ゾーンに入る「フロー状態」から見た、成功しない企業内起業のモチベーション

今日はとても面白い話を聞いたので、流れて消えてしまう前にメモを残しておく。メモを残すと満足して結局脳内から消えていく問題については、ひとまず脇に置いておこう。

フロー状態とは

スポーツでもゲームでも仕事でも、やたら覚醒して集中できるような瞬間が訪れることがある。一般に「ゾーンに入る」とか呼ばれる現象。専門的な言葉だと「フロー状態」というらしい。

このフロー状態になれば、人はものすごいパフォーマンスを発揮することができる、生産性が向上できる。経営者サイドで、従業員がフロー状態に入れるような環境を意図的に整えられれば、さぞかし素晴らしいことだろう。

このフロー状態を提唱した心理学者はミハイ・チクセントミハイという名前らしい(変な名前だ)。そして、このミハイよりもっと昔に、「遊びとは何だろう、遊びの面白さとは何だろう」という研究をしていた、ヨハン・ホイジンガとロジェ・カイヨワという人がいるらしい。

とりあえず適当にググって出てきた日本人の論文を読んでみた。

https://www.toyo.ac.jp/uploaded/attachment/3149.pdf

ちょっと難解だったので、ゲームデザイナーの実践的なnoteも読んでみた。

まぁ皆さんリンク先を読むほど興味はないと思うので簡単に引用すると、「チャレンジしている状態」と「高度なスキルを使う状態」の重なったときにフローが発生するらしい。

・明確な目的(予想と法則が認識できる)
・直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
・能力の水準と難易度とのバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
・状況や活動を自分で制御している感覚。
・活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。

こういった状態で、フロー状態に入ると、人はものすごいパフォーマンスを発揮するらしい。言われてみると、その感覚は分かる。私はだいたいゲームをやっていると、没頭して時間を忘れてすごく集中するので、まさにこれなんだろう。

あとは、自分なりにちょうどいい目標を立てるのが得意なのかもしれない。ちょっと簡単なステージでも、タイムアタックだったり最高品質だったり、何らかの縛りを自分で設けることで、勝手にバランスのよい難易度にして勝手にゾーンに入っていく。だからゲームは楽しい。

大企業における新規事業のフロー状態

さて、ここで話を強引に新規事業創出に持っていく。だいたいベンチャーを起業する人はモチベーションが高いけれど、企業内起業、社内ベンチャー、新規事業開発部みたいなのはうまくいかないケースが多くて、それはモチベーションの差だろうとよく言われる。

そりゃ雇われ社員だからモチベーションないよね、といえばそれまでだけど、逆にどうやってモチベーションを高めるかのヒントが、ゲームクリエイターの言葉に隠れていると思った。

明確な目的が大事、というのはよく言われている。ビジョンを示せってやつだ。でも大きな既存事業を抱えた大企業が、新規事業のビジョンを示すのが難しいことは分かっている。そこはもう期待しない。

直接的で即座な反応、状況や活動を自分で制御している感覚。これはベンチャーの方が小回りが利く、って言われるやつだ。大企業だといろんな会議での承認を経る必要があって、タイムリーに動けないし、自分で制御している感覚もなくなる。これではモチベーションは上がらない。

活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。これも、大企業においては既存事業にこそ本質的な価値があり、新規事業には少なくとも現段階では価値が認められていない。そこから価値を作る必要がある。そこに本質的な価値を見出せるかどうか、非常に難しい。だから苦になる。

そうすると、残る制御可能な因子は一つだけ。能力の水準と難易度とのバランスだ。つまり適切なチャレンジを促すこと。会社でも、人事部などがよく言っている。チャレンジ目標を設定しましょう。高い目標に向かって頑張りましょう。でも、たいていはバランスを欠いた無理ゲーのような高難易度を押し付けてくる。仕方ないから雇われ側は絶対にクリアできる低水準を提示する。だからどっちにしろゾーンに入れない。バランスの良い難易度設定はとても難しい。

さて、八方塞がりですが、自分の経験に照らして考えると、一番重要なのは「直接的で即座な反応、状況や活動を自分で制御している感覚」じゃないかなぁ、と思います。少なくともこれがないと、ゲームじゃない。遊びじゃない。私はゲーム実況を見たいんじゃない、ゲームがしたいんだ。

ということで、成功している企業内の新規事業を見ると、確かにかなりの権限を与えられているケースが多い。かなり自由に活動させてもらっている。ただ、自由でも、目標売上とか無理すぎる目標設定されているとやっぱり潰れちゃうし、目的が間違っていれば、いくらゾーンに入って商品を作り上げたって売れずに失敗して終わることもある。どれも欠けてはいけないけれど、少なくとも最初の一歩は権限委譲じゃないでしょうか、と思いました。


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