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業界インタビュー1 看護師さんの仕事

今回から新しい試みとして、身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していこうと思います。いろんな業界のことが分かれば、きっと何か新しい発見があるはず!

ということで初回は看護師さんに1時間ほどお話を伺いました。

一番大変なこと

看護師さんで一番大変なことは、職場の人間関係だそうです。よいドクターや先輩看護師に出会えるかどうかが働きやすさを大きく左右するとか。

医療は絶対にミスの許されない現場なので、みんな常に神経をとがらせて仕事をしています。基本的にはピラミッド型のヒエラルキーがかなりしっかりと存在するようで、ドクターからリーダー看護師へ、そしてメンバー看護師へと上意下達で指示が出されます。

ここで、リーダー看護師が優秀な現場では、各看護師のレベルに合わせた仕事を適切に振り分けて、サボっている看護師に声をかけたり、どんどんタスクを回していくことができる。一方、リーダー看護師によっては、ひいきの看護師に甘い仕事を回して、嫌いな看護師に大変な仕事を押し付けたりと、パワハラ的なことも横行しやすい。とにかく上には逆らえない組織なので、働きやすさは上のマネジメント能力に大きく左右されるらしい(まぁそれは病院に限った話でもないですけど)。

この傾向は大きな病院でも、個人開業医でも変わらないらしい。とにかく職場の人間関係が最も重要。

その原因

看護師は、医師の指示がなければ医療行為ができない、と保健師助産師看護師法で規定されているらしい。医師の診療の補助という位置づけなので、どうしても、業務が医師からの指示を起点に発生してしまう。

この指示というのも、口頭で伝えるのではなく、伝達ミスによる医療事故を防ぐためしっかり指示書として文書に残していく必要がある。そのため、指示書をもらうだけでも大変なことがあるらしい。だからこそ、医師やリーダー看護師のマネジメント力が問われるのだろう。

他にも、この患者にはこの治療が必要、という指示に対して、患者はこれをして欲しいと別の要求をしてきて齟齬が出たりするのも面倒らしい。看護師には医師の指示以外のことを判断する権限がありませんからね。しかし、メンバー看護師は、そういった患者さんからの要望を拾ってリーダーに返していくのも仕事なので、中間管理職的な板挟みにあるようです。

一番欲しいもの

潤沢なマスクが欲しいそうです。飛沫感染予防のN95マスクや、個人防護具(PPE)などの物資が足りないそうです。コロナのせいで、そういう感染症防護が必要な機会が飛躍的に増えて、物品は不足するし、予算も全然足りないのだとか。

コロナは無症状から死亡までひたすら症状のレンジが広く、結核のように確実にヤバい病気でもないからガチガチに対策すると物品不足するし、だからといって丸腰だと共倒れになるし、非常に厄介らしい。結局、マスクは1日1枚を使いまわす、みたいな運用で、不安がいっぱい残る状態のよう。

そんな受付事務方みたいな防護で医療の最前線が回っていて大丈夫なの?というのは内外ともに感じるところだが、それが現実らしい。

一番時間のかかる仕事

事務処理とか面倒なんだろうな、と思って質問したら全然違った。患者さんへのきちんとした説明が、一番時間かかるらしい。たとえば大腸カメラの説明で、絶食した後に洗浄液を飲んでもらって大腸をすっからかんのきれいな状態にする、という話を、理解力のある人なら10分で分かってくれるが、分からない人は30分以上かかったりするらしい。他にも、糖尿病患者さんにインシュリンの自己注射の指導だと1枠1時間もかかるとか。

分かりたくない、嫌だ、と暴れるおじいちゃんおばあちゃんに説明するのも大変。こっちが怪我することもあるし、下手に押さえつけると怪我させてしまうこともある。そんなに嫌だと意思表示してるなら治療しなくていいじゃないか、とも思いますが、医療従事者はどんな相手でも治療しないといけない呪いにかかっているそうです。大変だ。

認知症の患者なんかは、何言ったって覚えてくれない。若い人でもせん妄という意識が不安定な状態だと、不快なものを本能的にはねのけてしまうので、心を鬼にして抑え込まないと治療ができない。

結局、治療は患者あってのものであり、患者と向かい合うのが一番時間がかかって苦労するポイントのようです。

病院の電子化について

電子カルテなどはいろんな病院で導入されていますが、たいていはどんくさい作りになっているそうです。結局現場は紙でプリントアウトして巡回してチェックリストを埋めて、最後にPCにデータを打ち込む、という管理になっているらしく、管理のための管理みたいな仕事が発生していて二度手間ですね。この紙は入力完了して捨てていいのか、まだ未入力なのか、とか分からなくなって未入力を捨てちゃったり、問題になるそうです。

