小豆を煮詰める間

彼は小豆を煮詰める。プクプクと小さい泡がたち、お湯の中で小豆達もクルクルと小さく
周り始める。

その動きに合わせるかのように
彼は煮詰める間
私の胸に顔を埋める。

時々、アクをすくいにゆく。
すくい終ると、また顔を埋める。
髭ズラで小豆と同じように、小刻みに
顔を動かすから、谷間はみるみる
ミミズ腫れ。真っ赤になる。

小豆と乳首って似てるよね?
見下ろしながら、問うてみるけど
眼鏡を外して髭ズラをスライドさせながら
彼は無言。
何も言葉は発さない。

その仕草を愛おしいとも感じる。
だけど、情欲に火がつかない。
いつから、石油切れしたんだろう?
自分の胸に問うてみる。
複数点火できるライターを見つけた時から?
思い出せない。

5回目のアクとりに彼が離れる。

素早く身支度を整える。
「帰る」
素早くLINE。彼の部屋を出る。

小豆を煮詰める間に戯れる位で
丁度いい。

彼はライターを持ってる。
なのに
自分は点火できない。

彼はライターを複数持ってる。
なのに
自分の火種がもうそこに無い。





















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?