オーガニゼーションズのまとめ
オーガニゼーションズ 第2版への序文の後半、P269~288をまとめて本書を振り返っていきたいと思います。これまでのまとめは以下を参照。
第2版への序文、前半では本書のねらいや構成が書かれていたので一番最初に読んで紹介しました。後半では、本書の第一版が1958年に出されてから34年が経過した1992年に振り返って、ここの議論が足りなかった、もっとここに注目すべきだった、という反省点を4つ挙げて説明してくれています。
とても分かりやすいので、反省点を順に見ていきましょう。
1. 思弁とデータ
本書に一番欠けているのは、経験的証拠である。散発的なデータはあるけれどそれをきちんと体系だった分析にまで落とし込めていない。いろんなモデル仮説は立てたが、それを実証できるような証拠が揃っていない。
組織経営って複雑だよね、人間の認知には限界があるよね、っていって、それ以上の分析ができていない。もっと統計学などが進化して、複雑なデータ分析ができるようになってほしいなぁ、と筆者は言う。
2. 行為の論理
本書では、人間の行為はだいたい理論的に分析できると考えている。こういう状況ならこういう行動をする、というパターンをもとに理論モデルを提案している。でも、実際はそんな理論的じゃないよね、という。
筆者は特に、「直感」による行動に注目している。直感というのは、過去の経験を通して熟知したものを認知する技能だという。優れた経営者は、分析的な判断と、直感の両方を使って決定に至る。
直感は、本人にも説明できない速い反応で、正しい結論を導くことが多い。これは洞察力や創造性と呼ばれることもある。一方、間違った結論を導くと、盲点とか早合点とか言われたりする。
この、個人が経験の蓄積を直感に落とし込む過程は、組織がプログラムを作る過程と相似である。組織は、全ての構成員の経験・知識をプログラム化・ルール化し、中の人が入れ替わってその根拠などが忘れ去られても維持・実行しつづける。
構成員はルールに従うが、どのルールが適切なのか、必ずしもはっきりしていない。組織的行為の多くは、合理的で分析的な結果ではなく、こうした直感的なルールから生じているからだ。
3. 自律的な選考
本書では、意思決定は最も好ましいものが選ばれる、満足度が高いものが選ばれる、としてきた。しかし、人間は組織・社会に所属することで忠誠心を持つようになり、忠誠心によって組織の行為が形作られていく。
そのため、組織は最初に結成された目的が達成されても解散することなく、新たな目的を定めて存続させる傾向がある。目的を達成するために組織があるのではなく、組織のために目的が作られる、というパターンを本書ではほとんど注目してこなかった。
組織を理解する際、組織メンバーが欲しているのは、目的や結果ではなく、仕事の過程そのものである、やりがいを求めて仕事をしているのだ、ということをもっと考慮すべきだった。
4. 歴史的・社会的文脈
本書は、組織とその中の人々の行動を理解しようとする観点で書かれていた。そのため、組織を含んだ社会システムを説明する、という点が弱い。
外部環境とは初めに与えられたもので、その中でどのように組織が形成されるか、という観点で議論をしてきたが、逆に組織が、人々が、集団で活動することで、世界の環境を書き換えている面もある。産業革命などの技術の進歩を考えれば明白だが、世界と社会は共に歩んでいて後戻りできない。
社会が何を求めるかによって世界は変わる。意思決定者が神託を求めれば自然は神になるが、社会が株主への配当を求めれば自然は資源在庫になる。そうした歴史的な流れも考慮しないと、組織の未来の姿は見えてこない。
課題
ルールベースの行為(直感)の例を挙げ、分析ベースの行為(合理)とはどこが違うのかを説明してみよう。
私の感想
ちょうど「組織が先か、戦略が先か」みたいな記事を読んで、今までの知識からして「当然戦略が先でしょう」と思ってたのですが、この最後の序文を読んで、「組織が先のパターンもあるよ」「合理より直感と忠誠心だよ」「結果より過程の方が大事なのが人間だよ」とか言われて、ものすごいどんでん返しを食らった気がします。
でもね、私はそんな配慮できないから。私は合理的な方が好きなので、戦略ありきで組織を考えたいと思います。馴れ合いは苦手です。そういう人の考える理想的な社会って、得てして無機質でディストピアっぽくなるんだよねー。あはははは。
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