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ブックレビュー|どこまでやるか町内会

今後、読んだ本の内容について、重要だなと感じたことを中心にブックレビューとして書き留めていこうと思います。

今回は、「どこまでやるか町内会」(著者:紙谷高雪)です。


町内会(私の住んでいる地区だと「自治会」と呼んでいます)のトラブルや、担い手不足の問題など、昔からの慣習で続けてきたやり方がそろそろ限界を迎えているのでは?という声は、私の周辺でもよく耳にします。

例えば、私の所属する自治会でも、昨年、自治会を脱会した人にゴミ捨て場の利用を許可するか、で議論になっていました。自治会に会費を払ってさらに地域でゴミ捨て場の管理など手間のかかる役割を担っている人たちからすれば、お金も労力も提供しないのにおいしいところだけフリーライドする人は許せん!と言いたくなる気持ちはよくわかります。

この自治会のごみ捨て場をめぐるトラブルは各地で起きているようで、ちょうど、Abema Primeでもタイムリーにとりあげられていました。

同じ件について、産経新聞の記事にもなっているので、こちらもあわせて読みましょう。

このようなトラブル対応含めて、集落の自治会長は大変で基本的に誰もやりたがらないので、順番にまわしていくところがほとんどですが、小さな集落とかだと人が少なく、もう2巡目、3巡目というところもあります。そういう役目をしたくないので、集落に住まずに賃貸住宅や、新興の分譲地に家を建てて住む若い世帯も多いので、どんどん集落は高齢化していく、という悪循環に陥っています。

実際には、一部の町営の賃貸住宅などでは、集落よりもコミュニティ意識が弱いからなのか、自治会の役目を平気で放棄したりする人もいて、集落よりも問題が深刻になっているようです。(このへんの詳しい話は近々、住人にヒアリングする予定です。)

いよいよ、そうなってくると、そもそも自治会って必要なの?という疑問が生じてきます。この疑問について正面から答えているのが「どこまでやるか、町内会」という本です。

○本の内容サマリー

この本のポイントとしては、以下のとおりです。

  • 自治会(町内会)の加入はあくまで任意である。やめたい場合はいつでもやめられるし、やめたことによって、ゴミ出しなどの重要なライフラインが閉ざされるのはおかしい。困ったときはこの任意加入であるという本質に立ち返ると良い。

  • ごみ出しや広報物の配布などは、本来、行政が責任を負うべきもの。自治会の協力を得られないケースは行政が対応するべき。(トラブル発生時に行政が介入せず、自治会の内部で解決を、というのはおかしい)

  • 広報物配布は、地域によってはシルバー人材センターに委託したり、新聞折り込みや業者によるポスティングなどを利用している。よその地域に目を向ければ、「自治体の広報は自治会が配るのが当たり前」ではない。

  • 自治会は、防災のためにも、ということはよく言われるが、過去の事例からすると、避難指示などの公助がまず大事だし、災害発生時に自治会にできることは限られており、最後に効いてくるのは日頃の近所づきあいである。そして、近所づきあい=自治会ではない。

  • 自治会は、唯一、コミュニティ意識の醸成のためにのみ存在意義がある。それ以外の目的の事業は、どんどん削っていくべきだし、その目的のための手段は、おまとめ事業手続きの簡略化を含めて、これまでよりも柔軟に考えるべきである。

というようなところが、ポイントだと思います。

以下、いくつかの点をさらに詳しく書きます。

○自治会(町内会)の加入は任意である

まず、自治会(町内会)とはそもそもどういうものなのかという点について、本ではこのように紹介されています。

町内会を定義めいと言うと、一般的には①ある地域の全員が加入する建前になっており、②その地域を代表し、③住民自身で地域の課題を解決する、という団体です。

「どこまでやるか、町内会」25ページより抜粋

では、法律上、自治会は必ず入らないといけないものか?という点については、これは明確に「ノー」である、ということが最高裁判例で結論がだされているのこと。以下、判例の一部を抜粋します。

判例:2005(平成17)年04月26日第3小法廷判決 平成16年(受)第1742号 自治会費等請求事件)

ここでは、自治会は、権利能力のない社団であり、任意に加入する団体であること、が明記されています。任意ということは、加入するのも、やめるのも自由。この「自治会は任意加入の団体である」という前提は、最高裁判例という法的な根拠のある事実ですので、様々な困ったら常にこのポイントに戻ると、問題を整理できるかもしれません。

○ゴミの収集の責任は自治体にある

ゴミの収集の責任は自治体にある、ということは、法律で決まっています。

廃棄物処理法という法律には、市町村の仕事が次のように定められています。
「市町村は、一般廃棄物処理計画に従つて、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分・・・しなければならない。」
(中略)
町内会に入ることは任意。ごみの収集は市町村の義務。
ということになれば、任意団体である町内会に入らないことによってゴミ出しができず、市町村がごみ収集という義務を果たさないのは、ずいぶんと不合理な話のように思えます。

「どこまでやるか、町内会」30ページより抜粋

なので、本来は自治体が、個別収集でもなんでもして、ごみを収集する責任があるのですが、財政的なこともありますし、住民側もできるだけ協力をしましょうということで、自治会の協力により、ゴミをまとめているというのが現状です。ただ、あくまで最後の責任は行政にあるため、なにかしらトラブルが生じてしまった場合は、最後は行政に対応責任があることになります。

○災害時は、近助が大事

この点については、「近助」という言葉を提唱されていて防災に詳しい有名な山村武彦氏がよく仰ってます。私も、山村氏のお話を研修で聞いたことがあって、心に残っています。

防災は「自助」「共助」「公助」が基本といわれてきました。私はそれに「近助」を加えることを提唱しています。「自助」は、自分や家族を自分で守ることです。また、自主防災組織や自治会などみんなで助け合う「共助」、そして自治体・警察・消防・自衛隊などの「公助」も大切です。しかし、大規模災害時は防災関係機関がすぐに全ての被災者宅に駆けつけることはできません。公助には限界があるのです。またいざという時、不特定多数の「みんな」より、家族、隣人、向こう三軒両隣など、近くにいる人が頼りになります。少子高齢化時代は、みんなで助け合う共助と共に、顔の見える近くにいる人が見守り、近くの人が助ける近助が不可欠です。

山村武彦の提唱する「近助」「互近助」「防災隣組」より抜粋


以上、どこまでやるか町内会を読んだ内容の学びでした。

町営住宅と自治会というテーマについては、近々、関係者にヒアリングをする予定なので、今後、具体的な提案まで、自分の考えをまとめていこうと思っています。


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