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奥多摩男性バラバラ殺人事件公判傍聴記・2024年3月19日(被告人:紙谷惣)

2024年3月19日
東京高裁第2刑事部
720号法廷
事件番号:令和5年(う)第633号
罪名:殺人、死体損壊、死体遺棄、監禁
被告人:紙谷惣
裁判長:大善文男
右陪席裁判官:佐藤基
左陪席裁判官:大野洋
書記官:竹石希望

検察官は、角刈り風の赤ら顔の中年男性。白いマスクをつけており、記録に目を通している。
書記官は、前髪がやや長い、ずんぐりとした体格の中年男性。PCに何か打ち込んでいる。
弁護人は、痩せ型の、前髪長めの中年男性。机上に黄色いファイルを置き、目を通している。ノーマスクである。
傍聴人は、30人ほどいた。
被告人は、前頭部から頭頂部にかけて禿げ上がり、残った髪を短くした、中年男性。引き締まった体格をしている。グレーの厚手の長袖の上下を着ている。色白であり、白い立体マスクをつけている。前を向いて入廷。座ってからは、やや伏し目がち。茶色い封筒を刑務官に持ってもらって、机の上に置く。
裁判長は、前頭部から頭頂部が禿げ上がった、眼鏡をかけた初老の男性。裁判官は、黒髪の中年男性と、眼鏡をかけた中年男性。14時29分に入廷し、裁判長は「時間までもうしばらくお待ちください」と告げる。裁判長は記録に目を通し、左陪席裁判官に何か話しかけている。何か頷く。
14時30分となり、紙谷惣被告人の控訴審初公判は、開廷した。

裁判長『それでは、開廷します!初めに、確認をしますので、被告人、前へ出てくださいますか』
被告人『はい』
被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長『確認します。名前は何と仰いますか』
被告人『紙谷惣です』
裁判長『生年月日はいつですか』
被告人『昭和45年3月28日です』
裁判長『本籍はどちらですか』
被告人『東京都町田市原町田』
裁判長『4-18』
被告人『はい』
裁判長『よろしいですか』
被告人『はい』
裁判長『住んでるとこは』
被告人『えー、今はありません』
裁判長『決まったところはない』
被告人『はい』
裁判長『仕事』
被告人『無職です』
裁判長『被告人と呼ぶ』
被告人『はい』
裁判長『殺人、死体損壊、死体遺棄、監禁被告事件について、審理』
被告人『はい』
裁判長『注意します』
被告人『はい』
裁判長『黙秘権ある』
被告人『はい』
裁判長『言わなくていい、ずっと黙ってられる』
被告人『はい』
裁判長『答えないでも不利益にならない』
被告人『はい』
裁判長『有利不利を問わず、全て証拠になる』
被告人『はい』
裁判長『注意しておく』
被告人『はい』
裁判長『手続きすすめるので、戻って』
被告人『はい』
被告席へと戻る。
裁判長『秘匿事項決定。監禁被害者、Aと呼称する。証人の名前で、呼称はTと。弁護人から、令和5年10月31日付で、控訴趣意書が提出されています。弁護人の方で、控訴趣意、骨子を口頭で述べる』
弁護人『そうです』
裁判長『述べてください』
弁護人は、証言台の前に立ち、裁判長の方に一礼する。

<弁護人の弁論>
紙谷さんは、殺害現場となった駐車場にはいませんでした。それはなぜか。紙谷さんは、殺害行為が行われると思っていなかったから。原判決では、要請にこたえるためとしている。
検察官は、さらに進んで、砂利道付近で、キャンプ村からの通行人の見張りをしていたと主張している。しかし、それを裏付けるような証拠は何もありません。紙谷さんは何かあった時のために近くに待機していた、見張りをしている、そんな風に話しをした人、松井グループの中に一人もいません。紙谷さんが駐車場にいなかったのは、それは、紙谷さんがKさん殺されると思っていなかったから。それ以外に説明をすることはできません。
紙谷さんにとって、本件は、金銭トラブル。松井らはKさんにお金を支払わせようと思っていると考えていました。死人にお金払わせられない。殺しては元も子もない。松井グループは、Kさんを監禁していたこと、暴力を振るうことを、Aさん、そしてDさんに見られている。紙谷さんにいたっては、Kさんを探す過程で、名刺を方々に配っている。Kさんを殺すようなことになれば、自分たちが疑われるのは明白。松井が解らないはずはない。そのような状況で、松井らがKさんを殺すとは紙谷さんには考えられなかった。
A女別宅においても、松井は、C女の取り扱いをどうするかについて悩んでいました。C女が通報しないようにしない限り、Kさんを殺害することはできません。Kさんをどうするかについて、何も決まりませんでした。決まらないまま、A女別宅を後にすることになります。その後、松井から、グループ全員移動するための車が足りなくなった、車を調達して戻ってきて、と要請を受ける。原審は、この時点で殺人を共謀したと認定した。しかし、A女別宅の話し合いでは、Kさんをどうするか何も決まっていません。車を用意してくれと言われただけで、殺人依頼と紙谷さんが認識することはできません。松井は、警察の目を恐れ、当時の自宅であるセザール戸田から移動している。この時も、同様、警察の目から逃れるために移動しようとしているのだろう、そう考えるのが自然です。Kさんを殺すと決めていたなら、グループ全体で場所を移動する、そんな必要はありません。実際に、ご死体損壊は、別宅近くの川で行われています。
紙谷さんが移動先として、キャンプ村を探してきたことも、紙谷さんが松井らがKさんを殺害すると考えていなかったことが裏付けられます。キャンプ村は、殺害行為に適当な場所とは到底言えません。他利用客、キャンプ村の職員の目がある。駐車場は、公道に面し、視界を遮るものは何もありません。もし殺害場所を探そうというのであれば、人気のない山中など探すべき。奥多摩にはそうした場所はいくらでもあります。紙谷さんは、グループ全員で集まって話し合いしていても不自然ではない場所として、キャンプ村を探しました。警察の手を逃れ、決まらなかったKさんとC女をどうするか、その話し合いが続くのだろう、紙谷さんはそのように考えていた。
不確かなことで人を処罰することはできません。当時の状況、紙谷さんが知っていたこと、紙谷さんの言動、それを考えれば、松井らがKさんを殺すと思わなかった、その合理的疑いが確かに残る。
本件において、殺人罪は成立しません。

被告人は、前を向いて、弁論を聞いていた。
裁判長『よろしいですか、弁護人の主張としては、事実誤認。殺人について、無罪なのに、有罪とした原判決、事実誤認と』
弁護人『はい、仰る通りです』
裁判長『検察官から、令和6年1月16日付で、答弁書提出。その通りに陳述するということでよろしいですか』
検察官『はい、陳述します』
裁判長『弁護人から事実取り調べ請求は』
弁護人『ございません』
裁判長『それではこれで結審します。一審の記録、控訴趣意書、答弁書、十分精査検討したうえで、次回、判決宣告します』
被告人『はい』
裁判長『それでは、これから判決宣告の日付を決めます』
被告人『はい』
裁判長『5月になります。5月9日いかがか』
弁護人『午後の時間帯なら・・・』
裁判長『検察官は』
検察官『大丈夫です』
裁判長『5月9日14時』
弁護人『お受けします』
裁判長『45分とってください』
被告人は、頷く。
裁判長『5月9日14時、判決宣告します。720号法廷。これで終わります』
途中入廷者が多く、傍聴席はほぼ満席になっていた。14時44分に、閉廷した。
被告人は、前を向いて、退廷する。

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