淫乱
たった今、セックスを終えたところだ。
男はいつだって事を済ますと即効寝る。
肉体労働者が風呂上りにビールをあおって
眠りに堕ちるのといいとこ勝負だ。
女はいつだって、深い夜に置き去りにされて
私はひとり、言葉の海に揺蕩うばかり。
眠剤は飲んだけれど、アテにはならないだろう。
この男を愛しているのか、わからないから
愛してるわ、と言う。
俺も愛してるよ、と男は返す。
嘘じゃないだろう、抱き方で伝わってくる。
愛しても愛されてもいない男と寝過ぎた私に、
愛情を体を以ってして教えた初めての男なのだから。
汚れすぎた過去が、ためらいの原因なのだと思い込んでいた。
でも、20年間封印し続けてきた、忘れなければ生きてこれなかった、
純潔の愛の刻印が、最近になって再び芽吹き始め、
彼のことを命がけですら愛し抜けなかった自分が、
やたらめったら男とやりまくっていた時代より
よっぽど穢れているのだと、もしかしたらもうこの世にはいない彼と
はっきり目が合ったように、気付かされたのだ。
たった今、私を抱いた男の傍らで、こんな文章を認める私は、
薬指を縛られた今も、昔とちっとも変わらず、淫乱だ。
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