第一章 動乱前夜 第一服 三午生休
午三にして休を生む
さかひこゑ ちぬなぎぬれる 馬の子は
千世のむつきを かさねうるかな
雲一つない晴れた日であった。
鳥が小さく実のなった梅の枝に留まって啼いている。障子に映し出された影が、少し揺れた。シュンシュンと、切合の風炉に置かれた釜から松風の音が聞こえている。
風炉は火鉢に風通しの窓を空けて炭の火が消えぬよう工夫した道具である。この風炉はその左右に鬼の顔をした耳があり、丸い金属の環――釻を咥えていた。銅に錫や鉛などを混ぜた古銅とも言われる唐銅で出来た