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【告発】正籬副会長の息子は本当に適切な副業許可を得たのか?

今回は、世間様というよりはNHK内を揺るがせているこの記事の件について深掘りします。

結論からいきます。「許可を得た」のが真実だとすれば、それこそが不正以外の何物でもありません。協会時代に番組関連本を出した事のある私からしても信じられない事です。

既に、秋の組合闘争でも各局で「副業」の恣意的な運用や協会上層部への忖度について議題に上がっていると聞きます。NHK職員からすれば、誰がどう見たって許可された前例が無い異常な事案なのです。

実は私の在職中から噂にはなっていました。次期会長を巡る動きや、年末調整の為の書類提出など、弾けるべくして弾けたと言えるでしょう。

NHK副会長・正籬聡の息子とは?

実は、週刊女性の記事には一部事実誤認があります。その正体に公開情報から迫ってみます。

悲しいかな、正籬という苗字は大変稀です。検索すると一発でヒットします。

正籬卓 氏で間違い無いようです。「さわやか自然百景」という自然番組を担当していました。ローカル局の若手のうち、科学やNEPの自然番組に行きたい人が主に担当する番組です。

直近では、こちらの制作裏話でも登場しています。

ちなみにこの番組のカメラマンは、かの有名な海老沢元会長の息子さんでした。悪い評判は知りませんが、小説よりも奇なる因果な巡り合わせですね。試写する方もしんどかったんじゃないでしょうか?

エンドクレジットの再現

鋭いNHK職員の読者ならわかりますね。週刊女性の事実誤認とは、「ドラマディレクター」の部分です。彼の担当番組から察するに、正しくは「自然番組志望のディレクター」と言えるでしょう。

ただ、番組を私が見た感じはかなり平凡でした。映っているだけの映像に、ちょっと無理あるナレーションが乗ってるという印象です。私はヨシもカイツブリも取材していたことがあるので、見る目が厳しいのかもしれませんが… いずれにせよ、ディレクターが心から対象に関心を持って作った番組とは感じられませんでした。

もしかすると、自然番組志望の理由は、移動や待ちが長いから執筆活動と両立しやすいからかもしれませんね。

正籬卓 氏の創作活動歴を追う

今だから言えるのですが、実は、私は週刊女性の記事が出るよりも前に彼の正体を掴んでいました。正籬親子はこの件をひた隠しにしたかったようですが、Web上には確かに痕跡が残っていたのです。

まず、彼の名前で検索すると、東大のHPがヒットします。

確かにありますね、「夏は終わらない」(小説)正籬卓 と。詳細ページのリンクが切れていますが、WebArchiveに残っています。

私としては、副会長の息子が小説家だという話は知っていたのですが、作品名までは分かりませんでした。「夏は終わらない」は作品名としてはかなりありふれているので、検索しても見つけられません。局内でも作品の具体名を知っている人は私の周りにはいなかったので調査は頓挫してしまいました。

しかし、この「夏は終わらない」を入手できれば文体や作風から特定できるかもしれないと私は考えまして、東大の伝手を使って原文の入手を試みたのです。

結果、部分的に作品を入手することができました。

で、読んでみると、冒頭に少し特徴的な比喩が見つかりました。

「マーガリンのごとく従順に、対象は刃を受け入れた」(正籬卓・「夏は終わらない」より)

この表現で検索すると、手がかりが掴めました。

既に削除されていますが、indexは残っています

「ひもろぎ」というHNがヒットしました。当該の投稿サイトを読んでみると、こんな記述があったのです。

正籬卓氏のペンネームを特定した

と、11月の頭にようやく「逆井卓馬」と特定に成功したのです。

2019年のこちらの電撃大賞には「《金賞》 『豚のレバーは加熱しろ』 境居卓真(23歳・青森県)」とあります。何かのきっかけがあって、漢字を直したのかもしれませんね。

ちなみに、私は豚の生レバーも食べたことがあるのですが、サクサクとした歯応えで、この小説の描写とは異なる印象でした。鮮度が良ければ食べても多分大丈夫。転生しません。

NHKの副業規定・職員就業規則の許可事項を満たしているのか?

