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自分の人生やこの世界をどう受け入れるか【タイタニック】♯082

現在リマスター化され、全国の映画館で上映中です。
『アバター』のジェームズ・キャメロンの名作。


タイタニック
 リマスター版  1997年/アメリカ



【ストーリー】

1996年、無人潜水艇を導入したトレジャーハンターのロックはタイタニック号の研究と偽って海に沈んだはずのブルーダイヤモンドを探している。
探索が進むにつれ、ひとりの年老いた女性ミセスカルバートの協力を得る。

101歳の彼女は唯一、ブルーダイヤモンドの事を知っている女性。
84年前、17歳でタイタニックに乗船したミセスカルバートは船で起きた出来事を語り出す。



【解説というか、レビューというか】 もち、ネタバレします

主人公はローズ。ローズ視点の回想ドラマ。

17歳のローズは、当時無名のピカソやモネの才能を見抜くなど芸術を見極める目を持っている上流階級のお嬢様。
しかし家は破産寸前、家名の為に大富豪の男と政略結婚をさせられている。
ローズにとってタイタニック号は自由を許されない
奴隷船。富の為に男性の奴隷にならないといけない、
そういう気持ちだった。ローズはこれからの人生に悲観して船から飛び降りようとする。

そこで出会ったのが、我らのジャック・ドーソン。
彼は絵描きで旅人。ポーカーで勝ってタイタニック号3等船室の切符を手に入れたラッキーボーイだ。

このタイタニック号、当時としては高度な安全対策が施されていた。
船首部に浸水しても沈没しない構造になっていて、船内の浸水を防ぐ隔壁は自動閉鎖される機能も備わっていたらしい。
そのような“沈まない船”として航行したタイタニック号はイギリス、サウサンプトンからアイルランドに寄り、2200人以上を載せてニューヨークへ向かった。

NY。

そう、ローズもジャックもアメリカ人。
一時的にイギリスに滞在していた彼らは、母国アメリカに帰る予定だったのです。


絵描きのジャックの絵をみるローズ


さて、飛び降りようとしたローズを助けたジャック。
ジャックにとっては上流階級のお嬢様が自ら死のうとするなんて信じられない。
彼の立場からすると、生まれながらにセレブだなんて
幸運な事。それは多くの人々が共感するポイントだと思う。
ジャックは、家族の為に犠牲になるローズを放って置けなかった。

身分の違いがあった2人だけど、デッサンされたノートを見たりテンポいいアイルランド音楽を楽しんだり、徐々に心を開いていくローズ。

婚約者のキャルがブルーダイヤモンドを贈って、ローズの心を動かそうとする方法とは大きく違っていた。
ダイヤの値打ちは分かっても、美を見極める目はない
富に囚わているキャル。ピカソより普通にラッセンが好きなタイプ。悪いやつだけどそうゆうところ、正直憎めない。


ジャックは貧しくても階級社会があっても、
人の心は自由であるという事を知っている。

映画タイタニックを象徴する船首で手を広げるシーンは、富や家名などから解放される感覚をローズに味わせ、そして生きる希望を持たせたという、
ジャックがローズを落とすのに完璧なシチュエーション、、いや、2人の心が通い合った映画史上もっともロマンチックなシーン。

絵描きのジャックは、ローズにとっての希望とは何なのかがよく分かっていた。彼は人の内面が見える画家だから。

ホラー映画じゃありません
ジャックのピンチをローズが助けます
キャメロン監督のシャレがきいてるシーン


一見わがままに見えるローズ。沈没寸前に救命ボートに乗れる機会が二度もあったが船へ戻っている。
なかなか無茶なことするお嬢さんだけど、
彼女にとっては大きな意味があった。

一度目は母と。これは家名に別れを告げた瞬間だ。
二度目はジャックやキャルに説得されて一旦はボートに乗る。
しかし守られる女ではなく自分の事は
自分で決める人間になりたいローズは、ボートから船へ飛び移る。
男性優位社会への抵抗をこんな局面で発揮するローズ嬢。

ジャックも『ああ、バカだなあ』ってそりゃ言う。
だってボートには乗客の半分近くが乗れないのだから。
乗れたらそれはとてもラッキーなのです。
もちろん、ジャックと離れるのが辛いから
船へ戻った事に間違いないのですが、理由はそれだけじゃなかったのです。


豪華客船、浮かぶ階級社会とも言われるタイタニック号は氷山にぶつかってから僅か2時間40分で沈みます。
この頃の客船は浸水しても、10数時間は浮かんでいられると言われていました。それがたったの2時間40分。
2200人以上の乗客に対して1400人分のボートしか準備されていません。

