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第2章 「古典的」組織論

オーガニゼーションズ 第2章 P16~43を読みました。ここでは工場のラインで働くパートさんのような、単純労働をする人についての組織論が紹介されています。これまでのまとめは以下を参照。

人間の仕様書

古典的な組織論の目的は、非効率な生物としての人間を最善可能な方法で使うことです。適切な指示を出すことで機械のように動いてもらって、生産性を最大化します。

人間には以下の4つのパラメータがあるそうです。
・能力
・速度
・持久力(疲労)
・コスト(給料)

能力というのは速度と持久力の合わさったもののような気もするけれど、とにかくこれらのパラメータが人によってバラつきある中でどうやって管理していくか。過去の研究の成果がP26~28に書かれているので抜粋します。

(a)人体の使用に関する原則
1. 両手の動作は同時に始め、また同時に終わるべきである。
2. 休憩時間以外は、同時に両手を遊ばせてはいけない。
3. 両腕の動作は、反対の方向に、対象かつ同時に行うべきである。
6. ジグザグ動作や突然で鋭角的な方向転換を含む動作よりも、円滑で連続的な手の動作の方が好ましい。
7. 弾道状の運動は、制限された運動や制御された運動より、速く容易で正確である。
8. 円滑で自動的な動作をするには、リズムは不可欠であり、作業はできるだけ楽で自然なリズムをもつようにすべきである。
(b)作業場の整備に関する原則
9. 工具と材料はすべて定位置あるいは固定位置に用意すべきである。
10. 工具、材料、コントローラーは、オペレーターの近く、すぐ目の前に置くべきである。
13. 材料や工具は、動作が最良の順序で出来るように配置すべきである。
14. 適切な視覚条件を備えるべきである。良い照明は満足な視覚の第一要件である。
15. 立ったり座ったりができるだけ楽なように、作業台、椅子の高さを好みに応じて調節すべきである。
16. 作業者が良い姿勢を保てる型と高さの椅子を各作業者に供与すべきである。
(c)工具および設備の設計に関する原則
17. 治具、取付具、足操作の装置を用いた方が一層便利になされ得る仕事からは、手を解法すべきである。
18. 二つ以上の工具は、できるだけ組み合わせるべきである。
20. タイプライターを打つときのように、それぞれの指が特定の動きをする場合、それぞれの指の固有能力に応じた負荷にすべきである。
21. クランクや大型ネジ回しに使われるようなハンドルは、できるだけ広く手のひらに接するように、設計されるべきである。
22. レバー、十字のクロスバー、輪状のハンドホイールは、姿勢を変えずに、最大の機械効率を得られる位置に置くべきである。

昔の人もいっぱい考えたんだろうなぁ、ということが伺えます。こうして作られた手順書が「マニュアル」の原型と言われているそうです。

もちろん、昔の人だって人間はただの受動的機械ではなく、モチベーションとかで作業効率が大きく左右されることは知っていた。だから人間のパラメータの中に「コスト」も用意されている。でもそこに関する考察はあまり深くはなかったようです。

仕事の割り当て問題

さて、人間の仕様はだいたい分かりました。次は仕事をいくつかに分割して人間に割り当てていきましょう。ここで問題が発生します。

古典的組織論では、仕事をいくつかに分割して割り当てたら、そこでかかった時間を合計することで仕事が完了すると考えている。でも実際には、仕事を受け渡すところで情報伝達をしたり段取りが必要になる。仕事を分割すればするほど、調整にかかる時間が増えていく。

その結果、小規模な組織であれば、自分の専門性を活かした「過程別部門」である方がいい。逆に組織が大規模になればなるほど、部門間の調整が大きな問題となり、組織内で仕事が完結する「目的別部門」を作る方が有利になる。

たとえばお弁当工場があったとして、「過程別部門」というのは「ごはん部門」「肉部門」「ラッピング部門」のようなもの。「目的別部門」というのは「幕の内弁当部門」「かつ丼部門」「焼肉弁当部門」のようなもの。どっちの方が効率よく弁当を作れるかというのは、組織全体の大きさに依存するのだ。

