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資本論 8. 労働時間をめぐる闘争

今回は第八章「労働日」を中心に見ていきます。第六章・第七章は中身がないのでスルーしますが、安心してください。中身はないです。

一日何時間働きたいですか?

前回、一日の労働時間について以下のように説明しました。

労働者は6時間のメンテナンスをすれば、その後12時間働かせることができます。

この12時間が適切かどうか、雇用主と労働者の対立の歴史を見ていきます。

産業革命以前の場合

ローマの時代から奴隷労働は存在していましたが、当時の奴隷はそこまで酷い待遇ではなかったといいます。これは、なんのために労働しているかの違いが大きいです。

かつては、直接的な需要にこたえるための生産がメインでした。貴族が不自由なく暮らせるだけの食料を生産すること。まぁちょっと贅沢に多めの食料を必要としたとしても、その量には限界があります。どこかで満足します。奴隷たちは、持続的に貴族を満足させることが求められていたので、奴隷たちもしっかり体調を維持されてきました。

資本主義における労働

前回のおさらいですが、資本は無限に増えることを目標としています。途中で満足することはありません。だから労働者には可能な限り長く働いて、できるだけ多くの生産をしてほしくなります。

資本主義の最初のころは、まだまだ労働者たちも自分が必要な量を生産するという昔ながらの生活様式の方に馴染んでいたため、労働時間はそれほど長くありませんでした。一四世紀から一八世紀半ばまで、イギリスの労働取締法では〇〇時間以上しっかり働くように、といった規定がされていたようです。

しかし産業革命によって商品経済が浸透し、資本の力が強くなると、この関係は一変します。奴隷が死んだところで、新しい奴隷が補充できるので何も問題はありません。可能な限り長時間働かせて、なるべく多くの生産をすること、そして剰余価値を生みだして資本を増殖させることに邁進しはじめます。

その結果、労働者たちから「一日の労働時間は最大一八時間に制限する法律を作ってください」という請願が出されるに至ったようです。どういうことだってばよ。

これが「自由、平等、所有、そしてベンサム」に満ち溢れた、最大多数の最大幸福が実現した資本主義社会の実態です。

資本増殖への飽くなき欲求

資本は、無限に増えたい欲求を持つので、手段を選びません。パンを製造するにも安いコストの不純物を混ぜて問題になったり、工場を24時間稼働させるために昼夜交代制を始めたりします。

労働者たちの健康が破壊され、社会そのものの存立が危うくなったとしても、それが資本の働きにブレーキをかけることはありません。資本は法律などによって強制されない限り、労働者の健康や寿命に配慮することはないのです。

もちろん、なかには労働条件の悪化に心痛める良心的な資本家もいるかもしれません。長期的な視野から労働者の健康を心配する資本家もいるかもしれません。そうした資本家は、他の強欲な資本家との自由競争に敗れ、資本家として生きていくことができなくなります。資本主義社会の中で淘汰されていくのです。

結局、労働者を守るのは労働者しかいないのです。

労働闘争の末

1802年から1850年まで、半世紀にわたって雇用主と労働者の闘争は続き、ようやく少年と婦人の労働時間が12時間、などの制限がかけられるようになりました。

労働時間の制限は、あらゆる社会改良のための先決条件です。労働者たちは労働時間を制限することで健康を維持し、明日もまた労働力を売ることができるようになります。また、労働者の自由時間が増えることで、人間らしく生きるための精神的余裕を取り戻すこともできます。それによって社会運動や政治運動などの社会活動も行うことができます。

労働者たちは、団結することの重要性を学びました。商品交換という「自由、平等、所有、そしてベンサム」に基づく活動は、労働者が一人で活動している限り、膨大な資本には太刀打ちできません。労働者同士が団結することで、資本に強制されず、自由に働き、生活できるようになります。こうした団結こそが、資本主義を超える新しい社会に繋がるだろうと筆者は訴えています。

感想

現代では法律が整備されているので、基本的には1日8時間、週40時間くらいの労働が標準的になっていると思います。別に労働組合で団結するのもめんどくさいし、なんとなく惰性で働いている人も多いと思います。こうした環境が整備されたのも、かつての労働者たちがたくさん労働闘争をしてくれたおかげなんですね。

マルクスは、労働者の団結から資本主義に変わる新しい社会(社会主義?)を目指したようですが、実際どうなったか現代に目をやると、団結するどころか個人個人がバラバラに自由に思い思いに好き勝手に動けるようになって、まさに自由経済って感じになってますが、これって理想的な結末なんでしょうかね。この後の章の展開も楽しみです。

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