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バランスを整える

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概略

2023-24シーズンのPSG編成について。メンバー全体を見渡すと、後方は質量共に揃った充実のラインナップだが、中盤から前は全般的に若くて経験値が少ない。基本的には強固な守備陣で中盤から前を支えて育てる体制で、その中で一定程度の勝利を目指すというシーズンになる。
新監督に就任したルイス・エンリケはスペイン風ポゼッションサッカーの標榜者。自身最大の実績たる2014-15シーズンの三冠達成、その後のスペイン代表での延長戦サッカーの連続を見るに、前線選手の個人能力ありきのサッカーにはなる。その点で、エンバペの得点力や新加入のデンベレのドリブル、アセンシオのミドルシュートなど確実な一発芸を持つ選手がいるのは大きなファクターだ。
一方で、エンバペを除けばそれを安定的に発揮できる選手が少ないのも事実であり、李康仁を除けばパサー系のアタッカーがいないのも小さくない穴だろう。噂に上がっているバルコラ(リヨン)や、層が充実しているLBからメンデスを一列上げるなど、最後のピースは必要だ。
後方に能力が寄った編成であるため、何もしなくてもロースコアゲームになりがちなスペイン風サッカーとの相性は良くない。ただし、2016-17シーズン以降年々カウンターに寄ったスタイルになっているため、ある程度の是正や選択肢の増加を狙いたいという選択だろうか。良くも悪くも安定しやすいスタイルではあり、ポゼッションサッカーを標榜していたブラン政権時代同様にリーグで安定して勝ち点を獲りつつCLではベスト8に入りたいという感じに落ち着きそうだ。
以降、各セクションの短評。

GK

ドンナルンマ、テナス、ル・テリエ
ドンナルンマとテナスの年齢がダブるのがネックではあるが、シュートストップ関連に関しては図抜けているドンナルンマに、足下の技術に自信のあるテナスをあてがって程良い競争を促せる編成は悪くない。GKを平行線で競らせるのは反対だが(アーセナルがよくやって失敗している)、本命と穴馬をハッキリさせた上での競争は過去事例を見るにうまくいく公算が高い。

DF

1.RB
ハキミ、ムキエレ
完璧とは言い難いが、悪くはないポジション。ただしムキエレの稼働率に不安があるため、マルキーニョスのスライド等“第三の矢”は用意して欲しい。細かいことを言えば、4バックSB向きのハキミに対して、3バックWB向きの印象があるムキエレを充てているのは効果的かどうかという点。稼働率を考えれば、今夏は無理にしても来夏はムキエレのところは入れ替えそうな気がする。
2.RCB
マルキーニョス、ダニーロ、(シュクリニアル)
安定したセクション。同タイプながらスピード系とフィジカル系で色分けされていて、試合ごとの使い分けも可能なレベル。LCBがシュクリニアルになりそうなので、相性的にマルキーニョスが基本線なのは間違いなさそうだが。とはいえお互いビッグマッチでスタメンを張れるクラスであり、どちらかを一列上げる采配も可能。アンカーとひっくるめて、ウガルテと3枚回しで十分機能するだろう。最悪の場合は、(余剰気味のLCBから)シュクリニアルもスライド可能だ。
3.LCB
シュクリニアル、キンペンベ、エルナンデス
シュクリニアルは大きい割には機動力も一定程度兼ね備えており、実力的には疑いない。横がマルキーニョスなら、補完性も文句なしだろう。控えはキンペンベの回復次第だが、エルナンデスも控えとしては悪くない。懸念はエルナンデスの稼働力とキンペンベの復活具合が計算できない点。1人しかいない陣容になる可能性も、3人のレギュラーがいる陣容になる可能性も秘めており、非常に余計なエルナンデスである。ディアロはエルナンデスが居る時点で不要だろう(※8月15日移籍決定)。
4.LB
メンデス、エルナンデス、クルザワ、ベルナト
ここまでの起用法を見るに恐らくエルナンデスをLBとして獲得しているが、問題はエルナンデスをスタメンと見ているか控えと見ているか。移籍金的に控えはあり得ないと考えているが、そうなるとメンデスの起用法もこれまた見えて来ない。両者とも控えのレベルではないのは確かであり、昨季にその突破力が崩しの必要素となっていた点、1人で左サイドを担っていたことで負傷頻度が上がってしまったことを考えるとメンデスを今季こそ一列上げるのがベターに思える。実際、前線は(残留濃厚になった)エンバペと新加入のゴンサロ・ラモス以外はレギュラーとして足りているとは言い難いレベルでもあり、需給はマッチするのではないか。
控えはクルザワかベルナトかだが、実はあまりゲームメイク型のLBが好きではなさそうなエンリケの下ではクルザワの方が評価が高そうな匂いがする。とはいえ、稼働実績で考えればベルナトの方が上だ。昨季はゲームメイク能力以外は完全上位互換のメンデスとの共存になり、さすがに苦労したが、本来はもう少しやれそうに見える。守備的なエルナンデスとなら使い分けやすそうでもあり、我慢したいところだが。

