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ハピネスキャピタル産業 ~Industry-Up Week Autumn 2021

今日紹介するのはハピネスキャピタル産業。お金中心の経済的価値至上主義ではなく、幸せの最大化を目指す人間中心の新しい世界を作ろう、というものです。最大多数の最大幸福を唱えたJ.S.ミルの功利主義と近い考えですね。Industry-Upのイベント詳細は以下をご参照ください。

幸せってなんだろう?

幸せにもいろんな定義がありますが、ここでは「どんな試練があっても前向きに立ち向かえるか、前向きな一日を過ごせるか、自分の内から湧き上がって行動できるか」が幸せだと言っていました。なんの苦痛も苦悩もないお花畑みたいなのを幸福と思う人もいますが、ここでは能動的・自発的に行動できるかどうかを重視していました。

最近はウェルビーイングという言葉もよく聞かれます。心身ともに充足していること。これが社会や経営でも注目され始めています。

従来社会では、顧客満足度・従業員満足度が尺度として大事にされてきました。確かにかつては環境が厳しかったので、衣食住を満足させるとか、便利なモノを作ったり、通信技術を発展させたりして、少しずつ心身を充足させてきました。

しかし、人々の衛生要因があらかた満たされた今、ただ物質的に満たされただけでは幸福とはいえません。一人ひとりが前向きに、予測不能な毎日に踏み出せるかどうか。厳しい環境や境遇に置かれても前向きになれるか。たとえばパラリンピックの選手のように、それぞれの置かれた場所で力強くエネルギーを発揮できるのが、本質的な意味での幸せではないでしょうか。

幸せの可視化

今でも幸せの定義はアリストテレスの時代から変わっていません。2000年以上にわたって人間の認識が進歩していないのです。幸せの研究は属人的で、科学知識のように蓄積・発展しないのが問題です。哲学者はいつも前の時代の考えを否定して自分の考えを打ち出すばかりで、ちっとも知見が積みあがりませんでした。

これはデータが計測できていないのが原因でしょう。幸せを計測してデータが共有できれば、どうやって高められるか、分からなかったことを積みあげられるようになります。経済であればGDPのような指標があります。そういった共通の目線を作り出せれば、幸せはもっと進化するはずです。

会社でお客様の幸福の追求するという理念を掲げていても、経営指標として売り上げや利益などを見ていると理念から乖離してしまいます。これが長年の課題でした。今でも幸福の計測はできていませんが、ユーザー満足度を事業指標を入れることで変化が出てきました。商品を売っておしまいではなく、その後の対応、最終的な満足度までが追うべき指標となり、提供すべきものが大きく変わりました。

いろんな会社が、こうした幸福度に関連する事業指標を導入していけば、体系だった知見がたまっていくのではないでしょうか。

個人の幸せに返ってくる

企業として幸福度を追求するようになると、そこで働く個人の満足度向上にもつながります。地球環境を良くするSDGsとも似ています。みんなが幸福を追求し、お互いに補完し合いながら進んでいけるようにしたいです。

世の中には、自分の幸せを知らないまま一生を終える人も多いといいます。そこをしっかり自分で見つけにいくために、人との対話し、内省して、全身することが大切です。そのためにも、幸福を計測して自分を客観視することは大事だし、そうした幸福を産業化できれば、よりよい社会を作れるのではないかと思います。とても難しい課題ですが、積極的に挑戦していきたいです。

感想

能動的になることが幸せだ、という話はチクセントミハイのフロー理論でも語られていました。この点は深く同意します。いかに注意力と集中力をもって能動的になれるかが人生の質を高めると言われています。

でも、一方で、どうしてもそれだけの集中力を持てない、能動的になれないという人がいるのも事実です。ただ受動的にテレビを見て笑い、パチンコなどの娯楽を享受して過ごしている人もたくさんいます。そういう生活は幸福の質が低いとされており、もし幸福度が計測できたら、やっぱり小さい値が出るんだと思います。

では、そういう受動的な人は幸福じゃないよね、と言ってしまうのも違う気がして。数字が計測できるということは、学業成績と一緒で、どうしても高得点が取れない人も出てきます。もっと勉強して高得点目指そうよ、と勉強させ続けるのが決して正解ではないように、幸福の数値もただ大きくするだけが正解ではないんだろうな、と思いました。

かつては、お金をたくさん持っていることが幸福だと考えられてました。実際にお金はたくさんあった方が、ないよりも幸せになりやすいです。でも、本当の幸せってお金じゃないよね、と気付いて今は新しい幸福の指標を作ろうとしています。そうして新しい指標ができたとしても、いつかは再び本質を見失って、数字を増やすことにばかり気を取られてしまうのかもしれないと思いました。

だから、功利主義を唱えたJ.S.ミルは、「他人の幸福について考える前に、まずは自分自身を幸福にすることに専念しよう。自分の幸福を追求することこそが、最大多数の最大幸福につながるんだ」と言ったのかな、と腑に落ちた気がします。

「幸福」は大好きなテーマなので感想が長くなってしまいました。申し訳ございません。

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