東方沖覚醒剤密輸事件公判傍聴記・2021年5月26日(被告人・海老澤浩)

2021年5月26日
東京高裁第8刑事部
805号法廷
事件番号・令和2年(う)第1802号
罪名・覚醒剤取締法違反(変更後の訴因・覚醒剤取締法違反、関税法違反)
被告人・海老澤浩
裁判長・近藤宏子
右陪席裁判官・江口和伸
左陪席裁判官・仁藤桂海
書記官・嶋田有晃

海老澤浩は住吉会系の暴力団組長であったが、2017年8月21日、共犯者たちとともに、茨城県ひたちなか市の東方沖で、船で受け渡しする「瀬取り」という手法で覚醒剤約474.72kg(末端価格約307億円)を香港から密輸し、22日、同市の那珂湊漁港に陸揚げして輸入した。その後、逃走を続け、2018年11月8日に香港で身柄を拘束。2020年10月22日、水戸地裁で無期懲役の判決を受けた。

傍聴人は20人近くいたが、そのうち10数名は、被告人の関係者らしかった。老人から青年、若い女性まで年齢性別は様々だったが、スーツ姿の人はいなかった。男性の一人が、関係者が座る席を指揮していた。
弁護人は、柔らかい短髪の眼鏡をかけた青年、短髪の中年男性二人の、合計三名。無罪主張でもない無期懲役事件の控訴審としては、ずいぶんと多い。三人とも、マスクをつけている。
検察官は、眼鏡をかけた初老の男性一名であり、これもマスクをつけている。
書記官は、痩せ型の髪を短く刈った中年男性であり、これもやはりマスクをつけている。
近藤裁判長は、長髪を真ん中で分けた初老の女性。仁藤裁判官は眼鏡をかけた短髪の初老の女性。江口裁判官は眼鏡をかけた短髪の中年男性である。やはり、全員マスクをつけており、顔を見ることはできない。
被告人入廷前、裁判長と書記官は、何か話し合っていた。その後、被告人が入廷する。
被告人である海老澤浩は、後退した髪を丸坊主にした、がっしりした体格の初老の男だった。ノーネクタイのスーツ姿であり、やはり白いマスクをつけている。傍聴席に向け、にこにこしながら入廷した。被告席に座ってからは、傍聴席の方を見ていた。
海老澤浩の控訴審初公判は、11時より開廷した。

裁判長『被告人、前へ立ってください』
海老澤は、証言台の前に立つ。
裁判長『名前は?』
被告人『海老澤浩!』
太く大きな、落ち着いた声で答えた。
裁判長『生年月日は』
被告人『昭和35年3月15日』
裁判長『本籍、住所、職業、一審から変更は』
被告人『ありません』
裁判長『平出町(略)ですか』
被告人『はい』
裁判長『被告席に座ってください』
海老澤は、被告席へと座る。
弁護人は、3月15日付で控訴趣意書を提出しており、その通りに陳述するとのこと。
検察官『本件控訴趣意に理由はなく、棄却が相当と思料します』
弁護人は、3月15日付、5月20日付で、事実取り調べ請求書を提出している。書証6通、証人尋問、被告人質問を請求している。
検察官は、書証には不同意、証人尋問、被告人質問は不必要と述べる。
裁判長は、証拠請求を、いずれも却下した。この時、海老澤は特に反応を示さなかった。
弁護人は、異議を唱える。一審後明らかになった事情がある、と異議の理由を述べる。しかし、異議は棄却される。
裁判長『審理は以上となり、次回、判決となります』
海老澤は後ろを向き、弁護人と何か頷きあっていた。
裁判長『6月30日午後3時は』
海老澤は、後ろを向き、何か身振りを弁護人に示していた。
結局、7月5日14時に、判決期日は指定された。海老澤は、期日を告げられ、頷いていた。
裁判長『閉廷します』
11時3分に、控訴審初公判は終わった。あまりにもあっという間の終了であった。
海老澤は傍聴席の方を見て、知り合いらしき老人に、二回礼をして、退廷した。
関係者たちは、法廷外で輪になり、何か話し合っていた。あまりにも早く終わった控訴審に、不満を述べていたのだろうか。


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