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35. 2,216

「レンタルトランクルームにある荷物を片付けたいですが、可能ですか?」

「ちなみに地域はどちらでしょうか?」

「福岡です。」

「……」

3年目に入るパンデミック。
依頼された女性のお客様は
この惑星で新卒後、
戻られると思って
トランクルームと契約され
大事にした物を預けていたらしい。

それで2年、
年明けたので3年目に入るが
日常への回復はまだ遠い。

最後まで掴んでいた夢を畳んで
寂しい依頼を…

これで今年初仕事として
福岡へ向かう様になった。

東京から片道1,058km, 往復 2,116km…
2年前別府に続いて長距離出張になる。

作業は3〜4日程度予想だが、
年始の影響もあり
はっきり分からないので
とりあえず航空券は片道に、
ホテルは2泊に予約し、
現地で様子をみて動く事にした。

1月3日A.M.4時半
アラームで起きる。
国内ツアーコンダクター時代には
結構あったが、
こんな時間に起きるのも久しぶり。

仕度して
まだ夢中の家族を後にして
静かに家を出る。
年末年始連休中の
まだ暗い道
冬らしいひんやりした空気が
体を抱く

早朝便なので始発地下鉄に乗り
大問駅で空港までの乗換電車が間に合わず、
隣の浜松町駅でモノレールに乗り換え、
時間に間に合って羽田空港へ到着。

まるで幽霊空港の様に変わった成田空港とは違って
1年半ぶりの羽田空港は明るくて人々の温かい気が溢れた。

国内ツアーコンダクター時代、
旅行会社の旗を持って
全国からのお客様を待っていたり
出迎え、見送り…
たくさんの思い出が
まるで夢の様…

いろんな方面
数多くの出発と到着
出会いとお別れ
笑顔と涙

そして、
人生…

空港で飛行機を見るだけで
何だか胸寂しい気分になる。
パンデミックでなかなか行けない
元惑星への思い出
僕がいない間、
さり気なくおばあさんになった
お母さん…

夜が明けて
闇を潜って来た福岡行飛行機は
翼を揺らして僕を呼ぶ

行こう、福岡へ!


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