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アルコール専門病棟での生活 (その2)

断酒20年のヨウスケです。

入院当日の夜は不安でした。

2年前の内科入院の時、アルコールの離脱症状で幻覚を見て外に飛び出した経験を思い出して、あれ以上の離脱症状が出たらどうなるか…。

 夜、看護師さんに以前こういうことがあったので不安だと伝えると、主治医に相談してくれて、離脱症状に効くという注射を打ってくれました。

 ほとんど眠れなかったと思いますが、幸い幻覚は出ませんでした。

 部屋は大部屋で先述の角刈りの強面のおじさん。隣のベッドは同い年の公務員。そして、当時の私より少し年上の人、あとは年配の方が数名居ました。

 少し年上の当時40歳前くらいの人はアルコールの後遺症なのかどうか分かりませんが、呂律が回ってなく、動きもスローで少し障害があるような印象を受けました。

 隣のベッドの同い年の彼は、勤務時間の昼休みにもコンビニでカップ酒を買って飲んでいたようで、職場の勧めもありこちらに入院してきたようです。

 見た目どこがアル中なん?というような眼鏡をかけた爽やかで、少しあどけなさが残る青年でしたが、入院時、γ-GTPが2000超えていて患者内で
「ガンマさん」と呼ばれて、愛されキャラで人気者でした。

 強面のおじさんは、背中に見事な龍をお飼いになっており、やはり元本職ですが、今は何か会社を経営しているとか。
 
 意外にお茶目なところがあり、時々拗ねて看護師さんを困らせることもありましたが、私達には優しくしてくれて可愛がってもらいました。

 病院の検査は今までの内科病棟とは違いました。肝機能検査はもちろんですが、脳の検査をされたのには少し動揺しました。

 脳のレントゲンの写真を見る主治医の表情が曇ります。大脳の萎縮がかなり進んでおり痴呆の症状が出てもおかしくはないということ。

 主治医の院長が言うには

「こんな飲み方をしていたら36~7歳で片足が効かなくなって40歳までには車椅子やぞ」

 アルコールの飲みすぎが肝臓だけでなく、脳や神経に影響を与えるということを初めて知りました。

 これはショックでした。

 幸いまだ肝硬変にはなっていないので、肝機能の数値はアルコールを止めれば元に戻るだろうが、一度縮んだ脳は元に戻らないという。

 頭も以前に比べるとアホになっている自覚はあるが、頭を使っていないだけだと思っていたが、この影響もあるのだろうか?

 
 入院している人達を見ると松葉杖とか車椅子の人が結構多い。アルコールの飲みすぎで神経や大腿骨をやられるらしい。

 院長はこのままいくと36~7歳で松葉杖と言っていた。

 あと5年ほどか…。もう止めないと取り返しがつかなくなるかもな…。

 入院している人の話を聞くと、退院してもまた飲んでここに戻って来ている人も多い。私も過去二度内科入院しても、退院して一ヶ月くらいでもう飲んでいたから気持ちは分かるが…。

 俺もそうなってしまうんだろうか…?

 
 断酒会でいろいろ話を聞いた。そこの断酒会の会長は10年以上断酒しているようだが、飲酒欲求はまだまだあると言う。

 同じような飲み方をしている人、俺はそこまではしてないわと、さすがに引くような飲み方をしていた人、いろんな方がいましたが、アルコールのコントロールが効かなくて、一杯飲んだら元の状態に戻るのは同じなんだなと思いました。

 しかし、いわゆる精神病院に入院させられたという事実は、今後のことを考える上でもかなり重たいものとなりました。

 両親に対しても

「こんなところに入れやがって。俺の人生どうしてくれる?」

 というやり場の無い怒りも感じていました。

 精神病院で迎えたクリスマス、32歳の誕生日は本当に自分が情けなくなりました。

 母親が誕生日プレゼントに持ってきてくれたちょっと高そうなグレーのセーター。
 
 こんなところで誕生日を迎えた私への優しさを感じました。

 母も辛いだろうな…。

 一ヶ月の入院で肝機能はほぼ正常値になり、退院後は月一回の通院と毎週の断酒会への出席を勧められての退院となりました。

 これからどうしていったらいいのか…。
 
 先の見えない退院後の生活が始まります。

 

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