前回、実践コミュニティとはどのようなものかを紹介しました。今回は第4章~第5章で、実際にどうやったら実践コミュニティを作り、発展させられるかについて考えていきます。なんて実用的な本なんでしょう。
①潜在
実践コミュニティの最初、立ち上げ段階についてです。本書では、会社のような目標がしっかりした組織のなかで、技術者たちの集まりのような横のつながりからなる実践コミュニティを作る、ということを念頭においているので、組織(会社)のなかでいかに人を集めるか、といった話になっています。
まずはとにかくみんなの関心のあるテーマを設定すること。このテーマについて話したいと思う人が多いほど、自発的に人が集まってきます。そのテーマは永続的なものではなく、メンバーの関心に合わせてころころ変わっても大丈夫。だからとにかく話題性の高い話をするのがいいのでしょう。
どんなテーマでもいいですが、ちゃんとみんなの話をまとめて誘導できるコーディネーターとかファシリテーターみたいな人が重要になります。みんなが好き勝手に話しているだけでは有意義な情報が引き出せるとは限らないんですね。誰がどんな情報を持っているか引き出したり、さらに、コミュニティの外から有識者を引っ張ってきたり、そういった作業をする人が、初期のコミュニティでは特に重要なようです。
②結託
さて、コミュニティが立ち上がったら、ここを育てて、強い個人の結びつき、信頼関係を作ることが次のステップになります。実践コミュニティは個人と個人の信頼関係がとても重要なようです。
信頼関係を築くというのは、つまり「心理的安全性」を確保することにつながるんだと思います。そのうえで、メンバー同士の対話で新しい気付きなり課題解決などが得られると、ああ、このコミュニティにいて良かった、と思えるようになります。こうしてメンバー同士が強くつながっていくステップが大事です。
もちろん、いろんなことを学ぶことができる、というのはコミュニティの重要な価値ですが、同時に「教える側」にとっても有意義であるひつようがあります。ただ一方的に教える、教わるの関係ではいけません。相互に教えあうことができるのが理想的ですね。
①潜在のときには、話題はなんでもいいと言いましたが、②結託のフェーズでは、そろそろコミュニティにとって中核となる話題・価値を見定める必要が出てきます。メンバーみんなの知識・関心からして、この辺の話題が一番盛り上がるし、解決して力になるよな、という範疇を見極めましょう。
③成熟
最初は仲のいい友達が集まって好きな話をする、楽しい実践コミュニティだったものが、役に立つという評判とともに加入者が増え、だんだん公式コミュニティみたいな様相を呈するようになります。人が増えるともめごとも増えるし、ルールが厳しくなったりして、昔のような自由な議論ができなくなってしまい、魅力がなくなって人が離れてしまったりします。
コミュニティは生きものと一緒なので、必ずこのような変化のフェーズが訪れます。昔のコミュニティは良かったのになぁと嘆いても仕方ありません、成長したコミュニティには成長した良さがありますので、適切に対処していきましょう。
④維持・向上
成熟したコミュニティをいかに維持・向上させていくか。あまり私もこのようなフェーズにいたことがないので実感はあまりないですが、とにかく保守的にならず新しいものを取り込むことが大事なようです。
⑤変容
そして最後は、コミュニティの死です。さまざまな変化の末、コミュニティはその役目を終えます。その終わり方はいろいろありますが、ここでは4種類が例示されています。
読んでみると、どれもありそうな末路だなぁと感じます。まぁ、それも悪いことではないと思います。役割を終えたコミュニティに固執するのではなく、その役割を変容させながら、新しい実践コミュニティを立ち上げて、そちらに重心を移動させるのも大事なことでしょう。