印西市貯水槽殺人事件公判傍聴記・2023年10月12日(被告人:M・Y)

2023年10月12日
東京高裁
506号法廷
事件番号:令和5年(う)第500号
罪名:殺人、死体損壊、死体遺棄、覚醒剤取締法違反
被告人:M・Y
裁判長:大野勝則
右陪席裁判官:安藤祥一郎
左陪席裁判官:有賀貞博
書記官:足立藍子

この事件は、暴力団同士の事件である。千葉県印西市の貯水槽で男性の遺体が発見され、被告人を含む暴力団関係者六人が起訴された。しかし、起訴された六人のうち三人は、無罪となっている。被告人自身は、3月10日に懲役22年を言い渡され、控訴した。
検察官は、髪を立てた痩せ型の40代ぐらいの男性。机の上に記録を広げていた。書記官は「被告人は難聴なので補聴器を」と検察官に話しかけていた。
被告人は、白髪を短く刈った、額の皴の目立つ、浅黒くがっしりした体格の初老の男性だった。ノーネクタイの黒いスーツ姿で、サンダル履きであった。顔のほとんどは白いマスクが覆っている。前を向いて入廷した。書記官、補聴器をもってきて、「それを貸してもらえますか」と被告人に話しかける。被告人は、刑務官に「聞こえる?」と聞かれ、「聞こえない」と答える。その後も確認を繰り返し、「ああ、聞こえる」と答えていた。
傍聴人は13人ほどで、被告人の関係者らしき人が多い。
弁護人は、三人ついており、一人目は大熊裕起弁護人であった。眼鏡をかけ、太っており、白く長いひげを生やしている。二人目は、フジモトという名前の、ちょび髭を生やした中年男性であった。この人は、振り込め詐欺仲間割れ殺人事件で無期懲役が確定した、鷺谷輝行の弁護人でもあったと思う。三人目は、口ひげを薄くはやした、一癖ありそうな中年男性だった。
裁判長は、髪を短く刈った初老の男性だった。
14時より、M・Y被告人の控訴審初公判は開廷した。

裁判長『聞こえますか』
被告人『聞こえます』
裁判長『開廷します。前に出てください』
被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長『名前は』
被告人『M・Yです』
太く大きな声であった。
裁判長『生年月日は』
被告人『昭和37年10月4日です』
裁判長『本籍は』
被告人『新宿区歌舞伎町(略)』
裁判長『住所』
被告人『同じです』
裁判長『仕事は』
被告人『してません』
裁判長『戻って』
被告人『はい』
被告人は、被告席に戻った。
裁判長『控訴審の審理始めます。控訴趣意、8月7日付作成。それから、これに加えて、10月6日に提出された補充書1~3、陳述しますか』
弁護人『はい』
裁判長『事実誤認、殺人、死体損壊について』
大熊弁護人『はい』
検察官『論旨に理由はなく、控訴棄却相当です』
裁判長『事実取り調べ請求1~3、書証10点、証人3名、被告人質問と。この通り請求』
大熊弁護人『はい』
裁判長『検察官の意見書は、書面で出してもらっている。一番初めの、判決写し、検察官言われている、内容必要なら同意すると』
検察官『はい』
裁判長『弁護人は』
大熊弁護人『同じ立証趣旨で』
裁判長『書証不同意、証人も、必要性ないと』
検察官『はい』
裁判長『同意するもの、採用し、取り調べる』
大熊弁護人『証人三人、被告人質問、是非とも採用を。K証人、関係、やむを得ない事情ある。やり取り、主に立証する。発言なかったと、伝聞求めるものではない。H証人、把握したのは、S1証人の尋問の後。S2証人、Nとのやり取り、主な立証とする。こういう言動していたというもので、伝聞ではない。T証人のやむを得ない事情、原審後に接触できた。T証人が、Nに言ったことを立証する。伝聞性でない。被告人質問、共犯の判決、T2供述の信用性を否定する。ぜひとも採用してほしい』
フジモト弁護人『他の三名の無罪、判決出ると。一審と、極端に違うことはないが、是非とも被告人質問採用を』
裁判長『検察官は』
検察官『特にない。理由ないと思料する』
裁判長は、裁判官と話す。被告人は、それを見つめている。この話し合いに、自分の運命を握られているのだ。
裁判長『検察官の意見鑑み、いずれも採用せず、却下する。他にないなら、結審する』
傍聴席から、吐き捨てるような呟きが漏れた。
判決は、11月7日11時となる。傍聴席からは、舌打ちが聞こえた。
裁判長『本日はこれで』
14時11分に、閉廷した。
閉廷後、退廷しようとする被告人に、関係者らしき男女が集まっていた。


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