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子どもの弱視|視能訓練士が徹底解説!読めば必ず理解できる!


※この記事は【一般患者様向け】の内容となっています。

こんにちは!視能訓練士のヤスです。
視能訓練士免許(国家資格)を取得し、小児眼科に勤務して16年になります。

Instagramで子供の目に関する情報、主に弱視や斜視についての情報発信を行ってまいりました。

しかし、一回のInstagramの投稿で届けられる情報は限られており、数ある投稿の中から知りたい情報を探し出すのも大変だと思います。

そこで今回は『これさえ読めば弱視が理解できる!』と言わんばかりのまとめ記事を書きました。

弱視治療のスタートアップに役立つ情報を集約したので、お子様が弱視と診断された親御様にはぜひ読んでいただきたい記事です。

親御様が疑問に感じやすい「弱視のここが知りたい!」をつめこみました!

★ 最後までじっくり読んで「弱視」をしっかり理解するのも良し!
★ 自分の知りたいところだけ見るのも良し!
★ ふと気になった時に何度も読み返すのも良し!

根気のいる弱視治療の手助けにしていただければ幸いです。

【 この記事でわかること 】
・弱視とはどういう状態か
・裸眼視力と矯正視力の意義
・遠視、近視、乱視について
・弱視の原因と治療法
・斜視と弱視の関係
・弱視の治療予後
・弱視のタイムリミットの実際
・メガネが外せる条件
・両眼視機能とは何か
・視力や両眼視機能を鍛える方法
・斜視や弱視の早期発見方法
・弱視等治療用眼鏡の申請方法
・弱視に必要な検査(診断と経過観察)
・メガネやアイパッチをスムーズに行うコツ
・水中ゴーグルについて
・子どもにおすすめのメガネフレーム
・弱視の再発について
・弱視の遺伝について
・先天性白内障や先天性眼瞼下垂の治療の流れ 
  など


弱視とはどういう状態?

弱視の定義


『弱視』を理解していく上で、まず最初に知っておくべきことは“目が見える仕組み”です。

まず、眼球に入ってきた光が網膜の中心部(黄斑)に焦点を結びます。
その光刺激が電気信号に変わり、視神経を通じて脳の視中枢に伝達され、人は「見えた!」と像を認識します。(図1)

図1 物が見える仕組み

眼球から脳の視中枢まで、これらのどこが障害を受けても、目は見にくくなります。

では、弱視とはどういう状態なのか。

例えば、屈折異常弱視の場合、視覚の入力部分である眼球に生まれつき強めの遠視や乱視があり、外界の景色が目に鮮明に映りません。

そのために、目がぼやけた世界で過ごすことになり、眼球より後方の視路(視神経〜脳細胞)もそれ相応の中途半端な発達状態でストップします。

この脳の発達不全を『弱視』というわけです。(図2)

図2 弱視の成立

弱視になる原因は目にありますが、弱視の成立は脳の病態です。

成立と書いたのは、生まれた時からいきなり弱視というわけではなく、徐々に弱視と呼べる状態になるためです。

弱視は脳の見る能力の発達不全ですから、『メガネやコンタクトで矯正しても視力が出ない状態』だということです。

よって、弱視の治療目的は『脳(視覚)の発達=矯正視力の向上』です。

よく親御様が、「弱視が治るのは裸眼視力が向上してメガネを外せるようになること」だと勘違いされており、物を見る能力(脳)が育っても、遠視や近視や乱視がなくなるわけではなく、裸眼視力が良好になるとは限らないということです。

◎ 裸眼視力と矯正視力

裸眼視力は屈折異常(遠視、近視、乱視)を矯正せずに裸眼でどれくらい見えているかを表した視力で、矯正視力はそれらをメガネやコンタクトレンズで矯正した上でどれくらい見えるかを表した視力です。

矯正視力の測定の意義は、その人の見る能力の限界を知ることにあります。
そのため眼科では、視力が良いか悪いかの判定基準は矯正視力を参考にします。
裸眼視力に影響する屈折異常(遠視、近視、乱視)自体は目の病気ではなく、眼球の形を表したもので、顔の形が皆違うのと同様に個性の範疇になります。


視力の正常発達と弱視の成立


生まれた時から『弱視』というお子様はいません。

生まれてすぐは誰もが物を見るために必要な神経細胞が全く育っていない未熟な状態からのスタートです。

生まれてすぐの視力は皆(0.01)程度だと言われています。

これは眼球の形が遠視であろうが近視であろうが同じで、いくらメガネ等で矯正しても、脳で見る準備が整っていないので(0.01)だということです。

ここから正常であれば、お母さんやお父さんの顔をはじめ、外界の色んな物を見る経験によって脳の神経細胞が増えていき、視力の最高値が「0.01 → 0.05 → 0.1 → 0.2…」のように育っていきます。

徐々に像をクリアに見る能力が身についてくるというわけです。

図3 視力の発達

個人差が多少ありますが、通常であれば、図3のように子どもの視力は育ちます。

しかし、屈折異常(遠視、乱視、強めの近視)や恒常性の斜視(1日中斜視のまま)等の個性をたまたま持って生まれたお子様の場合、これらを手助けするための治療(メガネや斜視手術等)が行われないと、日常生活で物をきれいに見るという経験が不足し、本来なら視力がぐんぐん伸びる発育時期に、脳の神経細胞はある一定以上育たなくなります。

屈折異常や恒常性斜視等がないお子様の視力の発達に比べ、「時間が経つにつれ、その差が広がっていく」というわけです。(図4)

図4 正常発達と弱視未治療の経過

この差が大きく広がる前に弱視を発見し、治療に繋げることが理想と言えます。

早期に治療が開始できると、治療もスムーズに進み、視力予後も良く、また両眼視機能(立体感覚)といった高度な視機能も獲得しやすくなります。

そして、「早期発見・早期治療」が大切な最大の理由は、弱視の治療にはタイムリミットがあるということです。

教科書的にはタイムリミットは「9歳頃まで」と言われており、さらに治療に反応しやすい時期のピークは3歳までに訪れるため、タイムリミットが近づけば近づくほど視力は向上しにくくなるということです。
※ 弱視の種類別のタイムリミットについては後にさらに詳しく解説します。

弱視の分類(原因、治療、予後)


子どもの弱視を原因別に大きく分類すると、
①屈折異常弱視
②不同視弱視
③斜視弱視
④微小斜視弱視
⑤形覚遮断弱視
の5つに分けることができます。

それぞれがどういう弱視で、どのように治療をすすめていくのか、治療予後はどうなのか等について解説していきます。

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