけた状態で視力が出れば良いと言われていますが、親としてはせっかく早期発見できて、通りすがりの人から赤ちゃんに眼鏡?と散々質問されながらも頑張って毎日しっかり眼鏡かけてくれている娘を見ると、裸眼視力もついてくれたらいいのになと希望を持ってしまいます。

また、度数そのものは成長期にぐんと目が大きくならなかった場合、あまり変わらないものでしょうか?

長々と質問をしてしまい申し訳ありません。お返事いつでもけっこうですので、どうぞよろしくお願いいたします。

【回答】

まず『成長によって目が大きくなる事以外で近視の方へ移行していく原因はありますか?』に対してですが、

近視には軸性近視(眼球が大きいがゆえの近視)と屈折性近視(目のレンズである角膜や水晶体の光を曲げる力が強すぎて起こる近視)の2タイプがあります。
またそれらの要因が合併していることもあります。

ただ、子供の近視の進行要因のほとんどが前者です。
後者は白内障などの疾患に伴って生じる近視であることが多いです。

よって、近視を進行させやすいと言われている近業過多(ゲームや勉強等)に関して、遠視による弱視治療中のお子様においては、ほとんど気にすることがないのは事実だと思います。
※ただし内斜視がある場合は要注意なので主治医に確認が必要

近業が実際に遠視を減らす効果があるかについてはっきりはしていませんが、理論上は効果は多少なりともある可能性があります。

少なくとも弱視訓練の意味合いとしては、ゲームも推奨します。 
楽しみながら目と指先を使うことで、脳への刺激があるため、視力が育ちやすいからです。

ただし、長時間に及ぶ近業や至近距離での作業は斜視(内斜視や疲れによる外斜視)を誘発する可能性もあるので、リスクがないか主治医への確認が必要です。

ただ、実際の臨床で、中等度以上の遠視の方が全くメガネがいらなくなるまで遠視が減少した例を自分は経験したことがありません。

今の医療では非常に難しく、不確定すぎることを目標にして治療を行うことは正直おすすめはしないですね...

同じ子供を持つ親としては、何でもできることをしてあげたいというお気持ちは非常によく理解できますが、こればかりは正直難しいとしか言えない現状です。

度数はあまり変化しなくても、根本の視力の向上(弱視治癒)に伴い、裸眼視力も多少向上はする可能性はあります。

あと成長期以降の度数変化については、老化要素による多少の変化程度で、ほぼないものだと考えていただいて良いと思います。

周りからの目も気になりますよね。
でもかなり早期に発見できたことは、お子様の未来へ非常に大きな視力のプレゼントになっていると思いますよ。


(Vol.4) 右目は近視、左目は強い乱視による弱視が発覚|ゲームやYouTubeが原因?生まれつき?(5歳)

【質問】
子供の就学前健診で視力検査があり、0.3以下という数字が出て驚いて直ぐに眼科にかかりました。

右目が近視で0.3くらい、左目が強い乱視で0.7ということで、弱視治療のメガネを作りました。

衝撃と今までなぜ気づいてあげられなかったのかという申し訳なさでいっぱいで、本人にもごめんねと伝えています。

例えば日常生活に困るぐらい食事のときによくこぼすとか、注意散漫だったりするところも、視力が原因なのでしょうか。

また、ゲームやYouTubeで乱視、近視がひどくなってしまったのでしょうか。

かかった眼科の先生は、生まれつきだからそんなことはないとは言われたのですが、どうなのでしょうか。

勉強不足で質問ばかり申し訳ありません。

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