見出し画像

業界インタビュー6 自衛隊の仕事

身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく企画の第6弾。今回は自衛隊です、自衛隊。よく聞くけどよく知らない、謎の集団。いろんな業界のことが分かれば、きっと何か新しい発見があるはず!なお写真は陸上自衛隊HPより引用。

そもそも自衛隊ってどんな組織なの?

自衛隊は日本一大きな会社と言われていたこともあるそうで、その構成人数は24万人にものぼるそうです。とてつもない規模ですね。ちなみに現在のトヨタ自動車の連結従業員数を調べたら36万人でした。こっちもヤバいな。

人が多くて、職種がたくさんあって、様々な人材が揃っているのが特徴で、その多様性の幅広さは他の追随を許しません。例えば料理班、音楽隊、語学学校、体育学校などもあるそうです。オリンピックを目指している選手に自衛隊に所属してもらって、スポーツに専念してもらい、引退したら体育教師として働いてもらう、みたいな契約をしたりするそうです。

公式サイトを見ても、いろんな業務をやっていることが分かります。

画像2

空挺レンジャーという、ヘリコプターからパラシュートで飛び降りて敵陣の後ろに回り込んで、奇襲で敵を殺すゲリラ部隊もいるそうです。すごいな。実戦配備されたことはあるのだろうか。

空挺レンジャーは訓練でバンジージャンプをしているらしい。高さ12mという、人間が最も恐怖を感じる、死を意識する高さで飛ぶらしいです。地面すれすれまで近づいて、バンジーゴムで戻されるわけですが、空挺レンジャーの本番では、そのままいい感じにスピードを殺して着地しなきゃいけないらしいので、ヤバいです。バンジー好きにオススメ。

自衛官の階級

自衛官にはいろんな階級があってよく分からなくなるので、一覧表を確認しておきます。士→曹→尉→佐→将と偉くなるようです。

自衛隊の階級

陸軍の士だったら陸士、そこから昇格すると陸曹、陸尉、陸佐、と偉くなっていくんだと思います。たとえば射撃訓練をするとき、陸士や陸曹は小銃という射程が300mくらいあるものを撃つそうですが、陸尉などの幹部に昇進すると、もっと小型の拳銃の訓練になるそうです。誰が何を守るために戦うのか、興味深いですね。

士や曹のうちは、住居も敷地内の寮みたいなところで集団生活しなければいけませんが、尉以上の幹部になったら敷地外の好きなところに住めるようになるそうです。さらに佐以上の管理職になると駐屯地すぐそばの官舎に住む権利が与えられるそうです。まぁ、何かあったらすぐ駆け付けられるように、結局近くにいないといけないんですね。

士や曹でも結婚すると敷地外に出られるそうです。それなりに人権に配慮してくれてる感じがしていいですね。

非常に厳しいタテ社会の印象がありますが、普段は階級関係なくみんな仲良しらしい。日頃は幹部でも下っ端でもみんな気さくに話せる仲間で、いざミッションが始まったときはビシッと上下の指揮系統に従う、というメリハリのついた組織らしい。

どんな人が働いているの?

非常に多様性豊かで、中卒から大学院卒までいろんな学歴の人がいる。ただ、自衛隊に入りたくて入った人は少なくて、就職がうまくいかなかったとか、職業が合わなかったとか、狙っていた公務員のテストに受からなかったとか、親と仲良くなくて早く自立したかったとか、なんとなく後ろ向きな理由が多い。自衛隊に入れば住居と福祉と仕事と給料がかなりしっかり保証されているのが、一番の魅力のようだ。

入隊のための試験もあるけれど、そこそこ健康であれば、あとはちょっとテスト対策すれば受かる程度らしい。

防衛大学校から入る人もいる。人文科はかなり難しく、偏差値が高くて出世するらしい。一方理工科は、賢い人がこんなことやってても無駄だって気付いて途中で辞めちゃうらしい。

社会人と大学生の中間みたいな感じで、大学に行っている間も給料は出るけれど、働いている実感はないので、おこづかいもらいながら勉強している感じらしい。手取りで85000円くらいだとか、国からの仕送りっぽい。

自衛隊中央病院のお仕事

さて今回は、自衛隊の中でも自衛隊中央病院で働いている方にお話を伺いました。渋谷の近く、池尻大橋にある総合病院です。

自衛隊の病院って聞いたこともなかったし、一般人は入れない場所かと思いましたが、普段から診療していないと技術が落ちるので、平常時はごく普通の総合病院として外来を受け入れているそうです。もちろん自衛官も診察に来るので、健康診断でメタボを指摘されて指導を受ける人や、精神を病んで入院する自衛官もいるそうです。自衛官だって人間なんだ。

ただ、普段は病床を半分くらいしか使わないなど余裕をもたせて、緊急時の受け入れ態勢を万全にしているらしい。大地震やテロなどで一気に大勢の負傷者が発生したとき、普通の病院ではすぐパンクしてしまうので、そういうときの受け皿としての役割を担っているようです。また有事のときは負傷した自衛官を優先して診療することが決められているそうです。

コロナの影響は?

