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執筆について『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』より

前回は取材について紹介したが、今回は第4章~第7章の執筆に関するパートを紹介する。今回は実践的なパートなので、実際に手を動かしてみないとなかなか腑に落ちない面もある気がする。

何を書くか

まず執筆といっても、小説と新聞だったら書き方が全然違うのは当然のことだろう。本書は特に取材した内容から論理的な文章を作るライターの話がメインとなっている。

ここでライターに求められる役割として以下の3つが挙げられている(P160~164)。

①録音機:雑情報を除去し、読みやすく、理解しやすい文章に整えながら、書きとめていく。
②拡声器:文脈をつくり、表現を磨くことによって音圧を増幅させ、その人の思いやことばをより遠くへと届けていく。
③翻訳機:むずかしい話を、より多くの人に伝わるようやさしいことばに置き換えながら伝えていくこと。

では、どのようにすれば書きたいことが多くの人に伝わるか。読者が求めているのは説得力ではなく、納得感だ。そのために必要なのは「課題の共有」だ、という(P190)。

コンテンツはおおきく、
 ①課題設定
 ②課題共有
 ③課題解決
の流れで進んでいく。

では実際にどういう構成で書けばいいのか。そのための「例題」が用意されている(P219~262)。これはとても面白いワークなので、是非やってみてほしい。本書を買ったとき、誰もが気になったと思う、中央にはさまれた黄色い紙の出番である。

大切なのは、「なにを捨て、なにを残し、どうつなげるか」の選択が研ぎ澄まされていること。そのためにも「なにを書くか」ではなく、「なにを書かないか」を考えることが重要だという。

どうやって書くか

構成が決まったら、実際にどうやって書くか、具体的なテクニックの話になる。コンテンツの魅力は、扱うテーマ、登場人物や取材対象者、情報の希少性などによっておおきく変化するが、ここではもっと小手先のテクニックとして以下の3つに着目する。

①リズム
②レトリック
③ストーリー

まず①リズムについて、文章のリズムは「音楽的リズム」「論理的リズム」「視覚的リズム」の3つによって成り立っている。

「音楽的リズム」は句読点や語尾
「論理的リズム」は「しかし」「なぜなら」などの接続詞
「視覚的リズム」は句読点や改行、そして漢字とひらがなによる画数密度

②のレトリックで重要なのは、比喩表現力。

・具体的、映像的であること
・普遍的、一般的であること
・遠距離であること

なるべく直接関係なさそうなもので比喩するほどすごい。分かりやすく、でも直接結びつかないものを持ってくるセンスを磨こう。

「犬のような目つき」が普通の比喩だとすると、
「老犬のような目つき」の方が具体的で映像的になる。
「グリフォンのような目つき」だと一般的ではなく分かりにくい。
「夕焼けのような目つき」だと距離が遠くて良いかもしれない。

③ストーリーについて、小説では時間軸に沿って「これから起こること」への期待が重要となるが、論文的ストーリーで重要なのは「これから分かること」への期待である。「この議論はこれからどこに向かっていくのか?」という関心をかき立て、最後には「なるほど、そういうことだったのか!」という得心へと着地させる。

そのためには、徹底した「時間軸の解体」が重要だという。時間の流れではなく、論の流れを大切にして、論を進めて、読者の思考を展開させ続けること。

小説でいうところの「ストーリーの起伏」に相当するのは、結末までの距離だ。導入から結末までが離れていれば行くほど、その展開の妙におもしろさが宿るという。そのためには前振りとなるパートの取材・調査が重要になるし、何を書いて何を書かないかという決断が重要になる。

翻訳から翻案へ

以上のことを考えながら文章を書くと、取材した内容を書き起こすだけでは当然足りなくなる。だから、ただ取材内容を翻訳するだけでなく、取材時に語られなかった論理を見抜いて、自分なりに解釈を加えて翻案していかなければならない。

ここで自分勝手なことを書いて、インタビュー相手から「そんなこと言ってないぞ」とクレームを言われるようではいけない。「まさにこう言いたかったんだよ」と感謝されるような、相手の気持ちを汲みとった論理を構築することが、ライターの目指すべき姿ではないかと筆者は言う(P209)。

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