人生で初めてカレーを「まずい」と思った日
はじめに
筆者が最も好む食べ物は何を隠そう「カレーライス」である。コロナが流行る前の大学1,2回生の頃は、関西カレー読本を持ちながら様々なカレー屋を巡ってきた。
そんな筆者が人生で初めて、カレーを目の前にしてスプーンが止まったときの話をしたいと思う。
関西某所の洋食屋
その日は、筆者の家業である塗装業の手伝いで関西のとある場所に来ていた。
朝飯を食う時間もなく、あくせく塗装しやっと昼飯の時間になった。さて、どこに飯を食いに行こうとスマホで検索をかけると、近くに洋食屋を発見。
食べログの評価も上々、「隠れ家的名店」と気になるコメントもある。これはいくしかねぇと筆者は、即決でその店へ向かった。
店内の雰囲気は、昔懐かしい洋食屋。きっと昔から地元で愛されて営業してきた店なのだろう。常連と思わしき客が、なれた口調で注文しているのが聞こえてくる。
何を注文しようかメニューを見ると「カツライス」や「ハンバーグランチ」などに並んで堂々と「カツカレーライス」の文字を発見。よしよし、こいつでこの店の実力を見てみよう。そう思い、筆者はこれまた即決でカツカレーライスを注文した。
今思えば、常連らしき人たちが誰もカレーライスを頼んでいないことに気づくべきだったのかもしれない。彼らは口をそろえて「カツライス」を注文していた。これに気づいていれば……
カレーなんかどうやったら不味くなるねん
筆者はそう叫ばずにはいられなかった。運ばれてきたカツカレーライスは、見た目も綺麗で食べる前は1ミリも不味いと思わなかった。だが見た目はいいから、味もいいだろうという憶測は甘すぎた。
デブの筆者は、カレーなんか一口食い始めたらスプーンが止まらないのだが、その時はあまりの不味さに手がピタリと停止し動かなかった。体が二口目を食うのを拒否しているのだ。
そのレベルでほんんんんっとうに不味い。どうやったらカレーがこんなに不味くなるんだ? 子供が食う星の王子さまみたいなレトルトカレーのほうが100倍美味いぞ。
カレーという食い物は「カレーの味」という前提があって、そこからスパイスやら付け合せ、辛さなどで各店の味の個性を出すものだ。しかしこのカレーはその前提が破綻している。つまり「カレー味」がしないのだ。いやなんなら「味」そのものもほとんどしねぇ。
自分のコロナを疑ったが、先に出てきたサラダはちゃんとドレッシングの味がした。俺は今、よくわからない焦げっぽい味がする茶色の液体でご飯を食っている。
味がほぼしないものを掬っては食うの繰り返し。なんという作業、なんという虚しさ。腹は膨れても心が満たされない。
この食事の虚しさを例えるならば、筆者がニュージーランドに留学をした時、筆者の誕生日にホストファミリーだけが外食しに行き、「お前の飯はレンジにある」と言われ1人家でチンしたホットドックを涙を流しながら食ったあの日並みに虚しい食事だった。
一緒に来ていた父は、普通に「ハンバーグランチ」を食っている。ということはこの店はカレーだけが極端に不味いのだろう。また、店の名誉のために言うが、カツとカレーの中に入っている肉はちゃんと味がしたし、美味かった。
なんとか完食しきったが。午後の仕事をほっぽりだして、俺の最愛のカレーを食いに行って上書きしたい気持ちでいっぱいだった。
さいごに
もちろんこんなことで、筆者がカレーを嫌いになることはない。だが筆者の「カレーは不味くなりにくいから、平均点が高くなる」という考えは崩れ去った。
あぁ……高槻のヴァスコ・ダ・ガマのカレーがくいてぇ。ヴァスコ・ダ・ガマの美味いカレーで、この記憶を消し去りたい。
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