【のーがたのーと】まちの楽器のお医者さん/「日本楽器工房」岐部祐一さん
JR直方駅から商店街へ入ってすぐ、2分ほど歩いた一角に新しい店構えの楽器工房店が見えてきます。直方で楽器修理店を開業した経緯、お店や直方商店街への思いについて迫っていきたいと思います。
新しく開店した楽器工房店
店主の岐部祐一さん。地元は直方市で、商店街近くの高校へ通い、学生時代は吹奏楽部に在籍し、音楽と深く関わっていました。
高三の冬に偶然見かけた楽器修理の専門学校の案内をきっかけに楽器修理を志すようになります。専門学校の卒業後、飯塚市のアトリエ・パンパイプの江頭さんのもとで技術の深みを学ぶ傍ら、先輩が勤めている工房で実務経験を積ませてもらうなど計二年間勉強し、東京のヤマハへ就職、コロナ禍を経て地元の直方に店を構えることになりました。
楽器修理に要する時間は5分のものから1週間かかるものがあるそう。100年前の楽器の修理も行ったことがあるとお話しされていました。
そんな岐部さんが営む楽器工房店には、地元の学生からプロまで足を運んでいます。
楽器修理の魅力
岐部さんが語る楽器修理の難しさとは個体差にあるとのこと。
「新品の楽器でも最終的に組み立てるのは人であり、どうしても個体差が生じてしまいます。またお客様ひとりひとりのご要望の表現、例えばモヤモヤした音がする、キンキン音がする、のように抽象的な表現を自分の蓄積された引き出しの中で求める答えへたどり着くことが難しいですね。」
そして、初めに成果を出さないと新規のお客様は再び足を運んでくれない、第一印象が非常に重要で、満足いく楽器をお届けするために、お客様とのコミュニケーションを大事にしているとお話されていました。
楽器修理後のお客様から頂く演奏した時の感想、喜ぶ表情を見ることが達成感を感じる瞬間だそう。楽器修理の技術は経験によって積み重ねるものであるから、毎日の業務が財産になっていると教えていただきました。
直方で仕事をしているわけ
また、取材班の「あえて直方にお店を構えたのは？」という質問に対し、お店を構えた経緯について詳しく語っていただきました。
東京でヤマハへ勤めていた頃、スタッフの入れ替わりが多く、長期的なビジョンを持って仕事をすることが難しかったといいます。コロナ禍を経て「技術は蓄積しなければ発揮されない」と考えていた最中に、就職前にお世話になった江頭さんがお店を続けることが難しくなったそうです。その連絡を受け、福岡へ帰ってくることになりましたが、幸いなことに江頭さんのリハビリが上手くいき、飯塚市のお店を継ぐ必要がなくなったことにより、地元の直方にお店を構えることになりました。
現在ヤマハ時代のお付き合いを含め、青森や静岡、愛知、山口や九州各県などからも依頼を受けるようになったといいます。商売するなら都市部へ移り、地方の活力が失われるという現状に対し、県外から人を呼び込むことができるこの店の特徴を活かして好転できるきっかけとなれば嬉しいと語っていただきました。
これからの直方、商店街に求める姿
岐部さんは普遍的価値と変動的価値が重要だと語っていただきました。商店街は「雨の日でも濡れない」、「お客様と距離が近い」という普遍的価値を有しているのに対し、「流行のものを取り入れる」といった変動的価値を頑張る必要があるそうです。各お店ならではの強みを活かして活気を取り戻せれば良いなとお話されていました。
また、直方の魅力を知ってもらうために県外から来店されるお客様には商店街でお土産を買い、手渡すこともあるそう。店内のカウンターにも他のお店のパンフレットが置かれており、他の店を勧めたりしているそうです。口コミで日本楽器工房へ来店されるお客様が多く、もっと直方商店街について知ってもらえたら、と語っていただきました。
お客様と相談して納得していただける楽器修理を目指す岐部さん。楽器のお医者さんとして地元直方で働かれる姿に職人としての熱い想い、優しさを発見することができました。
店舗情報
「日本楽器工房」
住所：〒822-0027 福岡県直方市古町7-4白土ビル１F
TEL：090-8058-2016
mail：nihongakkikoubou@gmail.com
営業時間：10:00～18:30
定休日：日曜日・祝日
アクセス：筑豊直方駅より徒歩9分
JR直方駅より徒歩2分
URL：https://nihongakki-koubou.com
SNS：https://x.com/NGkoubou?s=20
文・編集：黒岩建杜
取材 ：黒岩建杜、前田若葉、江村友里
撮影 ：前田若葉
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