やはり人手不足になって大変らしい。ワクチンの大規模接種センターを準備するために看護師がだいぶ投入されて、空いた穴を埋めるためにシフトの調整を逐次行っているらしい。

大規模接種センターも大変らしい。一般人看護師をパートとして雇って指導しているけれど、人数が多いし統率もそれほど取れないし、マニュアルを渡しても読んでくれないし、空き時間ができると文句を言うし、そういう方々をなだめながら動いてもらうのがとても大変だとか。看護師免許を持っていても、仕事の出来はピンキリのようだ。

自衛隊の中では、中国で新型コロナが流行りだした、という情報が出たときから調査を始めていて、もう1年半くらいコロナと戦っている感じらしい。CBRNE(シーバーン)という様々なテロへの対策を日頃から行っていたおかげで、こういう病気についても早くから情報をキャッチできたそうです。おかげでダイヤモンド・プリンセスが来るころには既にだいぶ準備が進んでいたらしいから、早め早めの対策はやはり重要だな、と思わされます。

改善したい課題は?

みんな情報に疎い、PC操作に疎い。IT部署もあるけれど、サイバーセキュリティに特化していて、仕事を便利にするためのシステム開発などをしているわけではない。

アンケートとかも、いまだに紙で回答して、手入力で集計しているとか。Excelは方眼紙でしかなくて、マクロも使えないしピボットテーブルの集計もできないし、簡単な足し算引き算だって使えない人が多いとか。

これは便利なITシステムを売り込むチャンスか、と思ったのですが、自衛隊も公務員なので、便利そうなソフトを自分たちで選んで導入するのではなく仕様を提示して入札する、という形式でやらなきゃいけない。同じ会社のソフトを使い続けると癒着になってしまうので、病院の電子カルテも5年ごとに強制的に完全に入れ替えさせられるとか。平等・公正を維持するために効率を失った悲しい日本社会。

だいたい、こういう入札をすると、聞いたこともない変な会社が、めっちゃ安い値段で怪しいソフトをねじ込んできて、すごく使いにくくて全然ダメ、みたいになりがち。大手企業の安心安全なシステム使った方が絶対にいいけど、そうすると国民から非難されるからつらい。広告関連でよく電通が叩かれるのは、まさにこれ。

結局、自分たちで開発するのが一番だよね、ってなって、なんでも自前で用意したくなるのは日本の大企業あるある。結局どの会社でも似たような開発をして、横の協力がなく、非効率な消耗戦を繰り広げて、欧米にやられるパターン。うまいこと連携できないもんかな。

おまけ:もう一つのお仕事、訓練について

さて、自衛隊といえば訓練です。これは病院でも同じだそうで、看護師だって射撃訓練とかやるそうです。この訓練の話もめっちゃ面白かったのですが、長くなってきたし、あんまり業界の仕事とは関係なくただの興味本位で聞いただけになっちゃったので、おまけパートに置いておきます。

自衛官は毎年一回、必ず体力テストがあるそうです。女性の場合、3000mを18分以内に走る、腕立て伏せを2分で20回する、などが最低でも満たすべき目標で、これを下回ると給料に影響が出るそうです。

他にも、基本教練という、気をつけ、敬礼、号令に合わせて進む、みたいな自衛隊っぽい動きの練習とか、射撃の訓練とかもする。

病院っぽい訓練としては、たとえば心肺蘇生。ただ心臓マッサージとかするだけでなく、そのあとどういう薬を用意するか、医師にどのように申し送りするか、人工呼吸器を挿管したり、やるべきことはたくさんあって、定期的に訓練しないとやっぱり忘れてしまう危険があるらしい。

他にも、大量傷者訓練という、地震やテロで一気に大量の怪我人が来たときに受け入れられるか、パニックにならず人々を制御して運営するための訓練もあるらしい。

看護官の仕事として、病院勤務だけでなく部隊勤務になることもあって、駐屯地で保健室の先生のように衛生指導することもあるらしい。そういうときは、隊員たちと一緒に訓練も受けなければならず、女性の看護官でもほふく前進とか筋トレとかやるらしい。やらないと群れの一員として認めてもらえない。

化学兵器の訓練もあって、催涙ガスの中にガスマスクをかぶって入っていくらしい。そして、中でガスマスクを外して、めっちゃしみる、痛い、というのを実感して、ガスマスクのありがたさを噛みしめる実体験型の訓練になっているとか。なんか毛穴の奥までビッシリやばい感じになるらしい。

最初に書いた空挺レンジャーのバンジージャンプ訓練もやったらしいし、看護官だからって何か免除されるわけでなく、立派な自衛隊員なんですね。すごいです。いつも日本を守ってくれてありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?