3匹目のだんなさま

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3匹目のだんなさま

アキバか歌舞伎町にいるギャルゲーオタク。仕事はIT業界でSaaSの商品企画とかマーケとか事業企画とかをやってた。ギャルゲーとジャズギターとマイクロティーカッププードルと三国志覇道が好き。エロゲに生かされてる30代男性。 #君のぞ クラファン応援中

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  • 【小説】この恋の倍速再生を止めたい

    【小説】「この恋の倍速再生を止めたい」(このばい)のまとめです。

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エロゲ評「夏ノ終熄」~アフターコロナにおける「堕落論」昆虫食に対する忌避を添えて~

あらすじ(公式HPより引用) 総評  本作の発売日は2022年8月26日。世界中で猛威を振るったCOVID-19が一定の落ち着きをみせ、日本でも「2回目のまん延防止等重点措置」が終了した数か月後だ。  本作の重要な舞台設定として、「世界的な伝染病によって崩壊してしまった世界」が挙げられる。これ自体は古くから多くのフィクション作品で使い古されたモチーフであるが、現代に生きる多くの人にとって「単なるフィクションのできごと」ではなく「起こりえたかもしれない未来の一つ」としてリア

    • 【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第7話

       「砂丘、思ったより楽しかったな」  「うん、行って良かった。ショウくんへの愛も叫べたし。告白の映像、早ければ今日の夜に放送って言ってたよ」  鳥取砂丘を辞し、松江へ向かうレンタカーの車中。ショウはさきほどの出来事を反芻していた。正直言って、アヤカからの告白は驚いた。これまでの人生において、あれほど大声で人から自身の名前を呼ばれた記憶はない。ましてや愛の告白だ。『砂丘の中心で愛を叫ぶ』は、ショウに劇的な印象を与えていた。  ショウは少しだけ疲れを感じていた。早朝から飛行機

      • 【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第6話

         そうして、アヤカとは晴れて恋人同士となった。といっても、劇的に何かが変わったわけではない。それまでと同じようにメッセージを送りあったり、たまに時間を見つけては都内のレストランで食事をしたり、カフェに行ったりして時間を過ごした。夜は遅くならないうちに、アヤカを家へ送り届けるのが通例だった。あの日から、何かが進展することもなく、そんな代り映えのしない日常が続いた、年末も差し迫ったある日――。  最近2人で通うようになった、気さくな老夫婦が経営している赤坂見附のカフェ。オーナ

        • 【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第5話

           「『青の洞窟。渋谷駅のハチ公口を抜けた先、代々木公園通り沿いのけやき並木を77万球の電飾が青く照らすイルミネーションイベント。イタリア南部のカプリ島にある観光名所「青の洞窟」が名前の由来。初回の開催は2016年。』へえ……」  ショウは、アパートの部屋でスマホを片手にネットで検索をしていた。いくつか季節のイベントを紹介するウェブサイトを読みながら、概要を掴もうとしていた。  実のところ、ショウはイルミネーションというものにあまり興味がなかった。そりゃあ実際に目の前にすれ

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          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第4話

           『だんだんは、ありがとうって意味です』    『そうなんですね。方言ですか?』    『はい。島根弁?かな』    『アヤカさんって、島根出身なんですね』     『そうです。松江ってところ』  『あと、ショウくん敬語じゃなくていいですよ』  『たぶん、私より年上だし』  『じゃあ、アヤカさんも敬語じゃなくていいよ』  『俺は、東京出身。渋谷育ち』  『都会っ子だ!』  『まあ、学生の頃遊んでたってだけだけど。実家は江古田』  『わからんw』  『だよなw』  

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第4話

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第3話

           家路へ向かう電車に揺られながら、ショウは今日の出来事について考えを巡らせていた。  あの後会社に戻ったが、仕事は手につかなかった。思い出すのは、病院で出会った少女の顔。柔らかく微笑んだ彼女は、とても美しかった。これが一目惚れってやつなのか、自分はこんなに惚れっぽかったのか、と自嘲気味の笑いをこらえながらも、ショウは自らの胸の高鳴りを自覚せずにはいられなかった。  もう一度会いたい。名前も知らない彼女に。  冬空の下、駅を出たショウは浮ついた気持ちを抑えながら、帰路につ

