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大宮ネットカフェ立てこもり事件公判傍聴記・2022年7月7日(被告人・林一貴)

2022年7月7日

さいたま地裁第二刑事部

201号法廷

事件番号・令和3年(わ)第868号

罪名・逮捕監禁致傷(変更後の罪名、逮捕監禁致傷、強制性交等致傷)

被告人・林一貴

裁判長・佐々木一夫

書記官・大浦晃司


この事件は、被告人である林一貴が、2021年6月17日から18日にかけて、32時間にわたりネットカフェ店員を監禁し、幾度も性的暴行を加えた、という事件である。

報道では、性的暴行の事実は伏せられていた。そのため、私は「人生に絶望した男が、何かを訴えるために、立てこもりという手段を選んだ」という印象を持っていた。このような凶悪な性犯罪であるとは、傍聴するまで知らなかった。傍聴してからは、事件の印象が全く変わった。

安易な拡散を避けるため、この傍聴記は、大半を有料部分とする。また、犯行の中でも特に忌まわしい部分については、省略させていただいた。ご了承いただきたい。


8時30分の整理券交付開始時には、既に17人が並んでいた。9時10分の傍聴券交付時には、少なくとも、36枚に77人が並んだらしい。記者らしき人が、かなり並んでいた。

荷物預かり、金属探知機によるチェックがあり、その後、法廷の前に並ばされた。

記者席は12席であり、9人が座る。

傍聴券の倍率は2倍少々になったが、法廷内には空席が目立った。そのため、どこか閑散としていた。マスコミのアルバイトが動員されているのだろうか。

検察官は、ショートカットの若い女性、髪の短い青年、七三分けの青年の三人。その後ろに、司法修習生が三人と、参加代理人弁護士である、眼鏡をかけた中年女性が座っている。検察官たちは、記録を広げている。

裁判長は、眼鏡をかけた、白髪で浅黒い初老の男性。当初、一人だけで在廷していた。

弁護人は、二名。眼鏡をかけた痩せた4~50代ぐらいの、半そでワイシャツの男性。こちらの弁護人は、横田という名だと後に分かった。もう一人は、髪の短い、がっしりした体格の、白いワイシャツの30代ぐらいの男性。こちらは、岡田という名前だった。岡田弁護士は、記録に目を通していた。

被告人は、がっしりした体格の中年男性だった。中肉中背である。髪は丸坊主にしており、前頭部は一部を残して禿げあがっていた。目はぎょろっとしている。黒い長袖のジャージの上下、茶色いサンダルを履いている。顔には白いマスクをつけている。足早に入廷する。傍聴席の方を見て、傍聴人の人数を数えている様子だった。

裁判官は、ショートカットの中年女性と、髪の短い青年だった。

裁判員は、白髪の初老の男性、中年女性、がっしりした体格の30代ぐらいの男性、髪を後ろで束ねた中年女性、眼鏡をかけた女性、髪の長い若い女性の6人である。

10時から、林一貴の第二回公判は開廷した。


裁判長『今日、明日の証人尋問、被告人質問では、(聞き取れず)。被告人に注意します。昨日のような発言、退廷命じます。そういう事ないように』

被告人は、頷いた。しかし、軽い頷き方だった。

本日は、ビデオリンク方式で証人尋問を行うらしく、証人の姿は法廷内に見えない。

裁判長『別室、聞こえていますか』

職員『はい、聞こえています』

裁判長『映像つないで』

職員『はい』

被告人は、腕を組み、宙を仰いでいる。

裁判長『尋問を行います。貴方は6月17日午後に、ネットカフェで個室内に監禁された』

証人『はい』

裁判長『その際のこと、証言してもらう。宣誓して、氏名はいいから、本文を読んで』

証人は、宣誓を行う。裁判長は、偽証罪について注意を行い、被害者の名は秘匿して行う事を告げる。Aと被害者を呼ぶ。裁判長は、被害者は手元に飲み物を用意しているが、適宜それを飲んでよいと告げる。

