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『オーガニゼーションズ 現代組織論の原典』序文

今回から新しく読む本は、ジェームズ・G・マーチとハーバート・A・サイモンの「オーガニゼーションズ(第二版)」です。すごく難しい本らしいです。訳者の高橋伸夫先生が自身の大学ゼミで本書の精読をしていたようなので、そちらから要約や課題を借りつつ読んでいこうと思います。

https://www.bizsci.net/seminar/seminar2013/index.html

このテキストはサラサラ読む類のものではなく、何度読んでも意味が分からないくらい難解です。なので、精読しますが、精読しろと言われて、はいそうですかとできるものでもありません。そこで、約10ページずつ、19のセッションに分けました。たった10ページ。精読しましょう。そして、内容の理解を深めるために、《課題》について、皆でディスカッションしましょう。

初回は導入ということで、この本が何を目指して書かれたのかをザッと把握するため、「第2版への序文」P265~269を読みます。

本書の関心(抜粋)

組織とは、選考・情報・利益・知識がことなる個人・集団、つまり葛藤・対立のある個人・集団の間で調整された行為のシステムである。

組織論とは、葛藤・対立から、協働・資源の動員・努力の調整への精巧な転換により、組織とそのメンバーの共生を促進することである。この共生の促進は、情報・アイデンティティ・物語・奨励金等の制御を通じて成し遂げられる。

しかし、組織を有効に制御するには限界がある。組織の行為者たちは、自分たちの活動の周囲に、文化・合意・構造・確信を作り上げ、この限界に立ち向かう。こうした組織的行動の寄せ集めが、本書の焦点なのである。

本書の中心をなす統一の構成概念は、階層ではなく意思決定であり、意思決定過程に対して指示し、知らせ、支える組織内の情報の流れである。

重要な決定の種類はいくつかある。
・個人が組織に参加するか退出するかの決定(参加の決定)
・参加に際し、どの程度努力・熱意を投入するかの決定(生産の決定)
・組織の事業を指揮して、どのように組織化し、どんな目的を宣言し、その目的に到達するために課業をいかに調整し、いつ指示や構造を変えるかを決めるという決定

中心的な構成概念が意志決定であるにもかかわらず、本書で展開される理論の多くは、選択の理論というよりも注意の理論である。注意の配分方法を理解することは、決定の理解に不可欠である。

本書に書いた組織的注意の理論は二つの着想からなる。
・一つ目の着想は満足化で、組織は目標に的を絞り、中間段階なしに成功と失敗にはっきりと二分して区別する
・二つ目の着想は、組織は、現時点で目標達成の活動よりも、目標未達の活動に注意を向ける

組織と意思決定を、合理性の限界の反映だと考え、注意拘束的行為・探索の整然としたパターンだと考えることが、本書の中心部分になっている。

課題

合理性に限界がなかったら、意思決定の仕方が変っていたはずだと思われる例を挙げてみよう。

感想

組織というのは、いろんな目的をもった人たちの寄せ集め集団に物語を与えて共生させるもの、らしい。以前読んだ別の本(経営者の役割)でも、「二人以上の人々が、一つの明確な目的のために協働する、その体系を組織と呼ぶ」と書いてあったので、似たような定義だ。

そして、組織の運営において最も重要な意思決定について、それは「注意の配分で決まる」というのが本書の主張らしい。これは面白い着眼点。人間には注意力に限界があって、理想的な組織は作れない。だから、どこかしらに注意のウェイトを配分しなきゃいけなくて、その結果として「成功と失敗の二元論」「目標未達成部分にフォーカスする」の2つが中心となっている組織が多いのだろう。

高橋先生の課題は「人間の注意力が無限にあって理想的な意思決定ができたとするとどうなる?」という質問だ。成功と失敗以外のところにも関心が向けられるようになれば、例えば社内でおしゃべりばかりしている役立たずと思われている人が、実は社内の人間関係を円滑に進める調整役として機能していたことが評価されるようになるとか、そういう見えない影の立役者もきちんと報われるようになるのだろうか。

会社の中で言うと、安全・品質保証部門や情報セキュリティ部門のように、社内から煙たがられて、問題が何も起きないことが普通で、何か間違いがあると減点されるような、そういう部門でも働き甲斐が出てくるかもしれない。いま社会的に不足しているケア職が成立するようになれば、とても嬉しいことだ。

皆さんも、ぜひ課題に思い当たる事例を考えてみてください。

追記:みんなの意見

経営者的には正社員全員をこれまでの就業規則を守らせる形で業務委託にしたほうが節約できそう。
→ ひどいw 社員のモチベ下がるから創造的な仕事はできなくなりそう。でも理想的には、個人が会社に所属するのではなく、プロジェクトごとに必要な能力を持つ人が集まって仕事するジョブ型雇用に行きつくのか。

ハンコ文化は廃止だ!!!!!
→ 廃止だ!!!!!

理想的な意思決定の理想をどう置くかかも。従業員の賃金と売り上げのバランスの最適化が理想なら、雇用も流動的なはずだし。
→ 組織の理想状態を規定する「ビジョン」が必要ですね。

人間の注意が無限にあって、理想的な判断ができるなら、「多数決」という方式が取られないのではないかと思います。すべての対立意見について「両者の折衷案」を導きだせるので、「全会一致」以外での意思決定が自然となくなるのかな。
→ これを短時間のうちにできるとしたらすごい!さすが理想の世界!

つよつよAIって考えたらおk? 全てをデータ化・数値化出来るならAIで考えても良さそうですね。まぁでも何を学習させるのかを人間が決めるなら意味無いか。
→ 限界のない合理性は、確かにもはや人間の意志が介在しないAIだな。

実際に組織で意思決定をする時に「考えてる時間が足りないから、とりあえずコレ!」って決めてその結果に基づいて改善するムーブみたいなのに普段限界をよく感じてるので、1要素として時間の制約があるのかなーって思いました。あと、一般的に言えば、ヒトモノカネとかも有限ですね。
→ そう、限界が多すぎて、限界のない状態を想像できない。

非正規だけど様々な観点で見ると組織の利益に功労してるし本人も正社員で働きたい人をちゃんと正社員雇用出来るようになるのかな。
→ みんな公正な処遇を受けれるようになるといいね。公正世界仮説だ。

そもそも人間は非合理なので、個人も組織も非合理的な目標に向かって動いているから「合理性ってなぁに?」となりますね。個人の非合理を尊重すると、組織の目的への合理性が損なわれる。でも、ある程度はお互いに許容し合う。それが「理想的」ってことっぽいなと思いました、欺瞞っぽいけど。
→ まさに、本書の本編で注目したいポイントですね。たぶん組織のビジョンが一番大事なんだと思う。

誰もいない赤信号を待つのと渡るのどちらが合理的かと考えても答えなんてないよなあ。
→ 組織のビジョンとして何を優先するかの問題かな。

この本の著者の、書いた目的ってなんですか?
→ 本書の目的は組織論の提案だそうです。組織に関する命題が列挙されたとき、それにきちんと答えられる体系を作りたいという学者魂ですね。その体系を作るために、組織に関係ありそうな既存の研究を全部まとめたとか。

まとめると、みんないろんな制限の中で何を優先するか、ってのを常に考えているから、人によって判断が変わってきて意見が対立するんだね。合理性に限界がない状態なんて夢物語すぎて、想像できませんでした。

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