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竹下通り暴走事件公判傍聴記・2022年6月22日(被告人:日下部和博)

2022年6月22日
東京高裁
820号法廷
事件番号:令和3年(う)第781号
罪名:殺人予備、殺人未遂、傷害
被告人:日下部和博
裁判長:近藤宏子
裁判官:足立勉など
書記官:中嶋智子、島田有晃
検察官:小林俊彦

13時30分の傍聴券交付の締め切りまでに、28枚の傍聴券に対し、42人が並んだ。記者らしき人がかなり多かった。
入廷前、荷物預かりのみが行われた。
検察官側の関係者席に、髪の短い男女が座っている。
検察官は、痩せた髪の後退した、初老の男性。
参加代理人の弁護士は、髪の短い中年男性、一審で論告を行った痩せた短髪の3~40代の男性、白髪の七三わけの男性である。PCを操作する、記録を見るなどしており、メモを取ってもいた。
弁護人は、白髪交じりの眼鏡をかけた初老の男性。前を向いて座っている。
アクリル板が、バーと傍聴席の間を隔てている。裁判官の一人が、かの工藤会の事件を担当していたための措置である。
記者席は9席指定されており、すべて埋まっていた。
被告人は、前を向いて入廷した。地肌の見える丸坊主。色白であり、一審と比してやや痩せた印象である。青い半袖の服、黒いジャージのズボン。白いマスクをつけている。青いサンダルを履いている。被告席に座ってからは、やや下を向いている。瞬きが多い。手錠をかけられたまま、少し手を動かしている。
裁判長は、眼鏡をかけた、髪が長めの初老の女性である。

裁判長『開廷する、立って』
被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長『日下部和博』
被告人『はい』
裁判長『殺人予備、殺人未遂、傷害について、判決します』

主文:本件控訴を棄却する。未決拘留日数中400日をその刑に算入する。

被告人は、判決言い渡し時、左手を少し動かしていた。
裁判長『座って聞いていて』
被告人は、証言台の椅子に座る。

理由
控訴趣意は、補充書に控訴趣意、答弁書の記載の通り。
(1)①原判決認定の、罪となるべき事実、平成30年12月31日、渋谷区神園町において、ポリタンクに噴霧器を接続し、参拝客を殺害する機会をうかがい、殺人の予備をし
②平成31年1月1日、同所歩行中の被害者(39)に対し、軽四輪貨物自動車を急加速させ、衝突させ、さらに加速させ、2~8の被害者、19歳~51歳に対し時速50キロの速度で走行させ、衝突させ、各障害を負わせ、殺害の目的を遂げない。
③被害者19歳に対し、左手の拳骨で殴り、加療14日の傷を負わせた。
2・論旨は、統合失調症の影響の程度を誤っている。事実誤認、法律適用の誤りある、という。原判決の内容、省略。
3・判断の要旨、論理則、経験則に照らし、不合理、誤りはない。判断内容について論難するが、現実検討能力の低下など、影響及ぼし、鑑定医を合理的な理由なく、考慮していない。責任能力判断に誤った瑕疵がある、と述べる。しかし、相応に影響を受けたとしつつ、法的能力は一定にとどまるとし、著しい減退ないとしており、合理的な理由なく尊重していないという批判は、当たらない。
統合失調症の最も大きいもの、自我障害であるとしている。しかし、規範的認定評価に、批判加えているに過ぎない。
(2)死刑制度は許さない、というもの、異様な思考ではないということから、統合失調症の影響を考えていない、とする。しかし、(ア)原審判断に依拠し、自制思考により生じたとするが、死刑反対は特に珍しいものではないとし、仮に精神障害により生じたとしても、是非弁別の能力に影響及ぼすものではないとし、誤りはない。
精神障害について、動機を考慮するのは当然で、死刑反対は特に異様なものではなく、是非弁別能力に影響を及ぼすものではない、という点は誤りではない。所論に理由はない。
所論は、①、死刑制度許さない、国民も許さない、という思想について、頑強に固執したことは異様である。②統合失調症の病的偏りを無視したものである、と主張する。
①について、死刑制度許せない、国民も許せないとの間に、論理的なつながりあるとはしていない。死刑制度反対、自制思考により生じたが、国民も許せないという考え、被告人による考えである。論理的(思考の流れ追うという意味)な思考により、けん制されており、原判決に誤りはない。統合失調症なければ、生じなかったかもしれないが。
②については、統合失調症の影響を受けていると説示されており、大量殺人についても、考慮に入れている。国民許せないという考えから大量殺人は許されないが、統合失調症なくとも考えうる、とする。所論に理由はない。
所論は、動機形成外部の情報に影響されたとし、正常さとしたが、統合失調症も外部の情報を取り込んで、発展していくのは当然である。正常さの証拠とならない、とする。しかし、インターネットでの検索を興味から繰り返し、動機を発展させている。正常な精神作用があるというほかなく、思考の正常性の根拠となる。所論に理由はない。
所論は、①平成29年11月ごろ、統合失調症非常に悪く、近所の人に火薬銃で威嚇するなどしていた。命を大切にするという本来の性格とは、極めて異なっている、とする。
母に、作家希望の友人がネットに投降したものが面白いから読んでみて、と述べており、母と正常な会話をしている。
一度きりの命、と書いており、生と死に興味持っていたことうかがわれるが、それのみで本来の人格推知することは不当である。その他からも、本来の人格を推知することは困難で、大きな隔たりあるという論難は当たらない。死刑廃止と、本来の人格は関係あるかもとしており、鑑定人は慎重である。論旨に理由はない。
行動面について、合目的的、犯行動機形成された、とする。多くの影響受けたとするものの、病状の影響受けているとする。影響大きい。死刑反対というもの、自制思考により生じたとしても、被告人により国民を許せないと思考を発展させており、賛同できない。
準備状況の合目的性、合目的に行われている。鑑定人の論を無視しているとの批判当たらない。
犯行の実行について、総合的に判断すること許されないというもの、支持できない。
所論は、あっさりと火炎放射による犯行を放棄しており、平成30年中に何としてでも実行しなければというの、統合失調症によるこだわりが表れている、と主張する。しかし、火炎放射器による犯行、灯油による噴射実験しなかったことは必ずしも奇異ではないとしている。
平成30年中に犯行を行うことをこだわったこと、反響を想定しており、合目的的なこだわりといえる、とする。原判決、鑑定医の意見踏まえつつ、裁判所が規範的評価を行い、統合失調症の影響を判断しようとしたといえる。鑑定医の専門的意見を参考にし、判断することに照らすと、論旨に理由はない。
その他、種々の論難を見ても、判断手法に誤りはなく、論旨に理由はない。
4・よって、控訴を棄却し、未決拘留日数中400日をその刑に算入し、訴訟費用は被告人に負担させない。

裁判長『立って』
被告人は、両手を後ろで組んで、立つ。
裁判長『控訴審判決は、今の通り。上告できる。明日から14日以内に申立書を提出して。以上です』
14時30分に、控訴審判決は終わった。
被告人は、身じろぎせず、言い渡しを聞いていた。閉廷後、弁護人に話しかけられる。傍聴席の方を見ることなく、退廷した。
参加代理人の痩せた弁護人は、しきりに判決のメモを取っていた。
弁護人は、汗をぬぐっていることもあった。


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