この船には、失業していたイギリス人やアイルランド人、ノルウェー人イタリア人など、アメリカでひと稼ぎしようしていた人々が3等船に多く乗っていました。さらに2等船にはビジネスマンたち(日本人が1人)そしてローズ達のような1等船室の人たち。
スミス船長、設計士のアンドリュース、1等船の客を退屈させない為に用意された音楽隊、クルーたち。
乗っていた数だけの人生がありました。


ジャックは言います。

『人生は贈り物』

贈られた命を無駄にしないで、毎日を大切にする事。
ジャックは死を目の前にして最後まで自分はラッキーだと言いました。
タイタニック号の切符を手に入れ、身分の違うお嬢様の心を手に入れた。
こういう、運命をポジティブに受け入れるジャックの死生観は何度みても涙が溢れます。


二人はある約束をする



生還したローズはアメリカNYに到着。自由の女神を目にした時の表情がとても印象に残ります。
なぜ自分は生き残ったのか。

生き残ったという強い実感。
そして自分の人生がゆっくりと動き出した感覚。

ジャックに出会う前は、身投げしようとしていたローズ。
彼に出会った時から、本当の人生が始まったと言えそうです。

そして、同時に感じているのは喪失感。
この喪失感は決して物語をネガティブにしていません。

自由の女神は独立と自由の象徴です。
浮かぶ階級社会だったタイタニック号は沈んだ。
ローズは母と別れ、ジャックとも別れた。
何もかもを失って得たもの、
それは新しい人生だった思うのです。
それも贈られた人生。

タイタニック号に乗ったこと、
それはとても好運だった。
ローズはそういう運命を持った人なんです。


古い価値観など、社会構造のしがらみを拭い去った
ジャック・ドーソンというヒロイズム。
今ある命が当たり前にじゃない環境で育っていた彼は
配られたカード、つまりは時の運を有効に使って
自由にそして豊かに生きた。

101歳のローズが眠りについた時、
ジャックはタイタニック号の階段で手を差し伸べ、
ローズの手を引いています。
ジャックが事故後の彼女の人生を導いていたからです。
84年も導いていたんですね。

ジャックはローズの一部となって、
自由な人生を繋げていった。
人は誰かに支えられて生きているということです。
それがローズ場合は家族ではなく、ジャックだったのです。

さらにジャックやローズだけでなく、犠牲になった
人達の人生を肯定したところも、
この映画が多くの人にハッピーエンドと捉えられる理由ではないでしょうか。



そして忘れてはいけないのは、
セリーヌ・ディオンの姉さん。
音楽でこの映画を完璧にまとめました。
名作には名曲が必ずあるものです。

『マイハート ウィル ゴー オン』
私の心に、あなたはいる
そう唄っています。


長く書きましたが
一言でいうと、

奇跡みたいな映画

それがタイタニックだと思います。


人生は贈りものさ


私の心にもジャックはいますよ。
もちろん隣りにはローズも。


【シネマメモ】

3時間を超える映画。長いですよね。
劇場で見る場合、休憩ポイントはどこなのか。
あたくしシネマジェンヌは探しました。

5分あればいいかなと思いましたが、この映画は
5分に一回、重要な要素が組み込まれています。
なので、お手洗い等の休憩は3分です。

休憩ポイントは、氷山にぶつかった直後です。
本編の上映が始まってから1時間40分ごろ。
ここから3分以内に席へ戻りましょう。


【ジャックは助かったんじゃないの?問題】

瓦礫のドアにローズとジャック、2人とも乗れたんじゃないのか?
ジャックは助かったんじゃないのか?
よく論争されています。

この問題のシーンについて、
インタビューされたジャック役のディカプリオは
こう言っています。

『助かったかもね、、笑』
なんて笑

確か、ケイト・ウィンスレットや他の役者さんも
同じ事を言っていた思います。
(YouTubeで見ました)

しかし1998年、リアルタイムで観ていたわたしは
覚えているのです。
あのドアに2人は乗れないのです。
ジャックも、ローズに続いて乗ろうとしましたが、
ドアは傾き2人乗ると2人とも助からない可能性が
ありました。

なのでジャックはあきらめた。
そういう表情がジャックに見受けられるシーンも
あったかと思います。


TV放映版では少し分かりにくかったのかも。

論争が生まれる映画は、名作だとよく言われています。
たぶんディカプリオや映画関係者は
わざと、論争を残しているのだと思います。

映画人として、ジャックという役や映画ファンを
大事にしているって事ですね。

25年経った今でも、
このような素晴らしい映画を劇場で観れるなんて
とても幸せです。

年いちで上映されてもいいのになあ。



✳︎合わせてみたい映画

『親指タイタニック』

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