人数が少ないのに目的別部門にすると、各部門でそれぞれごはんを炊いたり無駄が多くなる。これは効率が悪い。ひたすらごはんを盛る人、ラッピングする人、など一人ひとりが専門に特化した方がスピード効率が高くなる。

逆に大規模な工場になると、部門間の調整が増えて大変になる。トラブルが起こったときも工場全体が止まってしまってロスが大きい。むしろ自分のところで一気通貫して幕の内弁当を作る、とした方が他部門の調整で煩わされることがなくて効率が良い。指揮官が一つの弁当を最初から最後まで管理できて、責任をもった商品提供が実現できる。

古典的組織論が見落としているところ

既にいっぱい見落としているところはあるのですが、まとめると以下の5つになるそうです(P43)。

(1) 動機づけの仮定が不完全
(2) 組織と組織の利害対立を考慮していない
(3) 複雑な情報処理なんてできない人間の限界を考慮していない
(4) どうやって仕事を分割するか、どこからどこまでを仕事とするか、といった分類について考慮していない
(5) プログラム作成の現象を軽視している

(5)のプログラム作成というのは、それまで存在しなかった新しい活動を開発すること、だそうです。新規事業の創出ですね。まぁ受動的機械人間を集めた工場で新規事業ができるわけないからね。

ということで、次章からは組織間の情報伝達・調整と個人の動機づけの関係とかを見ていくようです。お楽しみに!

それにしてもこの筆者、一つひとつ言ってることは分かるけど、章立てというか文章構成が本当にひどい。話があっちこっち飛び過ぎて流れが悪すぎる。

課題

・何かが上達していくことを「プログラム」で説明してみよう。
・身近な例で、目的別部門化と過程別部門化を比較してみよう。

私の回答

「プログラム」というのは本文中にあんまり説明がなかった気がするけど、たぶん「活動」くらいの意味しかない気がするので。

自転車に乗るのが上達するプログラム
・2輪で走っているときにバランスを取って倒れないようにする
・ペダルをこぐ
・ペダルをこぐことでバランスが崩れるのをなんとかする
とかそんな感じ?

目的別と過程別の例は、お弁当工場について本文中に書いたので省略!

追記:みんなの意見

僕は人の上達を3段階で見てます。
・プロトタイプ作成:イメージしていること、言われたことを、とりあえず思ったとおり、言われたとおりにやる。意味はわからないし、見落としもたくさんある。この段階ではマニュアルはないか、他人から渡されたもの。
・インターフェース定義:「この仕事には何がどの程度必要か」を自分の理屈で理解する。「現時点のマニュアル」と「自分の能力」の差分を補う形でマニュアルの補足が進められる。
・リファクタリング:「必要なもの」を保ったまま、「更にうまくやるには」を考え出す。マニュアルにあるタスクが自動化されたり、手順の入れ替えによる最適化が行われる。

弊社はちっちゃい電子部品を扱ってて、こんな感じです。
◯目的別部門化(お弁当ごとに部門化タイプ)
入荷→加工→検査→出荷までぜんぶ1人でやるスタイルがこれにあたる(しかしなんと、これができる人がほとんどいない!)
◯過程別部門化(おかずごとに部門化タイプ)
なので、ほぼこっちになっています。「加工」の一部だけ淡々とやる人、「検査」だけ淡々とやる人などがいる。「加工」に時間がかかってて「検査」の人は待ちの状態、「出荷」も超待ち、みたいなこともあります。あと部門間(というか人間間)の調整に手間がかかります。半日ぐらい調整してる日もある。しかし調整は軽視されがち、手を動かす時間だけを作業時間としてカウントしがち。そこで、「じゃあ目的別部門化にしたら?」というのは「複雑な情報処理なんてできない人間の限界を考慮していない」ことになります。むずかしいことは、できない!

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