みなに幸あれ

みなに幸あれ


総合プロデュースが清水崇のホラー映画。
東京の看護学校に通う主人公が家族と父方の実家に帰ると、田舎の奇妙な出来事に違和感を覚えていき…

全体的におかしな現象しか起きてないが、怪奇現象の中心となる物体とかは出てこない。
随所に人である、常識な事はあえて言わない、そう言うらしさが描かれていて不気味と言えば不気味。


ネタバレあり


東京の看護学校に通う女の子が主人公で、父方の田舎に行くところから話が始まる。
ここで家族が熱を出してて主人公だけ先に帰る。
そして田舎に帰り着くと、どうにもみんながおかしい。
頻繁に幸せであるかを確認するし、幸せは誰かの犠牲の上に成り立つと諭してくる。それが、現実であると。
たいして、主人公は看護師を目指すのは母親の影響で、誰かを助けたいからだと語る。

何日か過ごすと主人公はとんでもないものを見てしまう。

それは目と口を縫い合わされた中年男性で、なんとか這いずって主人公の家から脱出しようとしているところだった。

ちょうど朝食取ってる時間で、主人公の祖父母に発見された男性は引き摺られてある部屋に戻されてしまう。

それは、主人公が幼少期、眠っている時に物音がして確認しに行こうとした開かずの間だった…

この異常な状況を祖父母に問い詰めるも祖父母は、お前はまだ現実を知らないと言う。

幸せの総量は決まっていて、椅子取りをしていると。
うちが幸せなのは、コレがあるからだと。


ここから、主人公は昔馴染みの男の子とこの男性を拘束から解き放つ事になるが、祖父母はそれを咎める。
曰く、人様の家の事情に首を突っ込むな。と。

どうやら昔馴染みの男の子はコレが何か全て把握した上で解放したらしい。
主人公は事態を把握できないまま、男性を解放したが、解放された男性は精神に異常を来したのかフラフラとした足取りで外へ出て行く。
男性を追いかける主人公と昔馴染み、それを追いかける主人公の祖父母。

途中、両親と弟が乗る車とすれ違い、両親が降りてくる。

その後目の前で男性は軽トラに跳ねられ、主人公の父親が男性を荼毘にふす。

主人公は両親と祖父母に問い詰めるが、家族は主人公を諭してくる。
お前は現実を理解していないと。


その後、続々と変調をきたす家族。出血、痙攣、笑い始めたら終わりが近い。お前がやったんだから、代わりを探してこいと父親が主人公に言う。

主人公は昨日荼毘にふしたところに行くと、見知らぬ老女が話しかけてくる。
大変な事になったわね。と。

あんた、可愛いんだから、街にでもいって代わりを探して来なさいと。

そして、昔も同じことがあって大変だったと伝えられる。
その時は、あんたの父親の姉だった。あんたと同じで現実が何もわかってないお花畑だった。と。今村には年寄りしかいないから、余計な事はするんじゃない。と。

そこで、主人公は初日に見た古いアルバムの中で、顔が削られた女性を思い出す。

その写真を手に父親に詰め寄るも、父親は俺の姉貴で、お前の伯母だと言う。
昔家出してどっかでのたれ死んだんじゃないか?と。
山の方で見たってやつも居たと言うあたりで主人公は家を飛び出して伯母を探しに行く。


近所で聞き込みを続けた結果、山に住む伯母の居場所を特定し、廃墟じみた場所にすむ伯母の元に辿り着く。

伯母に話を聞くと、この世は仮想現実で0と1で成り立っていると、幸せの尺度は他者との比較でしかない時点で全て幸せになる事は無いと、死ぬ事は仮想現実からの脱出だと、言い放つ。

そして、伯母から薪割りを習う。
この時、間違った斧の使い方を学ぶ。
本来なら、斧で軽く薪に打ち付けて食い込ませ、その状態から振り被らずに斧を進ませるが、伯母は斧を力一杯薪に叩きつけるように言う

そして力一杯斧が叩き込まれる伯母の頭

事態に取り乱し、主人公が伯母の家の中で見つけたのは

目口を縫い付けられ吊るされたミイラであった…

ここでも行われていたのだ…


主人公は取り乱しながら森を彷徨い、疲れて眠ってしまう

その晩、夢を見る


祖父母と両親が、あの男性を歓待する様を。

主人公は知らなかったわけじゃなかった。
記憶の底に封じていただけだった。

マレビトを歓待し、贄にする田舎の風習を。


それから記憶を取り戻した主人公は徐々に田舎の風習に則って…
みなの幸せの為に…



陰鬱なシーン満載。お婆ちゃんがお爺ちゃんの指をしゃぶるシーンと妊娠したお婆ちゃんが出産するシーン。コレはやってますわ。お爺ちゃん。

あと、弟に症状(目から出血、痙攣)が出てるのに一切無関心な両親とかかなりグロテスク。

自家製の味噌がどうも贄由来である点。

映画を観た感じだと、贄は、目と口を縫い付け、四肢を縛り、家に来る厄災を代わりに引き受けるヒトガタのような扱いに見えた。
作中の言だと、幸せの総量が決まっていて、幸せになる為に誰かを犠牲にする、誰かから幸せを奪い取る必要がある。そのために幸せを奪われる側の存在。Fateで言うところのアンリマユみたいな全てを剥奪して良い存在が作られてたのだろう。
だから、拘束を解くと今まで受け皿があった厄災が家族に降りかかる。

ただ、贄由来の味噌を常食していた主人公家族のみが出血、痙攣の症状を病む事から、贄にはヒトガタの魔除けと言うよりヒンナガミや犬神のような能動的に幸せを取りに行く呪物のようにも見えた。
また、村に住む人間の中にはこの贄が無い家もあり、主人公の昔馴染みの男の子の家には贄がなかった。
そのせいか、主人公の祖父は主人公に男の子と会う事を禁じていたし、家に贄のない人間、自分の幸せの為の身代わりを持たない家の人間は幸せになれない。と感じている。

ソトから来た存在をマレビトとして歓待する話はよくある。
マレビトは村の中に財をソトからもたらしたり、病を持ち込むので、境界に道祖神が置かれて、厄災を持ち込ませないようにするし。
贄になっていた人は人として扱われていなかったので、差別を受けていた身分なのもあるのかもしれない。
ソトから来る人は身分を持たないもんだし…
舞台になっているだろう場所は福岡だし。

幸せの為に誰かを犠牲にしていて、それをおかしいと思いつつも、同調していくところが、とても人間らしくて結構好き。
ミッドサマー的な感じがあった。

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