被告人は裁判長の注意の間、腕を組んで、憮然とした様子に見える。

まずは、若い女性の検察官が、証人尋問に立つ。

証人の声は、緊張からか、それとも嫌な記憶を話しているためか、たどたどしく、沈黙を挟むことが多かった。困惑しているような笑いが入ることもあった。


<アラ検察官の証人尋問>

検察官『確認させて』

証人『はい』

検察官『令和3年6月17日当時、事件のネットカフェで働いていましたね』

証人『はい』

検察官『幾つですか』

証人『21歳です』

検察官『6月18日含めて21歳』

証人『はい』

検察官『仕事内容、来店する客などの、清掃など担当』

証人『はい』

検察官『午前8時勤務に入り、仕事』

証人『はい』

検察官『貴方のほかに店長勤務』

証人『はい』

検察官『二人体制』

証人『はい』

検察官『本社の常務、午後2時から、抜き打ちに店に来た』

証人『いや、知らなかったです』

検察官『被告人について』

証人『はい』

検察官『6月17日、客としてきた』

証人『はい』

検察官『それまで面識は』

証人『ないです』

検察官『退店、来店の手続き。話は』

証人『ないです』

検察官『午後2時23分、貴方と被告人、31室に入っていくの映っていた。七階でトイレの清掃をしていたら、「TVつかないのでちょっと見てもらって良いですか」と言ってきた』

証人『はい』

検察官『それで』

証人『あの、疑いもなく、TVが壊れているんだなと思って、その部屋に行きました』

検察官『部屋に入り確認、マニュアル通り』

証人『はい』

検察官『具合確認しようと言った』

証人『はい』

検察官『部屋に入っての状況、31室は、フラットシート』

証人『はい』

検察官『店によって、個室の壁、天井についていない。貴方の勤めていた店は』

証人『全部仕切られていて』

検察官『完全な個室』

証人『はい』

検察官『31室につき、靴脱いで部屋入り』

証人『TVの調子を見たりしていました』

検察官『正面奥にTVモニターおいてある』

証人『はい』

検察官『体勢は』

証人『膝をついて確認しました』

検察官『片膝、両膝』

証人『両膝です』

検察官『どうした』

証人『リモコンで設定いじってみたりしてました』

検察官『なぜつかないと』

証人『解らなかったです』

検察官『次に』

証人『次に、解らなかったので、店長に報告しようと』

検察官『何をする』

証人『インカムを使って、店長に報告しようとしました』

検察官『マイクをつけてる人と話ができる』

証人『はい』

検察官『制服の後ろのポケットに入っている』

証人『はい』

検察官『店長と話すためにおそうと』

証人『はい』

検察官『それで』

証人『そしたら、後ろから腕で首を絞められました』

検察官『誰に』

証人『被告人です』

検察官『どっちの腕で絞められた』

証人『右腕です』

検察官『首を絞められる強さは』

証人『強かったです』

検察官『その場で絞められたのか』

証人『そのまま絞められて、左後ろに倒れました』

検察官『意識、しっかり』

証人『一回、意識失いました』

検察官『首絞められ、後ろに倒れて』

証人『その後に、うつぶせにされて・・・上に押さえつけられるように乗っかられました』

検察官『それで』

証人『その時に、カッターを見せられて、「大人しくして居たら殺さない。カッターあるから解るよね」と』

検察官『声大きさは』

証人『声の大きさは、小さかったです』

検察官『小さくして聞こえないことは』

証人『私に聞こえる程度の声の小ささでした』

検察官『刃は』

証人『カッターの刃は全部出ている状態です』

検察官『何㎝出ている』

証人『んーと・・・長さはちょっと、解んない(笑)』

検察官『顔とカッターの位置関係は』

証人『んーと、15㎝から30㎝くらいの所でカッターを見せられました』

検察官『顔どっち向いてた』

証人『右を向いてました』

検察官『左頬シートにつく』

証人『はい』

検察官『で、カッターの刃見えてた』

証人『はい』

検察官『心境は』

証人『すごい、怖かったです』

検察官『抵抗すると』

証人『抵抗したら殺されるなって思いました』

検察官『どんなカッター?』

証人『大きさは、小さかったです』

検察官『色は』

証人『色は、黒ですかね』

検察官『同一性確認のため、甲62の写真示したい(台上のカメラの所に置く)あなたが被告人から見せられたカッター、本体6.9㎝、刃をすべて出すと2㎝あって、全長8.8㎝。貴方の記憶と比べて、違和感は』

証人『大体間違いないと思います』


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