ここからが今回の肝です。当の逆井卓馬氏(正籬卓氏と見られるアカウント)は「兼業作家ですがきちんと正式な許可を得て作家活動をしています」と主張していました。正式な許可を得ているとしたら、それこそ異常な事態です。

まず、そもそも執筆・出版は許可事項とされています。とりわけ、商業目的の場合には、厳しいチェックのもと部局長の許可を得る必要があります。「許可を得ずにやってはいけない」と定められている以上、運用もかなり厳格なのです。NHKは公金で運営される公共事業体である以上、当然ですけどね。

その際の判断基準は以下の通りです。私は元職員ですから、この程度のことは暗唱できて当然です。

  • 協会の不偏不党、公正性および信頼性など、公共放送としての信用や名誉を損なうおそれがない。

  • 相手先となる企業や団体との間に職務上の利害関係等がない。

  • 協会の業務を遂行するうえで支障がない。

  • 職場の秩序をみだすおそれがない。

これに加えて「判断の根拠」を具体的に上司が記述する必要があります。

職務を自律的に遂行できる(文春や新潮に寄稿していた岩田明子氏のような)ベテランならまだしも、彼の入局って2018年かそこらですよね?電撃大賞が2019年とすると、1年目からずっと作家活動をしていたことになります。まだ仕事も覚える前の段階から兼業作家としての活動が認められるなど、前代未聞なのです。仕事に支障が無いように上司や部局長が便宜を図ったと考える方が自然です。

また、作品としての面白さとは別にして、副会長の息子が斯様な作品をNHK職員の立場でありながら出版することは、本当に公共放送としての信用や名誉を損なわないのでしょうか?

「既にNHKの信用や名誉は失墜しきってるからこれ以上下がらない」という言い訳は無しですよ。

部外の方にはなかなか分からないかもしれませんが、番組関連本を出すだけだって、この許可事項を通すのは面倒なんですよ。事後承諾は今は許されません。適切な手続きを踏もうとも、許可が通らないこともあります。

このようなライトノベルが通ったケースなど、聞いたことがありません。20年・30年勤めているベテランにも取材を行いましたが、新人で許可されたケースを知っている人はいませんでした。

さらに、直近も作品が刊行されています。

いつ執筆したのかわかりませんが、本当に1秒たりとも勤務時間と重なっていないと言えますか?勤務中に思いついた構想やフレーズがひとつも無かったと断言できますか?んなわけないですよね。

NHKにおける副業(兼業)規定はそれほど厳しいものなのです。これが正式に許可を得ているとしたら、副会長の息子ゆえに特別な便宜が図られた以外には考えられないのです。

大体、星海社はそんなにNHKと関係無いですけど、角川ってNHKとも日常的に取引がありますからね。今年は理事が“横滑り”してもいました。

角川とNHKの間に不適切な“密約”が無かったかについても、今後、検証が必要になるでしょう。

NHK内でも副業関連の議論が巻き起こる

NHKでは副業で処分された職員がこれまでも大勢います。自主映画ひとつ作ろうにも許可が全然降りずに、頓挫してしまったケースも枚挙にいとまがありません。

NHKにおいては近年、副業について規定が若干緩和されました。しかし、それでも「55歳以上の職員が公益性の高い団体で兼業を実施する場合(公益的兼業)」が認められるようになった程度です。

今回は「20代の職員が私的にNHKと競合関係にもなり得るメディア企業で出版したり、権利収入を得たりする」と見られる事案です。NHKで緩和された副業運用とは正反対なのです。

折しも、11月末は秋の組合闘争期間です。全国の各局で「副会長の息子の件が正式に許可を得ているのなら、他にもあらゆる副業を解禁すべきだ」という声が組合員たちから上がったと聞いています。

この件について、NHK広報局も副会長も本人もメディアの取材から逃げ続けています。

幹部の子弟が入局しているだけだって異常なのに、公共放送の職務よりも執筆活動を優先しているかのようなことが認められて良いわけがありません。

引き続き、私としてはこの事案について追求を続けていきます。

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