新しいシステムを入れると、特に年配看護師の教育が大変で、60歳近くなると老眼で入力も大変だし理解も追いつかないし、これまた時間を取られるようです。

システムも病院ごとにまちまちで統一されておらず、お金がなくてシステム構築を値切った結果、より面倒くさいシステムを使うことになって、という悪循環もよくある話のようで。

患者さんによって必要な情報が違ってくるから、どの患者さんからはどんなことを聞けばいいか、という取捨選択の判断が、経験の差として現れるらしい。どうしてこれ聞いておかなかったの、どうしてこんなにいっぱい聞いたの、みたいな齟齬で怒られることも多いとか。その辺も明文化できていないまま電子化したって、使いにくい必須入力てんこもりなシステムができたらもうおしまいですからね。

ちょっと調べたところ、厚生労働省で電子カルテの標準化を検討した資料もありましたが、独自仕様、独自データ格納形式が多すぎて統一化は無理!って匙を投げてましたね。標準仕様だけ作ってWeb APIで接続しようって書いてありましたが、より一層ややこしくなる未来にしか見えませんでした。

まぁコストかけて便利にしよう、って発想が日本にはありませんからね。貧しくも不便を耐え忍ぶのが美徳なので、一生便利にはならないでしょう。

海外の病院は?

日本は病院が多い国だと聞きますが、海外はどうなのか。これは噂レベルですが、フランスはドクターが1人だけの小さな病院がちょいちょいあって、あとは大病院だけ。中規模な病院は少ないらしい。

イギリスは、公立の病院だと病態に関係なく受付順に見るので、重症患者は待っている間に死ぬらしい。早く診てほしいなら高いお金を払って私立病院に行かなきゃいけない(ほんまかいなw)。

アメリカは、よく噂に聞くけど、とにかく高い。診察30分で3万円から、薬代は別で3万円、みたいな世界。その代わり、病院に行ったら診察までワンストップでスムーズに進んで、こんなシステムの整った病院で働きたいなぁと思うのだとか。やはり、金だよ、金。

まとめ

こんな感じで、看護師さんの視点から見た医療現場の課題を洗い出してみました。思った以上に、対人関係が全てでした。まぁ、それは今回インタビューした方の視点であって、看護師全体の意見ではありませんが、それでも非常に参考になるお話でした。

最後に、どんな職場が楽か、どんな道具が便利か、といった話も聞いたので適当におまけパートに置いておきます。

楽な職場

一番楽、というか好きだったのはデイサービスだとか。これも人によって感じ方は違うだろうけど、これまで担当した患者さんは、基本的には安定している人か、覚悟を決めた終末期の人で、そんなにピリピリしていなかった。

ゆったり楽しくおじいちゃんたちと過ごしながら健康管理して、病気を早期発見して、家族に伝えて病院に繋いでいく。この人の認知機能が落ちてきたな、とか、こうしたら改善してきたな、とかを直に見られるのが魅力的らしい。訪問入浴とかも、力仕事はヘルパーさんがやってくれて、看護師は状態を見るだけなのでそこまで大変ではないとか。

他にも、イベントナースといって、オリンピックとかイベントのとき救護室で待機したり、修学旅行に付き添ったりするタイプの仕事もあるらしい。医師の指示がないから投薬とか医療行為はできないけれど、様子を見ながら適切に対処する。確かに、そういう知識のある人がいてくれると安心感がありますよね。

便利な道具

看護師をやっていて、これは便利になったな、と思う道具は「注射器」と「オムツ」らしい。

昔の注射器はガラス製で、患者の血を触ってしまう可能性がいろいろあった。注射針の中に血液が残っていたり、吸った血を採血管に入れたりするときに接触のリスクがあった。それが今は真空管採血という、針から採血管に直接血が採れるタイプになって、リスクが劇的に軽減されたらしい。革新的な発明のようだ。

オムツは、布オムツが主流だった頃は夜中に何度もオムツ交換しなきゃいけなかった。患者さんは夜しっかり寝かせないと回復しないのに、オムツで起こすのはしのびなかったし、大変だった。今は使い捨ての紙オムツなので吸収量が劇的に増えて、夜もぐっすり眠れるし、むしろ十分寝すぎてオムツかぶれしちゃうから起こそう、ってなるくらいに変わった。これもまた技術革新のようだ。

他にも、レントゲンとかCTとかMRIとかエコーとか心電図とか、いろんなものが電子化されて、記録をデジタルで残すようになったから、紙をいっぱい残す必要がなくなったし、一覧性にも優れていていいらしい。ただ、写真とかアナログの方が解像度良かったんじゃないか、と思うケースもあって一長一短かもしれない。

そんな感じでした。ありがとうございました。

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