社会学的想像力:歴史の利用
第八章です。
前章では政治学、経済学、心理学、人類学などいろいろな分野の社会科学が協力する必要があるね、といった話をしましたが、その中でも「歴史学」はすごく大事だよね、というのがこの章の趣旨です。
この社会のあり方を考察しようと思ったとき、いま目の前にある政治とか宗教とか社会の仕組みを念入りに調べたところで、歴史的な背景から現在にいたるまでの経緯などを知らないと正しく評価はできません。
たとえば「育児をしない男性」の社会的立場みたいなのを考えたとき、現在と昔とでは全く違う評価がくだされるのは想像できるでしょう。男性と育児の理想的なかかわり方を考えようと思った時も、その時代によって出てくる答えはまるっきり違うものになります。
このあたりから、筆者が社会科学に求める「公分母」としての役割がこの辺なんだなぁということが感じられます。みんな社会についての考えが狭すぎる、もっと歴史的経緯をみて長期スパンでの変化について問うていこう、というのが社会科学者のとるべき態度だと主張しています。
人間の多様性と歴史
第八章の後半では人間の多様性について触れています。
社会と歴史の関係は前半で述べましたが、個人の性格だって同様に歴史的背景・社会構造との関連のなかで形作られるものです。だから心理学の分野だって歴史は大事なんです。
最近の若者は結婚願望がない、草食系男子だ、みたいな傾向も、当然それを生み出す社会構造があるわけです。草食系男子個人の過去を振り返って、個人のどこに問題があったのかを探してもダメなんです。
だから、すべての社会科学はとにかく歴史をしっかり踏まえて議論しようね、というお話でした。
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