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じいちゃんが死んだ


じいちゃんが死んだ。
高校を卒業するまで同居していたじいちゃんが、
帰省するといつも「おかえり」と迎えてくれていたじいちゃんが、救急車で病院に運ばれたまま、そのままだ。

荼毘に伏すまで、急に目を覚ますかもと思って家族みんなが何回もじいちゃんを確認した。
もちろん眠ったままだった。

線香をあげて、お水をあげて、手を合わせていく。
でも、そんなの不自然だった。
だってつい一昨日まで、同じダイニングテーブルでお話してたじゃないか。
そりゃあじいちゃん、病気のせいでいくらか苦しそうだったよ。
でもいつも通りに、いや、いつもより豪勢なご飯をあげる方がよっぽど自然に思えた。

納棺師の方が眠るじいちゃんの布団を開けた時、ドライアイスで手にたくさんの霜がついていた。
そうだよな…普通の人間ならそんなことってないよな。
ほっぺも耳たぶも冷たかった。
でもまだだ、もしかして目を開けるかもしれないって思ってた。

出棺の時間が迫って来た時、じいちゃん、早く起きないと焼かれちゃうよって思った。
まだ眠ったままで、どんどん綺麗なお花が飾り付けられていく。
ありがとうって感謝も伝えたし、泣きながら書いた手紙も持たせたけど、まだじいちゃんは起きない。実感がない。

火葬場について、いよいよ火入れとなった。
信じられない。窓が閉じられて、ゆっくりと炉に入っていく棺桶。
たしかにじいちゃんはその中にいた。
でもまだ、よく分からなかった。

骨は立派で、さすがじいちゃんだと思った。
やっぱりもう居なくなってしまったのかな、と少し思えた。
確かにじいちゃんは亡くなったのかもしれない。

みんなで家に帰って来た。
祭壇には、笑顔のじいちゃんの写真。
ああもしかして本当に、亡くなってしまったんだと、また少しだけ思った。

生活はどんどん回っていく。
スマホには、休んでいた期間の考えたくない仕事の連絡も入っている。
週明けが憂鬱で、でもその憂鬱のおかげで少しずつ理解できてくるんだと思いたい。

なんだか今日がいちばん眠れない。
それはたぶん、少しだけ死を理解できてしまったから。
じいちゃん、まだまだ時間がかかりそうだよ。
でも、大丈夫だからね。
痛みも苦しみもなくなったんだから、安心してどうかゆっくり休んでね。
今まで本当にありがとう。

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