朝顔

早朝にぱっちり目が醒めた
眠気は昇りかけの朝日に吸収されて
私の脳内からは完全に消滅している
詩を書くにはまだ早いな
そうだ散歩
散歩に行こう
夜露で濡れた草花に触れて
柄にもなく爽やかな一日を始めようじゃないか
このラッパ型の夏の花は
今にもしゃべり出しそうだ
ある家の軒先に朝顔がびっしり咲いていた
おはよう
返って来る気がして声を掛ける
おはよう初めまして
受け取った気がしたのは
夜が去っていく間際に残した魔法か
靄で霞んだ小径を出来るだけゆっくり歩く
まだ他にも挨拶が可能な花がいるかもしれないからね
見落とさないようにゆったり歩く
この不思議な早朝の魔界に
迷い込んだ私はあの世の扉にすら手が届く
飛び回ってる魂たちを感じながら
来た道を戻ると
さっき私におはようと笑った朝顔は
ただの花になっていた
太陽が完全に昇りきっていた

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