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パーフェクト犯罪#2(最終話)

予想とおりベストセラー作家Aは犯行を頑固に否定した。
もう3時間…

警視庁の万年係長刑事Bは思い切って
彼にジッポライターを求めた。
彼が自分のジッポライターがないというのを気付いて慌てる様子をみた刑事Bは
シニカルな笑顔で証拠物と書いてあるビニルポケットから金色のジッポライターを
彼の前に出した。

24Kの特殊金製で底の部分に彼(A)のイニシャルが刻んでいる物だった。
しかし、彼はそのイニシャル自分以外にもいくらでもいると言いながら
自分の物ではないと否認した。
刑事Bは最後に血が付いて汚れた原告用紙数枚の束、破れた鉛筆を提示した。
殺人事件現場の付近から見つけた物だ。
彼の顔がやっと泥色になってしまった。

「お前は無名時代、作品がなかなか進まず悩んだ末、実際人を殺してその時の生き生きとする心理をそのまま作品に書いた。
そして、その緊張感、恐怖感を抑えるため現場でタバコを吸ってこのジッポライターがポケットから外れたことも気づかず、現場を離れた。
お前が書いたこの小説そのものが決定的な証拠である。
それでも逃げるのか!」

Aは全てを断念した様頭を下に落とし、大人しく両手首に手錠はめた。
´やった!俺がやつに勝った!´刑事Bは会心の微笑を…
彼を連れて取調室を出ようとしたら
「あの…この部屋を出る前最後にタバコをお願いしてもいいか。」
落ち込んだ顔で彼が頼んだ。
「まあ、いいや。どうせこの部屋を出たらお前には自由なんてないからさあ…」
刑事Bが自分のポケットからタバコを出そうとしたら
「ああ、悪い。俺のポケットから出してもらえるか。俺は潔癖症だからなあ…」
「あ、そう?分かった。俺が優しくライターも付けてあげる。人生最後かもしれないから
ごゆっくり…」
……

タバコを美味しく吸い始めた彼。
驚くほど今までと違って落ち着いた様子を見せる。
そして、微笑みながら言い始める。

「刑事さん、もし「キュラレーcurare」を聞いたことあります?」
「何に?聞いたことない。お前さあ、変な話は辞めもらえる?」
「キュラレーは古代アズテック原住民たちが使った毒の一種類です。その地域だけ自生する毒カエルから取られます。」

「それがどうだ?俺と何の関係がある?」
刑事Bはあくびをしながら言った。疲れた。もう寝ないと。

彼はしばらく答えず、とても美味しそうに自分専用のタバコを吸って刑事Bの顔の方に
煙を出しながら言った。

「聞いてみてください。面白い話ですよ…それがですね。毒の使い方が得々で…
その毒を抽出してタバコに挿入して吸うと…」
「???」
「周りでその煙を吸うだけで5分以内に死にます。その毒の成分が丸ごと煙の形で人の肺に入ってその機能を麻痺させるからさあ…」
一瞬部屋は沈黙の重い空気に変わる。
「な、何?まさかお前今のタバコが……」刑事Bがショックを受けて椅子からパーッと立ち上がった。
「お…お前、俺を殺して自分も自殺するつもり?」
「それがですね…もう一つ面白いのはその毒成分のタバコを吸った本人には免疫力が生成出来て命に影響がないようです。」
「!!!!!」
「そ、そんな…お、お前嘘だろう!」刑事Bの顔が恐怖に歪んだ。
震えた左手から握ていたライターを落とした。
金属ライターがコンクリートの冷たい床に落ちた鈍い音が狭い取調室を大きく響いた。
顔に痙攣が…
「な、何でこんな事が、だ….ダメ….お、お前….あ…あああ…」
「ははは…調べたのと同じか。おい刑事さん、俺が調べたのを教えてあげる。
まず顔色が紫色に変わる。そして痙攣がはじまる。呼吸が、呼吸が徐々に苦しくなる。
ああ、だからこの以上あまりしゃべらない方が良い。そして…さようならだなあ…」
「……」
「ほら、どうだ?面白いぜ?刑事さんお死因は多分….正体不明のウィルスによる急性呼吸器症候群….結局、過労死じゃない?俺が良く話してあげるからさあ。」
彼は苦しく呼吸している刑事Bの腰にかかっている手錠のカギを軽く出して手錠を外した。

そして、刑事Bを赤ちゃん扱いするよに軽く倒した。
刑事Bは抵抗も出来ず、無気力に倒れた。
彼は落ち着いて刑事Bの目の前で証拠物である血が付いた原告用紙をすべてライターで燃やしてその灰をお水と一緒こくんと飲んでしまった。

破れた鉛筆とジッポライターは自分のポケットに。
そして、最後に刑事Bが書いていたタブレットのファイルを削除した。

その様子をみた刑事Bは何か言いたがるように見えたが、言葉は出なくて
鯉みたいに口だけ開けたり閉じたりするだけ….

……

人気ベストセラー作家Aは証拠不十分で釈放された。
人生のチャンスを握る直前だったかもしれない
警視庁万年係長刑事Bの死因は「正体不明のウィルスによる急性呼吸器症候群….結局、過労死」と結論させて警察公園墓地に。

そして、1か月後「刑事殺人事件」という新作を発表したAは
その年ミリオンセラーになり最優先作家賞を受賞した。

<終>

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