見出し画像

ビールだけなら大丈夫かも...

断酒20年のヨウスケです。

約1ヶ月の入院で退院はできたものの、これから断酒して頑張っていこうという気持ちにもなれず、無気力なまま、とりあえずは毎週の断酒例会に通う毎日でした。

 「精神病院に入院してしまった」

という事実は私の中ではかなり重いものであり、これから先、どうやって人生を築いていけばいいのか全く見えませんでした。

 断酒会での話を聞いていても

「断酒後にこんなに明るい未来が待っていた」

といった自分にも希望が持てるような話は当時は聞くことができず、また飲んで病院に戻って来たとか、止めているけどまだ飲みたいという人、

それに

「みなさん仕事はどうしているのだろう?」

 と感じる人が多く、

 「いつまで仕事もせずに断酒会に通うだけの生活を続けなくてはならないのだろうか?」

 という疑問と焦りが出てきました。

 院長からは断酒がある程度軌道に乗るまでは仕事はしない方が良いと言われてましたが、自分の中ではこのマイナスを早く埋め合わせなくてはならないという焦りもあり、今まで登録していた日雇い派遣とは別の派遣会社に登録に行きました。

 退院後1ヶ月くらいの3月の話だったと思います。引っ越しが忙しい時期であり、求人の多い引っ越しのアルバイトに行ってみることにしました。

 仕事自体は何とかなりましたが、社員さんの中には苦手なタイプもおり、精神的にストレスはありました。

 1日がとても長く感じました。

 「やっと解放された」

 日給はその日に貰えます。丸一日汗を流し、良く頑張ったと自分で自分を褒めてやりたい気分です。

少し迷いましたが、

「歳下の人間に偉そうにこき使われて我慢して1日頑張ったんだから、少しくらいは飲んでも許されるだろう」

 と、コンビニでビールを買って人気の少ない公園のベンチに座り、缶のフタを開けます。

 「うめぇ〜。やはりいい汗をかいた後のビールは最高」

 空きっ腹に久しぶりのビールはとても美味く、酔いも早く回ります。少し気分が良くなってくると昼間の嫌な気持ちも収まってきます。

 次の日もまた同じ引っ越しの仕事があるので350mlの缶4本で終わりにして自転車で家に帰ります。(今ならこれもアウトですね)

 家ではさすがに飲めないので、飲み足りませんがそのまま寝ます。

 久しぶりのビールは美味く、深酒にもならず、このくらいで収まるのならば無理に断酒する必要もないのでは?

そもそもビールだけで終えておけばいいのに、その後バーボンだの日本酒だの飲むからアルコール依存になるんだ。

 よし。これからはビールオンリー。
しかも飲むのはちゃんと仕事をした日だけに限る。

 これでいけば悪い酒にもならずアルコール依存症に戻らずに済むはず。

 と、まさに絵に描いた餅のような妄想を胸にして、次の日も引っ越しのアルバイトに向かいます。

初日の担当の人はちょっと嫌な人でしたが、その日の担当は優しく良い人でした。そんなに忙しい現場でもなく
仕事も少し慣れ、いい感じで終わることができました。

 とりあえず3日間は行くことになってましたので、その日も仕事後また同じ公園でビールを。

 ショート缶4本では足りないのでその日はロング缶4本。ますます飲み足りませんが家では飲めないし、次の日もあるので我慢我慢。

 3日目の引越しも無事に終わり、久しぶりに真面目に仕事をしたという充実感と安堵感。

「我ながら良く頑張った。」

 自分で自分を褒めてやりたい気分です。次の日は予定は入ってません。

 河原でビール飲みながら後輩に電話して飲みに誘います。

 戒め通り?ビールだけで済ませましたが、その夜はかなり飲みました。

その後、一週間ほどその引っ越しのアルバイトに行きました。二日酔いで行ったりもしてましたが、特に大きな失敗も遅刻もなく終わりました。

ちょっと悪い自信ができてきました。

ビールだけにしておけば大丈夫かも


そんな妄想もアルコール依存症という現実の前にはあっという間に砕け散ってしまうのでした。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?