顔
「結婚なんてしたらもう相手の顔はたった一面しか見られないものよ。結婚なんて同じような毎日で私に見せる顔なんてどうしても一つでしょう?」
そんなことを言う。
私だってあなたの顔はたった一面しか見られていません。同じような毎日の中であなたという存在だけが輝いて見える。どんな顔をしてもあなたという存在のイメージは変わらない。あなたの顔はずっとあなたらしい顔。それが恋でしょう?
「あら、もうこんな時間ね。彼が帰る前にお夕食の準備しないといけないから今日はそろそろ帰るわね」
気付かないあなたはずっと幸せそうだ。愚痴だって明るいのだ。じゃあ私の顔はどうですか。乱視でボケたもののように2つに、いやもっと3つに、4つに、節操なくいくつもあるのでしょうか。叶うならくっきりと1つに。叶うなら。