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第3話

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第2話

           目が覚めるとまず、電気ケトルに水を入れてスイッチを点ける。ドリップコーヒーを大きめのマグカップにセットしたあと、パーラメントに火をつける。常に回りっぱなしの換気扇の下で紫煙をくゆらせながら、お湯が沸くのを待つ。  ショウは、自身が朝に弱いタイプの人間だと思っていた。起き抜けは頭がぼーっとしていて、あまりはっきりしない。低血圧なのかもしれないと思ったが、本当に低血圧の人はみな朝に弱いのだろうか?そもそも自分の血圧が正常なのかもよく知らない。温泉施設に行ったときに、たまになん

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第2話

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第1話

           「ショウ、お前ってほんと「タイパ厨」だよな」  新宿駅の雑踏の中で、二人の男性が会話している。「タイパ厨」と呼ばれた男性が、うんざりするような顔で答えた。  「厨とか言うなよ。いまは普通だって」  「いや、だって映画もアニメも倍速で見てるんだろ?俺はそれアカンと思うぜ。ああいうモンには「間」とか「余韻」とか「空気」みたいなものが設計されてるんだからさあ。そういう機微を読み取ってこそ、「芸術を鑑賞する」ってことだと思うわけよ。それを飛ばしちゃったら作品の面白さ半減よ。半

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第1話

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい(あらすじ)

           あらすじ  映画も音楽もアニメも、すべてを「倍速再生」で視聴する主人公・ショウ。彼の口癖は「それってタイパ悪くね?」。 新卒で就職したMR(医療情報担当者)の仕事にはようやく慣れ始めたものの、日々の暮らしに忙殺されていた。  そんなある日の医局からの帰り道、ショウは難病終末期の少女「アヤカ」と出会う。彼女は「早老症(ウェルナー症候群)」という、「通常の人よりも異常に早く老化してしまう」という難病に罹っていた。  他人よりもはるかに早く進む時間の中で生きるアヤカと出会い、

          【小説】この恋の倍速再生を止めたい(あらすじ)

          人生というクソゲーの攻略本 0.まえがき ~人生というクソゲーを途中でやめようとしているキミへ~

           はじめまして。キミはいま、何歳だろうか?10代の学生かもしれないし、20代の社会人かもしれない。30代で少し疲れて、道に迷っている途中かもしれない。  キミはいつも「人生はクソゲーだ」と言っていたけど、僕はちょうど今日このクソゲーを最後までやり終えたんだ。だから、「どんなフラグを立てれば楽しいイベントが発生するのか」や、「勝てないボスが出てきたときの攻略法」も知っている。最後に訪れるエンディングも体験したよ。とても素敵な終わりだった。だから、もし君がこのクソゲーを途中でや

          人生というクソゲーの攻略本 0.まえがき ~人生というクソゲーを途中でやめようとしているキミへ~

          「推し活」に大枚をはたく、令和の若者の「幸福論」

           「こういう時のためにお金を貯めてるんで、まったく惜しくはないです。むしろ大好きな作品がもう一度盛り上がって、自分がそれに参加できることがうれしい」(Aさん 34歳、男性・東京都)  Aさんが購入したのは、クラウドファンディングで募集された「ゲームの劇中に登場する権利」。価格はなんと40万円だ。決して少なくない金額を払うのは一体どのような理由なのか。  「「君が望む永遠」っていう作品は、アキバ系オタク文化の中でもエポックメイキング的な作品なんです。登場してるキャラクターも

          「推し活」に大枚をはたく、令和の若者の「幸福論」

          エロゲ評「夏ノ終熄」2~飽食の時代における昆虫食への忌避~※ネタバレあり

          ※この記事は「2」です。「1」はこちらからどうぞ。  先日、とある企業がSNSに投稿した内容が炎上していた。「コオロギのクッキー」の写真を投稿したアカウントに対して、「気持ちが悪い」「肉があるのに昆虫を食べる意味が分からない」などおおむね批判的な意見が集中したのである。  そもそも、現代の先進国において昆虫を食べる必要があるのか。国際連合食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した『食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書』によると、「昆虫食を取り入れることで将来

          エロゲ評「夏ノ終熄」2~飽食の時代における昆虫食への忌避~※ネタバレあり