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星空 ~私と心の物語~

心よ

私の心よ

あなたには、どこまでも自由でいてほしい

私の「今」に囚(とら)われることもなく

私の「今まで」を惜(お)しむこともなく

私の「これから」を憂(うれ)うこともなく

ずっと私の側で、あなたのままでいて欲しい


目を閉じれば
あなたは、いつも
私をどこへでも連れて行ってくれる


ただ、私の心を満たす為に

私が私でありつづける為に

私をどこかへ連れて行ってくれる


あなたが、あなたのままでいてくれるから
私は、私のままでいつづけられる


心よ

私の心よ

あなたは、今日どこに、私を連れて行ってくれるのだろう


そう胸の中で呟(つぶや)いて
私は、そっと目を閉じる


私の目の前には、満天の星空が浮かび上がる
見たこともないような、
でも、記憶の中にあるような
そんな満天の星空が浮かび上がる



星空は

時には雄大(ゆうだい)に、

時には切なく

人々を物語の世界へといざなってきた


夏には夏の、
冬には冬の星座があり
いにしえより、
神話が語り継がれてきた

繰り返し、繰り返し
時の流れに乗せられて

繰り返し、繰り返し
物語は継(つ)がれてきた


名もなき人が綴(つづ)った、
ささやかだったかもしれない物語が
人の持つ時間よりも、遥かに長く継がれて
私のもとに届き、そして、また流れていく

ここから、また、
どれ程の時の流れた、その先に
私の声が及ばぬような、その先に

その物語は届くのだろうか


もしも雨が降り続き
星空が雲に覆われたとしても

あの物語は届くのだろうか


時の流れの長さの中で
どれほど、人の灯(ともしび)が小さくても
どれほど、人の願いが儚(はかな)くとも

物語が人の想いも連れて行くというのなら

私はここに居てもいいのかもしれない


たとえ、形の残る何かで無くても
物語を綴(つづ)る、私の声が、
物語を語る、私の姿が
誰かの目に、耳に届いたのなら


ひょっとしたら
声でなくても
姿でなくても
私という存在を知ってくれた人が居たとしたら

仮にも
そこに、ふわりと生まれた程度の感情でもあったのなら

ただ、それだけで、
長く語り継がれる物語と何ら変わらぬ
尊き物語があるのかもしれない

他の誰にも知られない
物語があるのかもしれない


もしも
そんな物語があるのなら
私はここに居てもいいのかもしれない



星空は
そんな気持ちを抱(いだ)かせてくれる



ベテルギウス、アルタイル、
シリウス、スピカ、リゲル、ベガ・・・

夜空には
そんな、誰もが知るような
名だたる明るい星がある

でも、広い空には
星座にもなれない、
小さな名もなき星もある

数多(あまた)にある星の中で
もしも、私が星であったとしたら

私は、どんな星になるのだろう


けれど
例え私が、どんな星であったとしても
何に躊躇(ためら)う事もなく
この星空にいてもいい


星空は
そんな気持ちを抱(いだ)かせてくれる


自分がどんな存在なのか・・・
そんな事すら、思わなくても構わない

人ひとりの生きる意味など
取るに足らない些細なものだと

この星空は抱かせてくれる

吸い込まれそうな、この星空に
私の気持ちが溶けてゆく

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