SDGsに取り組むことで新産業創造の機会が見えてくる ~Industry-Up Week Autumn 2021
今日はSDGsと新産業創造の関係についてのトークセッションの紹介です。SDGsってCSRとしてやってる慈善事業であって儲からないでしょ、という観点にズバリ切り込んでいく面白い内容でした。
SDGsとは何か
地球の46億年の歴史を振り返ると非常にゆっくりと変化してきた環境が、18世紀の産業革命以降大きく変化してきています。特にここ100年の変化は劇的で、人口は15億人から78億人、寿命は30歳から72歳と急速に増大しました。人類はこうした発展とともに環境を破壊してきたけれど、このまま地球環境が破壊されると人間の幸せも損なわれるのではないでしょうか。
1992年にリオで開かれた地球サミットでこのような課題が認識され、2000年にはMDGs(ミレニアム開発目標)というものが制定されました。ここでは国際社会共通の目標として、2015年まで以下の7つの社会問題解決を目指そうと決めたものです。
・貧困の撲滅
・教育の普及
・女性の地位向上
・乳幼児死亡率の改善
・妊産婦の健康
・感染症蔓延防止
・環境の維持
そして2015年にMDGsが達成できたことを受けて、世界をより良いものにするための17の目標を掲げたものがSDGsです。下のオシャレなロゴを見たことがある人も多いのではないでしょうか。最近は中学入試でも取り上げられるくらい普及してきた概念です。
SDGsは儲からない!?
社会課題の解決については長いこと経済価値が認められず、政府が取り組むものと言われてきました。だからMDGsなんて聞いたことなかった、という人も多いのではないでしょうか。
いかに環境問題に関わる人を増やすか、巻き込んでいくか、という点をSDGsでは戦略的に考えて、無償で使えるオシャレなロゴマーク、また関係者へバッジを配布するなど裾野を広げるところにかなり注力してきたそうです。その試みは成功している部分も大きく、その結果SDGsが企業のアピールポイントになったり、金融の仕組みができてマネタイズできるようになりつつあります。
そしてZ世代と呼ばれる若者たちは、生まれながらにして社会課題の解決に価値を感じているそうです。こうした感覚が広まり、関係者が増えていけばSDGsもビジネスとしてマネタイズできるようになり、真に持続可能なシステムになると期待されます。
SDGsと言えば許される!?
一方で、とりあえずSDGs、二酸化炭素軽減とかやっておけばいいんでしょう、という人もいます。もちろん何もやらないよりはやった方がいいけれど、そこで思考停止してもいけません。
SDGsが目指すのはサステナビリティ、持続可能な社会です。地球が変化すれば私たちも臨機応変に変化し続けなければなりません。新型コロナウイルスの流行によって産業界が大きく行動変容を迫られたように、これからも様々な危機が訪れて変容を迫られるでしょう。それらを乗り越えなければ持続可能な社会とはいえません。
何か一つの問題を解決するだけでなく、いろいろなバランスの中で解決すること。あっちを立てたらこっちが立たぬ、みたいな状況の中でいかにバランスの取れた解決策を見つけていくかが重要です。だからこそ、SDGsだけやっていればいいという思考停止状態ではいけないのです。
批判と共感
多くの人が共感する取り組みであれば、それだけ価値を生み、ただのボランティアではなくビジネスとしてお金を生むようになります。では、その共感の源泉は何かというと、社会に対するインパクトだそうです。どれだけ社会課題を解決できるか、どれだけ誠実な思いが込められているか、それが共感を生むのだそうです。
しかし日本企業は批判をおそれてばかりで動きが鈍いのが現状です。怒られるくらいなら動かない方がいい、という選択をしがちです。批判の文化が根付いていて、それがいろんな活動を妨げています。
子育てでも、昔は叱って育てるのが主流でしたが、今は褒めて伸ばすことが大事だと言われています。社会活動も、褒め合って育つ部分が大きいです。褒めて、共感して、一歩前進したら評価される仕組みができれば、世の中はどんどん変わっていくと思います。
感想
本テーマは「共感」をキーワードに語られていました。しかし「共感」という曖昧な言葉が複数の意味を含んでいて、焦点が少しボケてしまっているのではないかと感じました。
1つは、上でも書いたようにインパクトのある提案をして共感を集める、関心を持ってもらうこと。もう1つは、逆に自分が相手に興味をもって、相手の価値観を理解するという意味での共感。これらは関心のベクトルが真逆です。
自分の活動をなるべく多くの人に共感してもらうためには最大多数の最大幸福、最大公約数の目標を目指す必要があります。一方、自分が相手に共感するためには、そうした「普通」とか「常識」といった最大公約数の考えを捨てて、相手が持つ個別の、唯一の価値観と向き合う必要があります。
この正反対の共感を、バランスよく取り入れて活動するのはとても大変だろうと思います。最大公約数のインパクトを目指すことは、ともすれば少数意見を切り捨てることになるからです。多数派を相手にするのがビジネスであり、少数を助けるのは依然としてボランティアや政治活動なのです。
そこをきれいな言葉でごまかすのではなく、きちんと向き合ってバランスを取っていくことこそが、持続可能な社会なのかなと思いました。
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