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茅ヶ崎ノコギリ殺人事件公判傍聴記・2022年4月20日(被告人・M・Y)

2022年4月20日
東京高裁第11刑事部
622号法廷
事件番号・令和3年(う)第1762号
罪名・殺人
被告人・M・Y
裁判長・三浦透
右陪席裁判官・佐々木直人
左陪席裁判官・菱田泰信
書記官・阿部敏彦

傍聴人は、14時45分には入廷できた。
被告人の親族らしき、眼鏡の少年、茶髪の中年女性、白髪交じりのがっしりした眼鏡をかけた中年男性が弁護人側の最前列の傍聴席に座っていた。
傍聴人は、私を除き9名である。かなり法廷には空きがあった。
被告人は、よたよたした足取りで、腰を曲げて、入廷する。小柄な老女であり、白髪を後ろでまとめている。額には皴が寄っている。目は細い。グレーの服、黒長ズボン。小さい顔に大きな白いマスクをつけており、ピンクのサンダルを履いている。被告席に座ってからは、前をじっと見ている。被告人には、男性刑務官二名がついている。
検察官は、長い黒髪の中年女性。
弁護人は、14時58分に入廷した。やや茶髪がかった長髪の、太り気味の中年女性である。「こんにちは」と笑顔で、被告人に声をかけていた。
三浦裁判長は、短髪で色黒の初老の男性。佐々木裁判官は眼鏡をかけた七三分けの初老の男性。菱田裁判官は眼鏡をかけ、七三分けをオールバックにした初老の男性である。
M・Y被告の控訴審判決公判は、15時より開廷した。

裁判長『正面に座って』
被告人は、よたよたとした足取りで証言台の椅子の所まで行き、椅子に座る。
裁判長『M・Yへの、殺人控訴審、言い渡します』

主文・本件控訴を棄却する。未決拘留日数中140日をその刑に参入する。
(言渡しの瞬間、被告人は身じろぎせずに聞いていた。)

理由
本件は、令和3年3月5日9時から11時までの間、被害者83歳の頸部を鋸で傷つけて殺害した。
量刑事情、法令手続きの違反、量刑不当が、控訴趣意である。
被告人が手足をバタバタさせたため、原審は退廷させた。裁判を受ける権利を侵害している。被告人にチックのような症状が出てもおかしくない、ショックな事件である。早めに休廷して落ち着かせるなどなく、退廷させており、手続き違反があると主張する。
被告人は、原審検察官が甲27号証を説明している際、床を叩いたり机を叩いたりしたところ、やめるように説得されたが、被告人は「できないよ、できないよ」と呟き、退廷させられた。
長女の証人尋問開始後、手足をバタバタさせることで聞き取りにくく、裁判長は説得したが、やめず、退廷させられた。
接見時も、アクリル板を叩いて、やめない。
原審裁判長は、被告人を再三説得し、被告人も説得を理解していた。退廷を命じられた際にも、異議はなかった。退廷命令、やむを得ないものであり、法令違反の主張に理由はない。
量刑不当について。原判決は朗読を省略する。理由についても省略する。所論と当裁判所の判断。考慮した事情、共に了承できる。
精神科受診していれば、何らかの病名がつく可能性が高い。無理心中を考えていた可能性が高い。ほかの手段を探ろうとしなかったとするが、近所づきあいなく、親しい親戚なく、長女も面倒を見ようとしておらず、孤軍奮闘していた。同情できるもので、介護疲れ殺人に匹敵するとする。
原判決の認定に誤りはない。自身の健康に不安感じながら夫と生活すること、同情できる、などとし、経緯、考慮するのは限度があるとした。誤りあるとは言えない。
被害者死亡に至るまで見届けているなど執拗、とするが、反撃される不安あるのは当然で、執拗とは言えない。計画的に犯行を犯すのなら、寝ている被害者を殺すのは簡単である。被害者は負傷し、必死になったと述べており、悪質、危険性が高いとは言えないと主張する。
事実認定に誤りはない。
①について、見届けたことではなく、馬乗りになって鋸で多数回にわたり切りつけたことを執拗と判断している。所論の事情を考慮しても、執拗との判断は揺るがない。
②、使い慣れている鋸を選び、ある程度の計画性、否定できない。電気つけず暗いままでは、見えないことを述べており、計画性影響を与えない。
③、多数回切り付け、三回挽いており、執拗と評価し誤りはない。
反省深める態度ないと認定するが、退廷させられたためである、とする。後悔の調書はあるが、反省や謝罪の弁はない。
再犯の恐れはないこと、適切に考慮している。
原判決、被害者を殺すべきではなかったと反省し、悪かったと思っていること評価できるが、見直すほどではない。論旨に理由はない。
本件控訴を棄却し、未決拘留日数中140日を刑に参入し、訴訟費用は負担させない。

裁判長『以上の通り。不服あれば上告でき、14日以内にできる。よく相談してください』
被告人は、頷いた。
裁判長『終わります』
15時14分に、判決言い渡しは終わった。
被告人は、腰を曲げ、顔を前に突き出し、判決を聞いていた。言渡し中も、特に反応は見せなかった。身じろぎしない。言渡しが終わると、よたよたとした足取りで、退廷した。
被告人の家族らしき人たちは、傍聴人たちが退廷しても最後まで残り、被告人の退廷を見送っていた。


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