MF

1.アンカー
ウガルテ、ダニーロ
RCBの項で触れた通り。ウガルテを一本立ちさせるべく、ダニーロで支える体制なら問題はないだろう。こちらもRB同様第三の矢は確保しておいて欲しいが。経験のあるヴェッラッティかマルキーニョスかを当てがっておきたい。(大金出してサンガレは)ないです。
2.IH
ヴィティーニャ、ザイール=エメリ、ヴェッラッティ、ファビアン・ルイス、ソレール
まだわからないのが序列。スタメン級として見込めるのはヴィティーニャ、ザイール=エメリ、ヴェッラッティの3人だと思うが、ファビアン、ソレールと控えクラスも十分揃っており、年齢と稼働率を考慮してヴェッラッティが放出候補になるのは不思議ではない。今季のWZEをどの立ち位置で期待しているかはわからないが、レギュラーに抜擢するなら枠を開ける必要はあると感じる。ヴィティーニャも能力と移籍金を考えればレギュラーと見込んで一本立ちさせたいはず。
レナト・サンシェスもヴェッラッティも出してしまうとさすがに少し心許ないが、李康仁のコンバート起用で緊急時までは凌げる。とはいえこの2人が同時に出ると数ではなく質の問題は出てくるだろう。そこに目を瞑ってでも次世代を育成すべきなのかもしれないが、ここは判断が難しいところだ。

FW

1.LWG
ネイマール→エンバペ、李康仁
一見ここから変える必要のないポジションに見えるが、問題はネイマールの現状評価。ファイナル8(19-20CLポルトガルラウンド)以降、プレースタイルがトップ下に近くなっているネイマールが、LWGとして計算が立つかという問題である。LWGとして厳しくなっているならコンバート先になりそうなIHも前述の通り余剰気味で、年俸や稼働率を考えても放出に傾くのは不思議ではない。そもそもLWGでは稼働率が保証されなくて中央寄り(4-4-2のSH、4-3-3の偽CF、3-4-3のセカンドトップ)にプレースタイルと体型を切り替えたネイマールは、今のPSGが4-3-3を使うなら居場所を失うのではないだろうか。
李康仁は控えとしては十分だろう。概ねムサ・ディアビに近い印象だが、守備力、突破力では劣る代わりにキック精度は高い分ゲームメイク能力では上を行く印象。メンデスの控えとしても相棒としてもやりやすそうなタイプに見え、前項の通り攻撃的なオプションでIH起用もあるだろう。
ここまで8月の頭に下書きで書いてたら、ネイマールがエンバペになりそうである。エンバペはLWGしかないだろう。CFでも良いが、すでにゴンサロ・ラモスがいる以上は共存策としてあり得ないからだ。
2.CF
ゴンサロ・ラモス、エキティケ
新戦力のC・ラモスは、レギュラー格として見込んで良いし、見込まないといけない価格帯だろう。台頭した当初はワンタッチストライカー、小さなイカルディの印象だったが、W杯を経験して利他的なランニングも増えてきた。大物選手と共存することで、レパートリーも増えてくるだろう。
とはいえ、まだ1シーズンレギュラーを託すのにはサポートが欲しい。現状長い手足と柔らかめのタッチしか見所がなく、それもうまく活かせてると言い難いエキティケでは厳しいだろう。ベテランで空中戦に強いタイプが欲しいが、贅沢は禁物か?

RWG
デンベレ、アセンシオ
一番クオリティに懸念のあるセクションである。デンベレはリーグ戦のレギュラーとしては優秀だが、一発勝負、特に大舞台になるとレパートリーの少なさを露呈して手詰まりになりがち。逆にアセンシオはどこでも通用する一発芸を持っているが、ローテーション要員としてはなかなかストレスの溜まる存在。このままいけばレギュラーを固定せず、試合ごとに使い分けるだろう。このまま行って欲しくはないので、バルコラをくださいOLさん。
同じく話題に上がっているコロ・ムアニは、左右中央全ポジションに対応できれば、その分レパートリーも多くて良い選手だ。ただし、現陣容に多くいる地上戦型のプレーヤーで、その最大の武器たるポリバレンスもサブでこそ真価を発揮する。サブキャストはしっかり揃ったPSGに今必要な人材ではない。ブンデスリーガで15ゴールの選手に、レギュラー候補も80m€の移籍金も厳しい要求だろう。

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